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部分否定と全体否定

以前、弥富さんは私に無料で色々なことを教えてもらっているお礼として、今度会った時におみやげか何かを持っていきたいと言っていました。

それを受けて、私は何をもらおうか色々考えました。

その結果、前から興味のあった英語の参考書を買ってもらうことにしました。


その後、彼女はレッスンを受けるために私の英会話教室にやってきて、その本を渡してくれました。

「わあ、この人の書いた本、ほしかったのよ。弥富さん、本当にありがとう!」

「どういたしまして、先生。ところで、本なんかでよかったのでしょうか?私は地元で有名な和菓子かなんかを考えていたのですけれど。」

「まあ、ちょっと迷ったけれど、私としては英語の本でさらに新たな知識を身につけて、それを仕事に生かせればと思っていたの。だから、これで十分よ。わざわざありがとうね。」

「こちらこそ。先生が喜んでくれてうれしいです。」


その後、私は本のカバーを外し、何ページか読んでみました。

(うん。これならレッスンや資料作りに生かすことができそうね。)

私はもっと読みたかったのですが、弥富さんとのレッスンの時間が近づいてきたため、そちらの準備に取り掛かることにしました。


今回のレッスンは弥富さんの苦手としている文法です。

彼女が言うには、なかなか使いこなすことができないということで、この内容を依頼されました。

私はそれを受けて、事前にテスト問題を作成して彼女にメールで送信し、解答してもらいました。

その結果、そんなに間違いはなかったので、基本的なことは知っているようです。

(※解答する時に参考書を見た可能性はありますが、その点は考えないことにします。)

しかし、いざ会話になるとなかなか文章が言えず、会話がストップしてしまうことが何度もありました。

(なるほど。弥富さんはこの文法に対してかなり苦手意識を持っているようね。)

彼女が1日も早くこの文法をマスターしたいという気持ちはひしひしと伝わってきましたが、私としてはじっくりと時間をかけて身に付けてもらう方がいいと思いました。

一方、弥富さんは頑張ったけれど最後までうまく会話ができず、レッスン終了の頃には落ち込んだような表情になってしまいました。

“How was it? Yatomi-san.”

(どうでした?弥富さん。)

“This grammar is really difficult. I guess… Everyone doesn't think it's easy.”

(この文法は本当に難しいです。多分…(※この部分の訳は後ほど。)。)

彼女は私の質問に対し、このように答えてきました。

私はこれを聞いて(What?)と思ったため、レッスン終了の時間になると、日本語で確認してみることにしました。

「弥富さん、このタイミングで質問するのもなんですが、さっきのEveryone doesn't think it's easy.というのは、どのような意味で使いましたか?」

「えっと、『誰もそれを簡単だとは思わない。』という意味だったんですけれど…。」

「うーーん…、その意味だとNo one thinks it's easy.またはNobody thinks it's easy.となるわね。」

「えっ?じゃあ、さっき私が言った表現は、何ていう訳になるんですか?」

「ずばり『誰もがそれを簡単だとは思うわけではない。』という意味になり、『簡単だと思う人もいる。』という、部分否定の意味になるわよ。」

「そう…、だったんですね…。ここでも間違えてしまって申し訳ありません…。」

弥富さんはそう言いながら深々とお辞儀をしてきました。

「大丈夫。ちょっと色々あったけれど、課題も見つかったし、これから自分で復習をしながら一つずつマスターしていけばOKよ。」

私は落ち込んでしまった彼女に対し、笑顔で対応をしました。

その甲斐もあってか、彼女は少しずつ元気を取り戻してくれました。

「それにしても先生、今日の文法もそうですが、『誰もそれを簡単だとは思わない。』という訳も難しいですね。」

「確かにそうでしょうね。でも私は過去に部分否定、全体否定に関するレッスンをしたことがあるから、よかったら今度の機会にやってみますか?」

「えっ?いいんですか?」

「弥富さんさえよければ、私は喜んでやりますよ。」

「じゃあ、次回会った時にやってみようと思います。」

「分かりました。」


というわけで、レッスン終了後、弥富さんが今日の復習をしているかたわら、私はパソコンで部分否定と全体否定の原稿を見ることにしました。

今回はその原稿を皆さんに公開します。

私自身も覚えるのに時間がかかりましたし、間違えやすい文法ですので、ぜひ参考にして下さい。



1)部分否定(partial negation)

これは「全て~ではない。」という意味になり、全部は否定せず、ある程度肯定しているということになります。


例文

・Everyone doesn't want to keep working there.

(誰もがそこで働き続けたいわけではない。)


・I won't buy both of the books.

(私は両方の本は買いません。)

(※どちらか一方の本を買うと言っていることになります。)


・I won't buy all of the books.

(私はすべての本は買いません。)

(※仮に本が3冊ある場合、1冊か2冊を買うと言っていることになります。)


・Sunny days aren't always good for us.

(晴れた日がいつでも私達にいいわけではない。)

(※晴ればかりで雨が降らない日が続けば困ってしまいますよね。)


・She doesn't study French and German.

(彼女はフランス語とドイツ語の両方は勉強していません。)

(※どちらかを勉強しているという言い方になります。)


ちょっと難しいかもしれませんが、否定文の中にeveryやboth、all、always、andを使った場合には部分否定になると覚えておいてくださいね。




2)全体否定(total negation)

これは「何も~ない。」、「誰も~ない。」というような意味になり、全部を否定していることになります。


例文

・No one wants to die.

(死にたい人など誰もいません。)

(※ここで生徒さんがEveryone doesn't want to die.と言ってしまい、私は「そんなわけないでしょ。」と突っ込みを入れたことがあります。)


・I'll buy neither of the books.

(私はどの本も買いません。)


・I won't buy any of the books.

(私はどの本も買いません。)


・Too much alchol is never good for our health.

(アルコールの取り過ぎは決して健康に良くない。)


・She doesn't study French or German.

(彼女はフランス語もドイツ語も勉強していません。)

(※ここで生徒さんがandを使ってしまい、私がレッスン中に確認を取ったことがあります。)


・She studies neither French nor German.

(彼女はフランス語もドイツ語も勉強していません。)


・Neither Sam nor Tom can play tennis.

(サムもトムもテニスはできません。)


文章の中にnoやnot + any、never、neither、not + orを使った場合には全体否定になると思えておいてくださいね。



この資料を今日、弥富さんに見せるかどうか迷いましたが、とりあえず見せないことにし、次回のレッスン時にぶっつけ本番でやってみることにしました。

彼女にはちょっと難しいかもしれませんが、それでも事前に予習をしてくるでしょうし、さらには落ち込んでもあきらめない彼女の気持ちを重視することにしました。

部分否定と全体否定は一瞬で区別をすることが難しく、会話の場合ではかなり間違いが目立ちますが、ここで差がつきやすいところなので、何度も練習して身に付けてほしいと思います。

それでは、今回は以上です。読者の皆さん、See you.


おまけ


今日、弥富さんがレッスンでやった文法は関係代名詞でした。

彼女が言うには、テストではできるのに会話ではなかなかできずに、悩んでいたようです。

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