可算名詞と不可算名詞
英語を勉強している人にとって、頭の痛い文法の一つに可算名詞、不可算名詞の使い分けがあります。
物の数を数えるという発想は日本語にもありますが、それ程気にしていません。
一方、英語では数えられる名詞(可算名詞)と、数えられない名詞(不可算名詞)を使い分けなければならず、可算名詞の場合にはさらに単数と複数を使い分けなければなりません。
(不可算名詞の場合でもa glass of water、two glasses of waterというような数え方をしますけれどね。)
このことは久矢君にとっても悩みの種だったようで、ある日私に相談を持ちかけてきました。
「サキ、可算名詞と不可算名詞、ややこしくてどうも自信が持てないんだ。どうすればいいんだろ?」
「それは誰もが悩むことでしょうね。実を言うと私も会話の後で単語を調べたら間違えていたという経験があるし、苦手としているところよ。」
「えっ?英語の先生をしているサキが?」
「…その言い方はどうかと思うけれど、たとえネイティヴスピーカーであっても、可算名詞と不可算名詞の使い分けは難しいことよ。」
「本当に?」
「うん。例えて言うなら、日本語でぶどうやイカなどを数える時は間違えやすいし、日本語の文章を読んでいる時に漢字が読めなかったりすることもあるでしょ?」
「ま、まあ、そうだね。僕は敬語を度々間違えるし。」
「それと同様に考えてくれればいいわ。もう一度言うと、この文法はネイティヴスピーカーでさえ難しいので、久矢君が苦労するのも無理はないでしょうね。でも、久矢君としては少しでも間違えずに使えるようになりたいでしょう?」
「う、うん。」(※この時、彼は(サキ、ちょっと強引だなあ…。)と心の中でつぶやいています。)
「じゃあ、私は明日休みなので、資料を作ってきてあげるわね。」
「ど、どうも。」(※この時、彼は(サキに笑顔でこんなこと言われたらNoとは言えないもんなあ…。)と心の中でつぶやいています。)
というわけで、今回は可算名詞と不可算名詞について私の気付いたことを書いていきたいと思います。
可算名詞はbookやapple、cardなど容易に数えられるものから、opportunity(機会)、cloud(雲)など数えにくいものもあります。
さらに、可算名詞の中にはfish(魚)やsheep(羊)、deer(鹿)のように、複数になってもsがつかないもの、tooth、childのように複数になると不規則変化をするものもあります。
不可算名詞はJapan、Tokyo、the Sun(太陽)のように元々一つしかないもの、water、air、iron(鉄)、moneyのように定まった形のないもの、love、health、musicのような形自体がないものなどがあります。
さらにはbread(パン)やluggage(荷物)、furniture(家具)、asparagus(アスパラガス)のように、意外な不可算名詞もあります。
(※荷物を英語で言う時、アメリカ英語ではbaggage、イギリス英語ではluggageと習った人も多いと思いますが、今ではどちらでも通じます。私の経験では、最近ではluggageの方を多く見かけます。)
これだけでも何だかややこしいですが、これらは辞書に[C]と[U]のどちらが書いてあるかで見極めることができます。
CはCountableの頭文字で可算名詞、UはUncountableの頭文字で不可算名詞です。
(※なお、辞書によってはこの[C]と[U]のマークがないものもありますので、その場合は見極めることができません。)
後は、とにかく覚えるということが求められます。
とはいえ、この文法はただでさえ難しいだけでなく、新しい名詞が誕生する度にどちらになるかを決めないといけないので、この点もネイティヴスピーカーにとっては頭の痛いところです。
どの言語にも、とにかく覚えるしかないものはあります。
フランス語でも単語を習う度にそれが男性なのか、女性なのかを覚えなければなりません。
(私はそれになじめず、最終的にフランス語の勉強に挫折しました。)
日本語でも物を数える時は物によって使い分けなければなりません。
ですから、私としては一つ一つじっくりと時間をかけて覚えていって頂ければ十分です。
可算名詞に関する質問の中で多いものとして「fishやsheepの複数形に何故sがつかないのか。」があります。
これは英語でfishと言った場合、同じ種類の魚の群れを連想することに由来しています。
魚の群れの中には確かに複数の魚がいますが、これらを1匹2匹と数えたりはしませんよね。
(数えていたらきりがないです。)
そのため、可算名詞ではあるけれどsがつかないという、ちょっと中途半端な形になりました。
これはsheepやdeerも通常は群れを成して生活しているからということに由来します。
また、fishが単複同形であることが影響してか、魚の名前には基本的にsがつきません。
なお、fishを辞書で調べると“pl. fish or fishes”(複数 fishまたはfishes)と書いてありますが、esがつくのは複数の種類の魚を考慮した場合に限られます。
例文
The pond has several fishes.
