someとany
最近、弥富さんが私の住んでいる所に滞在する機会が増えてきたことに伴って、私の英会話教室に入学することを決意しました。
私は弥富さんよりも年上ですが(一方で、背は私の方が低いです。)、彼女とは親友になっていたので、会う機会が増えたのは本当にうれしいです。
彼女はレベルチェックの直後に、早速レッスンの予約を入れました。
そして第1回のレッスンではsomeとanyの使い分けについて勉強しました。
弥富さんは単語が急に出てこなくなって会話が止まったり、あちこちで文法や単語の間違いが見受けられましたが、一生懸命英語を頑張ろうとする意気込みはひしひしと伝わってきました。
そして、例文や練習問題などを一通りやった後、私が彼女に
“Do you have any questions?”
(何か質問はありますか?)
と問いかけました。
弥富さんはYes, I do.と答えましたが、その質問を英語でうまく言うことができませんでした。
そこでここからは日本語OKにすることにしました。
「先生、例文の中でDo you sing some songs of the Beatles?(あなたはビートルズの歌を歌いますか?)という文章があったのですが、これっておかしくないですか?確か、someは疑問文や否定文ではanyになると中学で習ったのですが?」
「確かにそう習ったわね。でも疑問文でsomeを使うのは間違いではないわよ。」
「えっ?そうなんですか?じゃあ、教科書と違うじゃないですか!」
「違うというよりも、中学では詳しく教えるだけの余裕がないんでしょうね。そこまで教えていたらかなり長くなってしまうし、中学英語の範囲を超えてしまうかもしれないから。」
「そうなんですか。でもまだ時間もあることですし、Could you tell me about it clearly?(詳しく教えてくれますか?)」
「Sure. Let me explain.(もちろん。では説明しますね。)」
というわけで、今回はsomeとanyの使い方について説明します。
I can sing some songs of the Beatles.(私はビートルズの歌をいくつか歌えます。)を疑問文にした場合、someをanyに変えて
Do you sing any songs of the Beatles?
と言うのが一般的です。
(※Can youはあまり丁寧な言い方ではないため、Do youに置き換えました。詳しい理由は「助動詞の落とし穴」参照です。)
では、この文章とDo you sing some songs of the Beatles?にはどのような違いがあるのでしょうか?
まず、someから説明することにします。
・Do you sing some songs of the Beatles?
この場合、この質問をした人はsome songsと言っているので、相手の答はYesであろう。さらには「何曲かは歌えるだろう」という前提条件があります。
ですから相手の答がもしNoだったら、言った人は結構驚くかもしれません。
さらに言うと、相手が1曲しか歌える歌がない場合は“No, just only one.”(いいえ、たった1曲だけです。)と答えてくることもあり得ます。
私がその相手だったら、少なくとも何曲かは歌えないと、Yesと答えられなくなりそうな気がします。
・Do you sing any songs of the Beatles?
こちらの場合、この質問をした人には相手の答がYesという前提条件はありません。
ですから、相手は1曲も歌えないかもしれないし、1曲だけ歌えるかもしれない。何曲か歌えるかもしれないし、たくさんかもしれない。とにかく相手の答がどうなるのかは予想できていません。
ですからもし返事がNoでも、驚くことはないでしょう。
私がその相手の場合、もし1曲も歌えなければ答はNoですが、1曲でも歌えればYes, I do.と答えるつもりです。
(※実際のところ、私は数十曲歌えます。)
「こんな違いがあったんですね。何だかややこしいですね。」
「そうね。さらに言うと、anyを使った疑問文の場合、言い方が悪いと『どうせ歌える曲なんてないでしょうけれど。』という意味も込められてしまうので、嫌な伝わり方をすることもあり得るの。」
「これじゃあ、かえってanyよりもsomeを使うべきじゃないですか?」
「まあ、someでも言い方次第では『何曲かは歌えるんでしょ?』という意味になるので、これはこれで嫌味になるかもしれないけれどね。」
「じゃあ、これらの使い分けって、結構難しいんですね。」
「かもしれないわね。特に中学生にとってはなおさらでしょうね。」
「確かに。これじゃあ、中学校での教え方に文句は言えませんね。」
するとここでレッスン終了時間になったため、説明はここで打ち切ることになりました。
私としてはこのsomeとanyについてもっと説明しておきたいことがあったため、後で次のことを書いて弥富さんに説明することにしました。
・I can sing any song of the Beatles.
このように、anyは肯定文で使うこともできます。この場合は全肯定の意味になり、「私はビートルズのどんな歌でも歌えます。」という訳になります。
ビートルズの歌は200曲以上ありますが、「これらの全てを歌えます」と言い切っていることになります。
I can sing all(the)songs of the Beatles.
と言い換えることもできます。(カッコ内のtheは省略可能。)
なお、anyを肯定文で使った場合、後ろに続く名詞は単数形になるので、間違えないようにしてください。
ただし、any of themのように、直後にofが来る場合は、その後の名詞が複数形になります。
・I can sing some songs of the Beatles.
この場合は「私はビートルズの歌をいくつか歌えます。」という意味になります。
何曲歌えるのかはこれだけでは分かりませんが、とにかく歌えるものもあるし、歌えないものもあるということが分かります。
以上のことは不可算名詞にも当てはまります。
Do you have some food?
(食べ物を持っていますか?)
と言った場合には、いくらかは持っていることを想定した上で問いかけている一方、
Do you have any food?
と言った場合には、持っているのか持っていないのか分からない中で問いかけていることになります。
これを弥富さんに見せると彼女は
「ありがとうございます、先生。You know any part of English.」
と言ってくれました。
「英語のどの部分でも知っている。」という意味ですが、私はLとRの区別や、可算名詞や不可算名詞など苦手な部分もあり、英語の全てを知っているわけではないので、思わず苦笑いしてしまいました。
でも、彼女と会話するのはとても楽しいですし、これからも色んなことを教えていきたいと思っています。
「それでは弥富さん、今日は一緒に締めのあいさつをしませんか?」
「えっ?いいんですか?先生。」
「いいわよ。喜んで。」
「じゃあ、私も参加させていただきます。」
「それじゃいくわよ。せーの…。」
(2人で一緒に)「今日は以上です。それではみなさん、See you.」




