和製英語の例
私達が日常会話でたくさんのカタカナ語を使っています。
その中には英語としてきちんと通じるものも多いのですが、ネイティヴスピーカーには通じない、または違う意味になってしまうものもたくさんあります。
私の経験でも、生徒さん達がレッスン中に和製英語を言ってしまうケースは結構ありました。
これは弥富さんも同じで、以前私が店員になり、彼女が買い物や注文をするという設定のレッスンをした時、「フライドポテト」、「アメリカンドッグ」という単語を使っていました。
(復習も兼ねてもう一度説明しますと、フライドポテトはアメリカ英語ならFrench friesまたはfries、イギリス英語ならchipsとなり、アメリカンドッグはcorn dogとなります。)
さらに言うと、彼女は別の和製英語の単語も言っていました。
私はその時、一度にあまりたくさん指摘してはいけないと思い、その単語については黙っていましたが、後になってこの単語についても指摘することにし、メールで送ることにしました。
内容は次の通りです。
弥富さん、こんにちは。
この前のショッピングを模擬したレッスン、楽しんでいただけましたでしょうか?
その時、フライドポテトやアメリカンドッグを英語で何と言うのかということも学ぶことができ、有意義なレッスンになったと思います。
さて、弥富さんはそのレッスン中に「ペットボトル」という単語を言っていましたので、今回はそれについても説明しようと思います。
ペット(PET)はpolyethylene terephthalate(ポリエチレンテレフタレート)という名のプラスチックに由来しており、そこからアルファベット3文字を取って、ペットボトルと命名されました。
私達はこれを見かけない日はまずないでしょうし、毎日のように使っている単語でもあります。
しかしこの単語は和製英語で、英語では“plastic bottle”となっています。
私は生徒さんがレッスン中にこういった和製英語の単語を言ってきた場合、その生徒さんのレベルやその場の状況を考慮し、教えるか黙認するかを即座に判断しており、レッスン時は黙認を選択しました。
(ちなみに私の経験では黙認したことの方が多いです。)
また、英会話の先生の中には、自分からpet bottleと言う人もいますし、日本国内であれば外国人にも少しずつ定着してきているようなので、完全な和製英語ではなくなりつつあるかもしれません。
ただ、海外ではplastic bottleと言わないとほとんどの確率で通じないと思いますので、やはり英語で話す時には弥富さんをはじめ、一人でも多くの人達にこちらの言い方を覚えて欲しいと思っています。
ちなみに私は英語をしゃべっている時に、自分からpet bottleとは言わず、plastic bottlesと言っています。
それで生徒さんに通じなかった場合には、
“In Japanese, we call them pet bottles.”
というように付け足しています。
他にも何か気になった単語がありましたら、私に遠慮なく質問してくださいね。
返事お待ちしています。それでは弥富さん、See you.
それからしばらくして、彼女から返事が来ました。
内容は次の通りです。
咲先生、こんにちは。
この度はメールでのご指摘、ありがとうございました。
実は私自身、pet bottleと言った時に、果たして通じるのかなという疑問はありましたが、先生はスルーしていたため、(あっ、この単語は英語として通じるんだ。)と思ってしまいました。
ですからメールを読んでちょっと驚きました。
また、先生が生徒さん達に色々な配慮をしているということを知り、講師って大変なんだなとも思いました。
さて、私は以前から気になっていたのですが、consentを和英辞典で調べたら、「同意(する)」という意味で書いてありました。
ということは、私達が日本語で使っている「コンセント」は和製英語でしょうか?
他にもノートパソコンは和製英語ですよと言われたことがあるのですが、「じゃあ正しい単語は何なの?」と聞いても教えてくれなかったため、疑問だけが残ってしまったということもありました。
この単語についても教えていただけますでしょうか?
お忙しい中、恐縮ですが、時間があればぜひ教えていただきたいと思います。
先生、よろしくお願いします。
というわけで、今回は弥富さんのご要望にお答えして、これらの単語について解説していきたいと思います。
ちなみにペットボトル、コンセント、ノートパソコンは日常生活でも使用頻度が高いので、ぜひ覚えておきましょう。
1)コンセント
この単語は日本語と英語では全く違う意味で使われています。
英英辞典で、consentは次のように書かれています。
to agree to something, to allow something to happen
(何かに賛成する、何かを起こすことを許可する)
agreement, permission
(賛成、許可)
弥富さんの言ったとおり、日本語のコンセントとは全然意味が違いますので、間違えて使うと訳の分からない英語になってしまいます。
日本語のコンセントは電源プラグを指す場合もあれば、プラグの差込口を指す場合もあります。
それらを英語で言う場合、前者は“plug”、後者はアメリカ英語では“outlet”、イギリス英語では“socket”と言います。
また、plugには「プラグをつなぐ」という動詞としての意味もあります。
反対にプラグを外す場合はunplugと言います。
例文
・Please put this plug in the outlet.
(このプラグをコンセントにつないでください。)
・Please do not forget to unplug when you don't use TV for a while.
(テレビをしばらくの間使わない場合は、プラグを忘れずに抜いてください。)
・Did you get consent?
(承認(または許可)はもらえましたか?)
2)ノートパソコン
パソコンは“personal computer”の略ですが、英語ではcomputerと言ったり、2語の頭文字をとって、PCと言います。
これはある程度英会話に精通した人であれば、間違えずにできています。
一方、そういう人であっても、ノートパソコンを“note PC”と言ってしまう人がいます。
日本では「ノートのように薄いパソコン」という意味でこの名前がついたためでしょう。
一方、英語では「ひざ(lap)の上に乗るcomputer」という意味で“laptop computer”と言います。
(computerは省略可能です。)
laptopという英単語は、広く普及するとともに、使用頻度も増えてきているので、この機会に間違えずに使えるようにしておきましょう。
例文
・Don't you think laptops are essential for business?
(ノートパソコンはビジネスの必需品だと思わない?)
・Which would you buy, a desktop computer or a laptop?
(デスクトップのパソコンとノートパソコン、どちらを買いますか?)
3)スルーする
弥富さんのメールの中で、「スルーする」というフレーズがあったので、ついでにここで説明しておくことにします。
英語のthroughは、英英辞典では次のように書かれています。
・from one end or side to the other
(一つの端からもう一つの端まで)
・from the beginning to the end of something
(物事の最初から最後まで)
・until, and including ~
(~を含み、~まで)
例文を挙げると次のようになります。
・He walked through in this city.
(彼はこの都市の端から端までを歩いた。)
・This service won't last through this month.
(このサービスは今月の間じゅう(今月の最初から最後まで)は続きません。)
・Questions 10 through 13 refer to this message.
(問題10~13はこのメッセージに関するものです。)
他にもgo throughで「通り抜ける」、drive throughで「ドライブスルー」(これは英語でそのまま通じます。なお、看板では“DRIVE THRU”と表記されることが多いです。)という意味になります。
しかし、どの表現の中にも、日本語の「スルー」という意味合いはないので、ネイティヴスピーカーには通じません。
この「スルー」は「気にしない」、「無視する」という意味で使われているので、それぞれに該当する“do not mind”(またはdo not care)、“ignore”がいいでしょう。
例文
・I didn't mind this mistake in this lesson.
(私はこのレッスン時には、その間違いをスルーしました(気にしませんでした)。)
・Please don't ignore my opinion.
(私の意見をスルー(無視)しないでください。)
このようにまとめて、私は弥富さんに返信をしました。
これからどのようなメールが送られてくるのか楽しみです。
そして、彼女から依頼があれば、また色々なことに答えていこうと思っています。
今日は以上です。それではみなさん、See you.