(この池にはいくつかの種類の魚がいる。)
とはいえ、会話の中でfishesと言うことはまれなので、ほとんど単複同形と考えていいでしょう。
他に可算名詞に関する質問として「相手に『りんごは好きですか?』と言う時になぜ“Do you like an apple?”ではなく“Do you like apples?”と言うのですか?」というのもあります。
この場合、英語でDo you like an apple?と聞くと、「1個のりんごは好きですか?」となるので、言葉のあやが生じてしまいます。
さらに言うと、英語では可算名詞の場合、それが単数か複数かは関係なく、とにかく物(ここではりんご)そのものを指す場合は、複数を選択することになっています。
ですから、appleが複数形になり、“Do you like apples?”と言うことになります。
例文
・When I was a child, I couldn't eat tomatoes.
(私は子供の頃、トマトを食べられなかった。)
・Cheetahs run really fast.
(チーターはとても速く走ります。)
・Do you have any pens?
(ペン持っていますか?)
(※Do you have a pen?でも通じますが、この場合は本数にはこだわらず、とにかくペンそのものを持っていますかと聞いているので、複数形になっています。)
一方、不可算名詞に関する質問として「パンやステーキはどうして数えられない名詞なのですか?」というものがあります。
その理由について、ここでは食パン(bread)を例に挙げて説明します。
食パンは最初は大きな塊であり、私達はそれをスライス状に切り分けてから食べています。
(近年はすでに切り分けられた状態で売られているものが多いですけれどね。)
このようなものは、英語では数えられないものとして考えられているため、食パンは不可算名詞に分類されています。
ステーキの場合でも、最初は大きな肉の塊であり、それを切り分けてから食べるため、不可算名詞になります。
他に、板チョコレートも最初は大きな塊で、それを小さく分けてから食べる、紙も最初は大きなロール状になっており、それを決められたサイズに切ってから使うという理由で不可算名詞になります。
なお、食パンという意味のbreadは不可算名詞ですが、サンドイッチ(sandwich)やドーナツ(doughnut)のように、通常切り分けずに1人で1個を食べきってしまうパンの場合は可算名詞になります。
しかし、キャベツ(cabbage)は辞書で調べるとCとUが両方書かれているため、かなりややこしいです。
私の経験では、農場で栽培されている時は可算名詞として扱ったことがありますが、通常は不可算名詞として扱われています。
これはキャベツは1人で1玉を食べ切ってしまうことはなく、食卓では分けたものを食べているからだと思われます。
(スーパーで1玉として売られているキャベツは、可算なのか不可算なのかで意見が分かれることがあり、微妙なところです。)
他に、luggageが不可算名詞になる理由については、一口に「荷物」と言ってもスーツケース(suitcase)やリュック(backpack)など様々な種類があり、形が定まっていないためだと考えられます。
同様にfurnitureもテーブルやイス、ベッドなどが該当するため、不可算名詞になります。
一方で、asparagusがなぜ不可算名詞になるのかということに関しては、聞き手が納得できる形で説明するのが難しく、私も理由を書くことができませんでした。
これらは最後の手段として、とにかく覚えるしかないと思いますが、こういうのがテストで狙われやすいので、得点を稼ぐチャンスととらえることもできます。
とりあえず、可算名詞と不可算名詞に関する資料としては、上記のようにまとめてみました。
私はこれからこれを久矢君に見せるつもりです。
カットした内容もあるので、これで完璧というわけではありませんが、少しでも久矢君達の参考になればと思っています。
今回は以上です。それではみなさん、See you.
追記
単数・複数が同形の単語はfishなどの他にJapanese、Chinese、yen(日本円)、percent(パーセント)などがありますが、内容が長くなり過ぎるため、カットさせていただきました。




