励ましの表現(2)
現在、私は両親と久矢君と一緒に、4人であちこちを旅行してまわっています。
その中で、久矢君は自分の英語の実力テストを兼ねて、父のアーロンと英語で会話をしています。
会話そのものは成立していますが、彼の英語には細かい間違いがいくつもありました。
そのため、突っ込み所はいくつもありましたが、父は久矢君をからかったりはせず、楽しく会話をしてくれました。
私としてはそれを見て、今まで講師として久矢君を鍛え上げてきた努力が報われたような気がしてうれしくなりました。
一方、これまであまり会話に参加せず、あまり目立たなかった母の桜は、ふと私の前に出てきて、「ねえ咲、私達からちょっと渡したいものがあるんだけれど、いい?」と言ってきました。
「何?お母さん。」
「咲、普段から久矢君をはじめとする、生徒の人達に色々な資料を作って渡しているでしょう。」
「うん。たくさん渡してきたわよ。そのうちのいくつかは教室の壁に貼ってあるし…。」
「そうなの。頑張っているわね。それでね、今回、私とアーロンもいくつか資料を作ってきたんだけれど、それを見せてもいいかしら?」
「えっ?お母さん達も作ってきたの?」
「そうよ。咲の頑張る様子をメールで読むうちに、私達も何か手助けができないかと思うようになってね。それで2人で作ったの。この後見せてもいいかしら?」
「うん。ぜひ見せて。」
私の返事を受けて、この後、喫茶店で一休みした時に、その資料を見せてもらうことになりました。
今回は、その時の資料をここに掲載します。
ちなみに内容は、以前(かなり前ですが)私がこのサイトで発表した「励ましの表現」の続編だそうです。
1)Chin up.
これは咲が頻繁に使っている表現です。
chinはあごで、あごをupしなさいということで、直訳すると「あごを上げなさい。」となり、日本語っぽく解釈すると「下を向くな。」になります。
Keep your chin up.とも言います。
発音する時は、nとuがつながるため、「チナッ。」と言っているように聞こえます。
2)Where there's a will, there's a way.
これは英語のことわざで「こころざしのあるところに道はある。」という意味です。
(このwillは「意思」、「こころざし」という意味の名詞です。)
咲はこの表現をとても気に入っており、僕(アーロン)が「好きな英語表現は何ですか?」と言ったら、迷うことなくこれを挙げていました。
落ち込んだり、不安を感じている人に「頑張って。」のような意味で使うことができます。
例文
A:Do you think I'll be able to win the game?
(私が試合で勝てると思いますか?)
B:Where there's a will, there's a way.
(こころざしのあるところに道はありますよ。)(←「だから頑張って。」という意味が込められています。)
3)You can do it.
これはこのまま「君ならできる。」という意味で、日本語の「頑張って。」という意味で使えます。
特にひねりもなく、英会話の初心者でも理解できるので、とても使い勝手がいい表現です。
昔、僕が日本で英会話の講師をしていた時、レッスンでよく使っていました。
4)You have nothing to lose.
これは直訳すると「失う物など何もない。」となり、「だめでもともと。」という意味にもなります。
相手がたとえ失敗したり、負けたとしても失う物がない場合に使われます。
この表現には相手を励ましながら、「失う物などないのだから、やってみるべきだ。」というニュアンスが含まれます。
私(桜)としては「どうせ失う物などないんだし。」というような、消極的な意味としては使わない方がいいと思っています。
例文
A:I wonder if I could pass the test.
(このテストに合格できるかなあ。)
B:You have nothing to lose.
(失うものなどないのだから、やってみなさいよ。)
5)Good try. Good challenge.
物事に挑んでいっても、結果的にうまくいかなかったということは多々あります。
そんな時に相手を励ます表現として、“Good try.”または“Good challenge.”があります。
相手の失敗を「積極的なミス(positive mistake)」としてとらえ、次につなげて欲しいという意味合いを込めることができます。
相手のやったことが「しんどくて多くの努力を必要とすること」であれば、Good challengeとなりますが、多くの場合はGood try.というケースが当てはまると思います。
アーロンは“Don't be afraid of failures.”(失敗を恐れるな。)とよく言っていますが、一方で相手が失敗してしまった時には、できるだけこの言葉をかけるようにしています。
相手の失敗を責めたり、批判したりすることは簡単ですが、このような配慮ができるようにもなってほしいですね。
例文
A:Sorry. I couldn't do it.
(すみません、だめでした。)
B:Good try. You'll be able to do it next time.
(よくやった。次はきっとできるよ。)
「すご~い、これ。本当に2人で作ったの?」
「ええ、そうよ。2)と3)はアーロンが、1)と4)が私が作り、5)は2人で協力して作ったの。
(※アーロンが作った部分は原文が英語で、それを桜が日本語訳しました。)
咲がメールで送ってくれた原稿をもとにしたんだけれど、どうかしら?」
「私の作品とそっくりよ。本当にありがとう。」
私がその原稿を眺めていると、久矢君もそれに興味を持ったので、私は彼に原稿を見せました。
彼は結構熱心にそれを読んでいました。
「この中で、Chin up.は僕も使うなあ。何しろ、サキが決め台詞のように言っているから。」
「確かにそうね。いつしかその口ぐせが久矢君にうつったみたいね。」
「そりゃ何度も言っていれば、こっちだって覚えるよ。それに僕が他の人と英語で話した時にこれを言ったら、『この人、こんな表現を知っているのか。』という感じで驚いていたし、それを見たら僕もますます使ってみたくなったから。」
「あら、そう。じゃあ、誰か落ち込んでいたら、どんどん使っていってほしいわね。」
というわけで、今回は両親が作ってくれた励ましの表現を紹介しました。
日本語でもそうですが、状況に応じて的確な励ましのアドバイスができるようになると、人に頼られる存在になれると思いますので、ぜひ使いこなせるようになってほしいです。
両親の作った資料はまだありますが、それについては後程発表したいと思っています。
それでは今回は以上です。読者のみなさん、See you.