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No.1 ホンネ





ずいぶん前、僕にはパートナーがいました。



女の子でした。


綺麗な女の子でした。









その子は僕を愛してくれました。


だから僕もその子を愛しました。










しばらくして―






僕はその子を殺しました。





理由はきっと、その子が僕の名前を呼んでくれないということを悟ったからでしょう。










―しゃべれない子でした。


いつでも僕に黙って付いてきてくれました。


いつでも笑顔で僕を幸せにしてくれました。






今思えば、その子が僕を1番愛してくれていた気がします。








その子は、いつもマシュマロの成る木の根元でひなたぼっこをしていました。


ブロンドの髪が太陽の光に透けてきらめいて見えるのです。






だから僕はその子を連れて冒険に出ました。



その子が僕とどこかへ行くことに承諾をした覚えはないけれど


笑顔で僕を見ていることを勝手に了解と解釈してその子をつれて僕はここまで来たのです。






綺麗な子でした。


それはもう綺麗な子でした。








ブロンドのゆるい巻き毛が今でも鮮明に瞳に映し出されます。


茶色の瞳だったことだって覚えています。





そして僕はいつでも悔やむのです。

心底悔やむのです。






そして思うのです。






僕は表面上その子を愛していたつもりでいたけど、


僕は本当にその子を愛してしまったのかもしれない。







愛されたかったのに、

愛してしまったのかもしれない





もしかしたら、


僕は愛されてなかったのかもしれない







だとしたら…




あの子は殺されて当然だ。






僕はそう思った。









―そんなことより―



僕は探さなくちゃならない



僕は僕の名前を探さなくちゃならない。




あの子が殺されようが、誰が殺されようが、




僕は僕の名前を探します。





今だってこうして探しています。






いつになったら見つかるのかも分からない名前を今、探しています。












いつだったか、聞いたことがありました。

マシュマロの木の上でいつも太陽の光を浴びながら寝ているウサギに、



そのウサギは、


ウサギというにはあまりにかけ離れていました。






だって、


ウサギのくせに耳が短いんだもの



だって、


ウサギのくせに目が赤くないんだもの



だって…



だって…















白くて耳の短い緑目のウサギは、


いつだってこういいました。





『君は君の名前を聞いちゃあいけない。

他の人に聞いちゃあ駄目なんだ。

自分で名前を見つけなくちゃあ、それは君のものにならないんだよ。』



意地悪だと思いました。


明らかに知っているような顔をして、ひどいと思いました。



ぼくはそれとなく頷いてみせたけど…




どことなくその言葉が、


あの顔が、




僕をドコカへ導いているような響きに聞こえました。


それと同時に、


僕をドコカへ追い出そうとしているように思えました。





あのエメラルドの目玉が僕にそう訴えかけたんだ。



その目玉を見て僕は、


本当に名前を探しに行かなければならないことを悟った。





くまなのかウサギなのかも定かではない未確認生物の目玉に説得された。






だから僕は今こうして此処にいる。


今、僕がいる場所は何処なんだろうか…


今の僕はただの迷子です。








誰か、僕を探しにきてください。








できればブロンドの子がいいです。


笑顔で僕を幸せにしてくれる子がいいです。


綺麗な子がいいです。







やっぱりあの子がいいです。


マシュマロの木の根元でいつも静かに咲いていた花になった子がいいです。





たしかその花の名前は『ナニ』です





やっぱり僕は、



ナニと一緒に名前を探しにいきたいです。



悔やめば悔やむほど、





僕はナニが恋しくなるのです。




僕に幸せだけを与えてくれた子。


自分を犠牲にしてもなお輝く子。




今度は僕を不幸にしたっていい。




お願いだから、


もう1度僕にチャンスを下さい。
















今度はもう殺さないから








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