和製英語の例(3)
以前、弥富さんは和製英語に関する作品を自分で執筆して私を驚かせました。
彼女はその後も作品を作っては私にメールで送っています。
そして私は添削やアレンジをして磨きをかけ、彼女に返信しています。
今回、また作品が完成したので、ここに掲載することにします。
1)コインランドリー
硬貨を洗濯機に入れ、洗濯物を洗ったり乾燥させたりできるお店のことを私達は「コインランドリー」と言っています。
英語圏でもそのようなお店がありますが、その際、店の表示を見ると“laundromat”と書いてあります。
ずばり、これがコインランドリーの正式な英語名です。
英英辞典でlaundryという調べると
“clothes, etc. that need washing or that are being washed”
(洗う必要のある、または洗われている衣服など)
と書いてあります。
仮にcoin laundryと言うと「硬貨の洗濯物」となるので、日本語と同じように解釈してもらうには無理があるような気がします。
例文
・It's raining outside. We have to go to a laundromat to dry clothes.
(外では雨が降っています。服を乾かすにはコインランドリーに行くしかないでしょう。)
・Are there any laundromats near here?
(この近くにコインランドリーはありますか?)
2)ゴールデンタイム
テレビの視聴率が高くなる時間帯(日本の場合、午後7時~10時)のことを、私達はゴールデンタイム(またはゴールデンアワー)と言っています。
英語でもそれに該当する時間はありますが、この場合に「ゴールデン」という単語を使う発想はありませんので、この単語は和製英語になってしまいます。
英語ではこの場合、prime timeと言います。
ちなみにこの単語は不可算名詞です。
アメリカの場合だと、州などによる違いはありますが、基本的に午後7時か8時~11時と解釈されています。
一方、プライムタイムというカタカナ語も聞くようになってきているので、これからはこちらの単語が主流になっていくかもしれません。
例文
・There was nothing interesting on TV during prime time.
(プライムタイムの間、テレビでは何も面白いものがなかった。)
ちなみに、日本語では「ゴールデンウィーク」という単語があります。
この単語も和製英語で、英語圏では通じませんでした。
しかし、この期間に日本人が大勢海外にやってくることが色々な国で認知されるようになり、さらには口コミや報道などでGolden Weekという単語が伝えられるうちに、次第に正式な英単語として認められるようになりました。
ですから日本はもちろん、海外でもかなりの確率で通じるようになっています。
3)マイペース、マイホーム
これらの単語は、何とか英語でも通じるのではないかと思いますが、和製英語です。
結論を先に言ってしまいますと、マイペースはat one's own pace、マイホームはone's own home(またはone's own house)と言います。
主語が1人称の場合はそれぞれat my own pace、my own homeとなるので、これを聞いた日本人がatとownを省略して、結果的に和製英語になってしまったのではないかと考えられます。
この省略されたownは英英辞典では次のように記載されています。
“used to emphasize that something belongs to particular person”
(特定の人が所有している物を強調するために使われる)
この単語は使わなくても意味としては成立しますが、強調の意味で使うことができます。
なお、冠詞のa(またはan)の後ろに使うことはできず、所有格の後ろで使うことになります。
例文
・You can study at your own pace.
(自分のペースで勉強していいよ。)
・I wish we could own our own home.
(自分達の持ち家を持つことができればなあ。)
4)ビジネスホテル
ビジネスマン(英語ではoffice worker)がよく宿泊する、手ごろな価格のホテルのことを、私達は「ビジネスホテル」と言っています。
一方、英語ではそのようなホテルにピッタリと当てはまる単語がないのが現状です。
この場合は単にhotelと言うのが一番無難かもしれません。
もう少し詳しく説明したい場合は、宿泊料金を言うか、そのホテルの画像を見せるのがいいかと思います。
なお、英語圏では「格安の宿」という意味で“backpackers”という単語をよく見かけます。
これはbackpack(旅行者がよく背負っている袋。日本語ではリュックサックと解釈されることが多い。)を背負っている人達がよく泊まるということで、この名前が付いています。
ビジネスホテルとbackpackers hotel(またはbackpackers hostel)は意味としては一致しませんが、ビジネスホテルの意味を説明するには有効かもしれません。
実際に、私(スクーグ咲)は外国から旅行目的でやってきたbackpackersが日本のビジネスホテルに宿泊している光景を何度も見たことがあります。
例文
・Why don't you stay in ABC hotel? It's nice for a backpackers.
(ABCホテルに泊まってはいかがですか?バックパッカーズ(安宿)の割にはいいですよ。)
この内容を弥富さんに送った後、彼女からは次の内容の返事が返ってきました。
咲先生、このたびは私の作った和製英語に関する作品を添削し、立派な作品として完成させてくださいまして、本当にありがとうございました。
ビジネスホテルに関しては英語に該当する単語がないにも関わらず、私が取り上げてしまったため、難しかったと思いますが、ここまでまとめ上げて下さったのは本当に頭が下がる思いです。
(※弥富さんは「英語では単にhotel言うか、cheap hotelと言います。」と結論付けていました。ちなみにcheapはあまりいい意味ではないので、私の判断でこの単語をカットしました。)
私はこれからも英語の勉強をがんばりますので、先生も仕事がんばってください。
それでは、今日は以上です。先生、See you.
和製英語の中には英語に該当する単語がないものもあるため、その場合は解釈がかなり大変です。
本音を言えば、私もビジネスホテルに関してはこれで良かったのだろうかという思いはありますが、とりあえず弥富さんが喜んでくれたため、ほっとしています。
ただ、彼女の「和製英語」の考え方にはちょっと疑問に思う点もあったので、私はそれについてメールで指摘することにしました。
それについてはまた後ほど書くことにします。
それでは、今日は以上となります。読者の皆さん、See you.