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冠詞a/anの有無による違い

今回は「りんごはいかがですか?」の回の続きで、私と久矢君が私の両親、アーロンと桜に会った時のことです。

私達4人はリムジンバスを降りた後、両親の泊まる宿までタクシーで行くことにしました。

タクシーを待っている間、久矢君は父と積極的に英語で会話をしました。

彼は緊張のせいかところどころ間違えながらも、何とか会話を成り立たせることができました。

しかし父は間違いに対してちょっと大げさなリアクションをしていたので、私としてはそれがちょっと気になりました。

例としては次のようなケースがありました。


Aaron: Hisaya-kun, what you do say when we need to take a taxi?

(久矢君、タクシーに乗る必要がある場合、何て言いますか?)

Hisaya: Well …, “Please call me taxi…, I guess?”

(えっと、「タクシーを呼んでください…かな?」と言ったつもり。)

久矢君がこのように答えると、父はいきなり笑い出し、

“ Hahaha…, Hey taxi, how are you?”

(ハハハ…、ヘイタクシー、調子はどうだ?)

と言っていました。

久矢君はどうして笑われたのかがいまいち理解できていなかったようで、思わずきょとんとしてしまいました。

その後も久矢君が「バスに乗りたいです。」と言おうとして

“I want to ride a bus.”

と言った時には

“OK, I see. We, three of us, will take a bus and you'll RIDE it.”

と、rideをわざと強調しながらからかってきました。

久矢君はどうしてこんな言われ方をしたのかが分からず、きょとんとするばかりでした。

(この文章の訳は後ほど。)

一方、私はできるだけ2人の会話には口をはさまないつもりでしたが、さすがに黙ってはいられなくなり、

“Hey, Dad, you're going too far! He's workin' on it!”

(ちょっとお父さん、やり過ぎよ!彼はまじめにやっているんだから!)

と注意しました。

父は私の発言に驚きながらも、

“I know, I know, Saki. I'm just pulling his leg.”

(分かってるよ、咲。ちょっと彼をからかっただけだよ。)

と、笑いながら答えてきました。

一方、久矢君は私と父の言ったことの意味が分からず、ますますきょとんとしてしまいました。

するとここでタクシーが来たため、会話はここで中断してしまいました。


タクシーを降りて宿に到着すると、両親はフロントでチェックインし、部屋に行くかたわら、私は外で久矢君に、タクシーに乗る前に私と父が言ったことの意味について説明しました。

さらにその後、I want to ride a bus.の意味が「私はバスにまたがって乗りたいです。」つまり「バスの上に乗りたいです。」という意味であること。さらには父の言った

“OK, I see. We, three of us, will take a bus and you'll RIDE it.”が、

「オーケー、分かった。私達3人はバスに乗るから、君はバスの上に乗りなさい。」という意味であることを打ち明けました。

「なるほど、そういうわけだったのか。これじゃ笑われるのも無理はないな。」

「確かにそうかもしれないけれど、父のリアクションはオーバーだったわね。」

「まあ、とにかくバス(他に、車やタクシー)にrideは使わない方がいいってことが分かったから、それでいいや。でも、僕が“Please call me taxi.”と言った時にはどうして笑われたんだろう?」

「私にはその理由が分かるわよ。説明してもいい?」

「うん、頼む。」

「でもこの謎を解くには冠詞のa(またはan)の有無による違いを理解しないとね。」


というわけで、今回はかなり前置きが長くなってしまいましたが、今回は冠詞の有無による意味の違いについて学ぶことにします。

最初の2つは「りんごはいかがですか?」の内容とかぶりますが、復習も兼ねて説明をしていきます。



1)pizza

英語でpizza(発音はピッツア)と言った場合は、「ピザ」という意味になります。

しかし可算名詞の場合では「切り分ける前の1枚の大きな丸いピザ」という意味になり、不可算名詞では「切り分けた後のピザ1切れ」という意味になるので、使い分けが必要です。

ピザを注文する場合、

“Two seafood pizzas, please.”

では「シーフードピザをまるごと2枚ください。」

“Two pieces of seafood pizza, please.”

