国名、地名の表記、発音(1)
ある日、私がパソコンのメールボックスを開くと、弥富さんからメールが届いていました。
内容は次の通りでした。
咲先生、こんにちは。お元気ですか?
ここしばらくの間、会いに行けなくてごめんなさい。
でも、来週やっとそちらへ行く時間が取れそうな状態になりました。
もちろん、先生のところへ行って、レッスンも受けようと思っています。
できれば3レッスンくらいまとめて予約することができればうれしいです。
さて、私は先日、ロサンゼルスから来た人と話をする機会がありました。
その時、私は“You are from Los.”と言ったら、その人から“What?”と言われてしまいました。
私は(えっ?)と思い、思わず首をかしげてしまいました。
英語ではロサンゼルスのことをロスとは言わないのでしょうか?
先生、お忙しい中で恐縮ですが、この点について教えていただけますでしょうか?
よろしくお願いします。
これを受けて、私はその日のうちに返事を出すことにしました。
内容は次の通りです。
弥富さん、こんにちは。
今回はロサンゼルスという地名に関する質問、ありがとうございました。
日本語ではこの都市を略して言った場合、確かにロスと言っています。
一方、英語ではLos Angelsの頭文字を取ってLAという略称を使っています。
ロスと言った場合には、loss(損失、敗北)という意味になってしまうので、これでは“What?”と言われるのも無理はないでしょう。
また、Los Angelsを英語で正確に発音すると、ロサンジェルスになります。
ちょうど、angelはエンジェルと発音されるので、これと同様に考えていただければOKです。
さらにアクセント(英語ではよくstressと言います。)についても言いますと、この単語は「サ」の部分を強く発音します。
英語では日本語と異なる発音をする単語や、アクセントの位置が異なる単語がたくさんあるので、注意が必要なことが多いです。
でも、日本語の漢字の発音が大変なのと同様に、英語の発音にもややこしいものが多いので、この点はお互い様だと思います。
弥富さんも一生懸命英語の勉強をし、時には失敗もしながら色々なことを覚えていただければ、私としてはうれしいです。
今度会った時には、楽しくレッスンをしましょう。
弥富さんから何か要望があれば、できる限りメールやレッスンでお答えしたいと思っていますので、遠慮なく教えてください。
それでは今日は以上です。弥富さん、See you.
この後、彼女からは発音に注意が必要な国名、都市名について教えてくださいという要望が来ました。
私はレッスンの時間を利用して、それらの単語を教えることにしました。
そして来週のレッスンの時間までにそれらの単語についての資料を作ることにしました。
今回はそれをここに掲載します。
1)ブラジル
ブラジルワールドカップの時、国名の表記がBrazilだったりBrasilだったりしたため、「あれ?」と思った人も多いのではないかと思います。
実際、私自身もzとsのどちらの表記が正しいのかという質問を受けたことがあります。
この場合、英語での正しい表記はBrazilになります。
一方のBrasilはブラジルの公用語である、ポルトガル語での表記です。
「ブラジル人」、「ブラジルの」という意味の単語はBrazilianとなり、ここでもzが使われています。
一方、この国の首都のブラジリアはBrasiliaとsが使われています。
テストに出るようなことではないと思いますが、ひっかけ問題として使えるかもしれません。
2)グルジア → ジョージア
かつて旧ソ連に所属していて、その後ロシアから独立した国の中に、グルジアという国があります。
英語ではGeorgiaという表記で、アメリカのジョージア州と同じなので、イングリッシュスピーカーはこの国をジョージアと発音しています。
一方、この国名をロシア語に基づいてアルファベット表記するとGruziyaとなり、私達はそれにそって発音をしていたため、日本語表記ではグルジアとなっていました。
そんな中、2015年4月22日から日本語でもこの国の名前を「ジョージア」にすることになりました。
これはこの国とロシアとの間に戦争が起こるなどして関係が悪化し、国名をロシア語から英語の発音に変更してほしいと各国に訴えた結果です。
最初のうちはジョージアという発音に抵抗があるかもしれませんが、現地の人達がお願いしていることなので、ぜひこう発音をしていただけるよう、よろしくお願いします。
3)ロシア
以前、「間違えやすい発音」の回でも取り上げましたので、すでに知っている人もいると思いますが、復習も兼ねてもう一度取り上げます。
ロシアの英語表記はRussiaで、発音は「ラシャ」です。
以前、久矢君にクイズを出した時、彼は「ルシア」と答えていましたし、正しく発音するのは確かに難しいです。
でも2014年に行われたソチオリンピックや、2018年に行われるサッカーワールドカップの開催国なので、この国について話すこともきっとあると思います。
だからこれを機会に正しく発音できるようになりましょう。
なお、「ロシアの」、「ロシア語」、「ロシア人」の意味のRussianという単語も「ラシャン」と発音します。
4)パリ
フランスの首都のパリを英語表記した場合、Parisとなります。
このつづりは多くの人達が知っているのですが、一方で、「この単語は最後のsを発音するんですか?」という質問を受けることがありました。
フランス語では単語の末尾の子音はほとんどの場合発音しません。
このsも例外ではないため、発音は「パリ」です。
一方、英語ではsを発音しているため、「パリス」となります。
ヨーロッパなどの都市の名前は、現地の言語の発音に合わせている場合が多いので、英語での発音と異なることが多いです。
例をあげると、フランスの都市であるChampagneはフランス語で発音すると「シャンパーニュ」になり、英語では「シャンペイン」となります。
慣れるまではとにかく覚えるしかありませんが、一つずつ覚えていってくれればそれで十分だと思います。
私としてはこれ以外にも書きたいことはありますが、今日はこれくらいにし、あとは日を改めて書くことにしました。
そして弥富さんとレッスンをする時にこれらの資料を見せて、楽しく会話をしていきたいと思います。
それでは今日は以上になります。読者の皆さん、See you.




