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三人称単数現在のs

ある日、私は弥富やとみ伊予子いよこさんと直接会う機会がありました。

彼女はまだ十分な英会話力がついておらず、ほとんどの場合は日本語で会話をしましたが、頑張って勉強しているという意気込みを感じることができました。

私もそういう人には教え甲斐がありますし、実力が上がっていくのを見ると嬉しくなります。

そんな中、弥富さんは会話の中で次のような質問をしてきました。


「咲先生。会話が盛り上がっている時にすみませんけれど、ちょっと質問してもいいですか?」

「いいですよ。どんな質問ですか?」

「英語って、主語が三人称単数の時、”He likes Enka very much.”(彼は演歌がとても好きです。)というように、動詞にsがつきますよね。」

「そうよ。haveなど不規則なものもあるけれど、三人称単数で、現在形の時に、確かにsがつくわね。」

「あの、すっごく基本的な質問で申し訳ないんですが、どうしてsをつけるんでしょうか?」

「いい質問ね。確かに誰でも一度は疑問に思うでしょうね。」

「はい、私もずっと疑問に思っていました。中学生の時、先生に聞いたんですが、『こういう規則なんだからとにかく覚えなさい。』と言われてしまい、それ以来誰にも聞けないままだったんです。でも咲先生と話しているうちに改めて聞いてみたいと思いまして。先生は知っているんでしょうか?」

「知っているわよ。もうすでに何人もの人に教えてきたから。」

「本当ですか?それじゃあ、ぜひ教えてください!」


私は弥富さんに口頭で理由について教えました。

彼女は心に引っかかりながらも、ずっと封印していた疑問を解決することができたようで、とても喜んでいました。

ただ、口だけでは全部言うことができなかったので、その後、メールでさらに詳しく説明することにしました。

今回はそのメールの内容を掲載します。

その前に、主語は英語で"subject"、三人称は"the third person"、単数は"singular"(参考までに複数は"plural")、現在は"present"と言いますので、覚えておきましょう。



学校では「主語が三人称単数現在の時には動詞の語尾にsがつく」と習うものだから、後付けでsをつけるようになったと考えられがちです。

でも古来の英語では、現在のフランス語やドイツ語のように、どのような主語であっても動詞の語尾を活用させていました。

フランス語のdonner(与える)という動詞を例に挙げてみると、次のようになります。


一人称単数:je donne(私は与える)

二人称単数:tu donnes(君は与える)

三人称単数:il/elle donne(彼/彼女は与える)

一人称複数:nous donnons(私達は与える)

二人称複数、単数:vous donnez(あなた達は与える、あなたは与える)

三人称複数:ils/elles donnent(彼ら/彼女らは与える)


古来の英語もこれに似たような複雑な変化をしていました。

そしてフランス語、ドイツ語ではその活用が現在でも続いているのに対し、英語は長い時間が流れるうちに段々活用させるという規則がなくなっていき、現在は三人称単数の時に活用させる(現在のやり方では語尾にsをつける)という規則だけが残りました。

何故こうなったのか?これについては私の想像も入ってしまうけれど、自分なりの考え方で説明していくことにします。


英語では命令形などを除いて必ずI、you、we、theyといったような主語がつきます。

その主語を聞き逃さなければ、動詞の語尾を活用させなくても相手に意味を伝えることはできるので、それで段々動詞を原形のままで使うようになったと考えられます。

では三人称では原形で使わないのか?

それは次のようなことが考えられます。

主語が一人称単数なら該当する単語は自動的にI、二人称単数ならyouになるのに対し、三人称単数はhe/she/it以外に、人や物や国の名前などたくさんの種類があります。

さらには”The friend who sang Enka together”(一緒に演歌を歌った友達)というように、長い主語になることもあります。

これでは単数か複数かを決めるキーワード”friend”にsがあるかどうかを聞き逃してしまったら単数か複数かが分からなくなってしまいます。

もう一つ例を挙げると、名詞の中にはJapanese、sheep、fishのように単数複数が同じものもあるし、相手が「フィールズ(Fields)」と言った時、その単語がfieldの複数形の場合もあれば、”Fields”という人の名前(この場合は単数)ということもあります。

つまり三人称は非常に種類が多く、単数と複数の区別がつきにくいケースが多いんです。

だから動詞の語尾のsを省くことができず、生き残り続けた結果、このようになったと考えられます。


この三人称単数現在のsをつけるのは慣れるまではなかなか大変だけれど、フランス語、ドイツ語と比べれば非常に簡単なので、言語の中では覚えやすいですよ。

それにたとえsを付け忘れたとしても少し変な英語になる程度で、基本的に意味としては通じるので、ネイティヴスピーカーの人達も会話で指摘することは少ないです。

だから会話ではこういった間違いは気にせずに積極的に話してほしいですね。



私は弥富さんにこのように説明しました。

その後、彼女からは

「あれからさらに分かりやすく説明していただきまして、本当にありがとうございました!すごく参考になりました!」

という言葉を頂きました。

私もこれを読んで嬉しくなりましたし、この人の実力の上達を長い目で見守っていきたいと思いました。


というわけで、今回は以上とさせていただきます。

それではみなさん、See you.




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