否定語を使った肯定表現
ある日、私のメールアドレスに弥富さんからのメールが届いていました。
タイトルが「Not bad.の意味について」となっており、内容は次の通りでした。
咲先生、こんにちは。弥富伊予子です。
こないだは関係代名詞や部分否定、全体否定につぃて色々教えていただき、誠にありがとうございました。
現在、私はそれらの復習に励んでいます。
今度、先生の英会話教室に行った時にはこれらをしっかり使いこなせるようになりたいと思っています。
さて、話は変わりますが、今日はメールのタイトルにもあるとおり、Not bad.の意味について確認したいと思っています。
実は私、英会話の本を読んでいる時、How are you?の答え方として、上記の答え方があり、日本語訳が「元気です。」となっていました。
別の本ではNot a bad idea.という英文があり、日本語訳が「いいアイデアですね。」となっていました。
私としてはNot bad.は「悪くない。」、Not a bad idea.は「悪くないアイデアですね。」という意味じゃないの?と思ったため、質問してみようと思いました。
先生、これについて回答をお願いしてもよろしいでしょうか?
もちろんただでとは言いません。
何かほしい本があれば買いますし、一緒に食事をする機会があれば私がおごります。
もし時間がなければお断りしてもかまわないです。
それでは私からのメールは以上です。先生、See you.
この内容を読んで、私は彼女の要望に喜んで応えることにしました。
そして「否定語を使った肯定表現」というテーマの作品を作成することにしました。
今回はその原稿をここに掲載します。
1)Not bad.
この表現は確かに「悪くない。」と解釈できます。
日本語の「悪くない。」は、主に「そんなに悪くもないけれど、良いわけでもない。」(元気ですか?の受け答えとしては、「まあまあ」といった感じ。)という意味になります。
この時「悪くはない。」と言えば、ポジティヴな意味合いはさらに下がってしまいます。
一方、英語でNot bad.と言った場合ですが、badの反対はgoodなので、「いいですよ。」とか「元気です。」という意味になります。
日本語と解釈が違いますし、badと言われた時のインパクトが強いので、慣れるまではいい意味にとらえるのが大変かもしれません。
でも、単純にbadの反対はgoodと解釈すればいいわけなので、理屈としては日本語よりも簡単だと思いますよ。
2)Not a bad idea.
これも上記通り、badの反対はgoodと解釈すれば、「悪くないアイデア」=「いいアイデア」という訳になるのも納得できるのではないかと思います。
3)Not too bad.
英語でHow are you?またはHow are you doing?と言われた時の受け答えとして、このような言い方もあります。
too badはbadをさらに強くした言い方なので、それを反対に解釈すると Not too bad.は「絶好調。」と解釈することができそうです。
しかし、実際には日本語の「悪くない。」というような意味になります。
つまり悪くもないけれど、そんなに良いわけでもないと言った感じになります。
この表現の場合はちょっと不規則な(ある意味日本語的な)解釈をすることになるので、この点は注意が必要です。
4)I couldn't agree more.
これは一見すると、ポジティヴなのかネガティヴなのか迷うのではないかと思います。
でも、このテーマで取り扱っているわけですから、当然ポジティヴな意味になります(笑)。
ずばり、このI couldn't agree more.は日本語に訳すと「大賛成です。」という意味になります。
以前、私は他の生徒さんとレッスンをした時に「これって『これ以上賛成できませんでした。』という意味じゃないんですか?」という質問を受けたことがあります。
この時、私は「この文章に1語加えるとその意味になりますよ。何だと思いますか?」と答えたことがあります。
その人は何かひらめいたように手をポンと鳴らしながら「あっ、そうか。Anyだね!?」と言っていました。
ずばり、その通りです。つまりI couldn't agree any more.と言うとネガティヴな意味になります。
一方、I couldn't agree more.のcouldは仮定法過去と同じ考え方で、「現実には不可能な領域に達してしまう程、これ以上は賛成できない」という解釈になります。
つまり、I agree.やI agree with you.をさらに強くした言い方になり、日本語に訳すと「大賛成です。」とか「120%賛成です。」というような感じになります。
上記のI agree.やI agree with you.だとちょっと弱いなと感じた時には、この言い方をお勧めします。
なお、I can't agree more.でも「大賛成です。」という意味になりますが、couldn'tを使った方が丁寧な言い方になりますので、私としてはI couldn't agree more.を使うことにしています。
ついでに言いますと、moreをlessに変えると「大反対です。」、「120%反対です。」という、強い拒否の意味になります。
6)It couldn't be better.
英語でHow are you?またはHow are you doing?と言われた時の受け答えとして、このような言い方もあります。
これはI couldn't agree more.と考え方は同じで、「これ以上良くなることは不可能な程いいです。」→「絶好調です。」という意味になります。
なお、Itを省略してCouldn't be better.という言い方もあります。
私が使ったことのある表現としては、他にNot so bad.があります。
使い方としては、This lesson wasn't so bad.(このレッスンはなかなか良かった。)があります。
否定語を使った肯定表現は他にもあるのですが、使った経験が少ないものはボツにしたため、弥富さんに発表するものは以上にすることにしました。
この作品に対するお礼についてはすぐに浮かばなかったため、決まり次第彼女に知らせることにしました。
今回取り上げた表現は、正直肯定的にとらえることは大変かもしれません。
でも私自身も何度もややこしい思いをしながら覚えた表現なので、読者の方も会話で何度も使ったりしながら覚えていってほしいと思っています。
それでは今日は以上です。読者の皆さん、See you.