では「シーフードピザを2切れください。」となります。


これはデコレーションケーキ(英語ではround cake、decorated cake)やチーズケーキ(cheese cake)にも当てはまります。

なお、シュークリーム(cream puff)やパンケーキ(pancake。なお、ホットケーキは和製英語です。)など、通常切り分けたりせずに1人で丸ごと食べ切ってしまうケーキの場合は通常、可算名詞となります。

(食べかけの場合や、1個を切り分けた場合は不可算名詞ですけれどね。)



2)dog

このdogという単語は辞書では可算名詞の意味しか記載されていないため、意図的に不可算名詞として使うことはほとんどないと思います。

しかし不可算名詞としての意味もあるにはあるので、ここで説明することにします。

まず可算名詞としてのdogですが、これは皆さんご存じのとおり、生き物の「犬」という意味になります。

一方、aをつけずにdogと言うと「原形をとどめていない犬」→「切り分けられた犬」→「犬の肉」という意味になります。

ですからDo you like dog?と言うと、「食用の犬の肉は好きですか?」という意味になります。

この冠詞のaをつけ忘れてしまうミスは初心者によくありがちですが、仮にそうなっても意図的に「犬の肉」と言っているわけではないことは分かりますので、私はレッスンで黙認することも多いです。


私は以前、「加算、不可算で意味が変わる名詞」の回でchickenという名詞は可算名詞の場合はニワトリ、不可算名詞の場合は鶏肉と解釈していましたが、それもこの考え方に基づいています。



3)taxi

少し遅くなりましたが、ここで久矢君が言っていた質問に答えます。

このPlease call me taxi.ですが、taxiには直前に冠詞のaがありません。

これを上記の例で考えると「原形をとどめていないタクシー」と解釈できますが、そんなタクシーを呼んでも役に立ちませんので、不可算名詞として考えるには無理があります。

この場合は、次の考え方として「固有名詞」と解釈することになります。

つまり、Please call me taxi.のtaxiは固有名詞であり、ここではニックネームの意味になってしまうので、

「私をタクシーと呼んでください。」

という意味になってしまいます。

もしここでtaxiの前にaをつけて

Please call me a taxi.

と言えば、「私にタクシーを呼んでください。」という意味になります。

ただ、これよりもっと丁寧な言い方として

Would you call me a taxi?

Would you call a taxi for me?

がありますので、使うならそちらの方がいいと思います。


なお、上記のpizzaやdogも冠詞をつけずに使うと「固有名詞」として解釈することもできるのですが、私はこれらの単語をそのように使ったことがないので、省略しました。



4)固有名詞

通常、英語では人名(例えば、Picasso)や地名(例えばMt. Fuji)などの固有名詞には冠詞のaやanがつかないことになっています。

しかし、“You're a Picasso.”や“This is a Mt. Fuji.”のように、固有名詞の前にa(またはan)をつけても意味は成立します。

この場合は、「~のような人」または「~のようなもの」という意味になります。

つまり、“You're a Picasso.”と言えば「君はピカソみたいな人だね。」という意味になります。

状況としてはその人の名前は「ピカソ」ではないけれど、顔がかの有名なピカソに似ているとか、その人の描いた絵を見てピカソの作品を思い出した、さらにはピカソみたいに奇想天外な発想を持っている人だということが当てはまります。

また、“This is a Mt. Fuji.”と言えば、実際には富士山ではないけれど、その山が富士山を思い出させるものだったという場合が当てはまります。



「へえ、冠詞の有無で、意味って色々変わるんだな。確かに僕はtaxiの前にaをつけ忘れたけれど、それでまさかニックネームになるとは思わなかったよ。」

「私自身、この間違いは何度も聞いたことがあるし、父も昔英会話の講師をしていた時に聞いたことがあるそうよ。だから冷静に対処することもできたはずだったんだけど、ついつい面白がってしまったようで、ごめんね。」

「大丈夫。僕としても次からは笑って対処できるようにするし、それにアーロンさんとは何だか楽しく会話できそうな気がするから。」

「そう。それなら安心したわ。」


その後、ホテルから両親が出てきたため、私達は4人であちこちを回ることになりました。

その中で、久矢君は父と再び英語で会話を再開しました。

彼の英語にはいくつか間違いがあり、父としてはツッコミ所もありました。

しかし私の忠告が効いたのか、からかうようなことはしなくなり、楽しく会話をすることに重点を置くようになりました。

私はそれを聞いて、久矢君は父とうまくやっていけそうな気がして、安心しました。

それでは、今回は以上となります。読者のみなさん、See you.



ここだけの話


その後、私は久矢君と2人でいる時、彼に

「今度は久矢君と私の父が日本語で話してみて、父が間違えたらちょっとからかってみない?」

と問いかけました。

すると久矢君は

「アーロンさんをからかうなんて、そんなことは恐れ多くて絶対できないよ!」

と言っていました。

私としては、父が玉砕するところを見てみたかっただけに、ちょっと残念でした。

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