日本語を勉強している人達の間違い
ある日、弥富伊予子さんからのメールが届きました。
内容は次の通りです。
咲先生、こんにちは。お元気ですか?
私はこの前の休日、本屋に行って英会話に関する本を探しました。
その際に、日本人が犯しやすい間違いに関する本がたくさん置いてあることに驚きました。
さらには日本人が作り出した和製英語に関する内容の本もありました。
日本人は英語を話せない民族だと言わんばかりのタイトルの本もありました。
これを見て、日本人が英語でこんなに多くの間違いを犯し、本来の英語ではない和製英語を作り出しているのかと思うと、何だか恥ずかしささえ込み上げてきました。
私も以前、「頑張って。」という意味で、”Fight.”と言ってしまったこともあり、たくさんの間違いをしてきました。
正直、こんな色々な間違いを犯すのは日本人だけなのでしょうか?
他の国の人達は恥ずかしい間違いをせずに外国語を身に付けているのでしょうか?
何か知っていることがあったら教えてください。
どうやら彼女は日本人が英語を学ぶことに関する劣等感を感じているようです。
でも、どこの国の人達であっても外国語の習得には大変な時間と労力を必要とするものです。
一つとして簡単に身に付く外国語はありません。
(日本人にとっては、韓国語が近い外国語なので、この言語なら比較的早く身に付きますけれどね。)
そして外国語で話す過程ではたくさんの間違いを犯すものです。
これは日本語を勉強しているネイティヴイングリッシュスピーカーにも当てはまることです。
そこで今回は、私が経験してきた日本語を外国語として勉強している人達の間違いについて書いてみたいと思います。
1)あなたはかわいいです。
私がアメリカ人の人と会話をしていた時のことです。
彼が私に向かって日本語でしゃべっていた時、
「あなたはこわいいです。」
という言葉が飛び出しました。
私は思わず”What?”と聞き返してしまいましたが、とっさに英語で
“You mean, I'm cute?”
と確認を取りました。
相手の男性は
“Oh, yeah. Did I say anything wrong?”
(ああ、そうです。何か間違ったことを言いましたか?)
と言ってきたため、「かわいい」と言おうとしてこのような間違いをしたことが分かりました。
その時は思わず苦笑してしまいましたが、以後はこのような間違いにも冷静に対処しています。
2)これ、1個ください。
別の機会には、日本語を懸命に話そうとしている外国人の人と、買い物に同行したことがあります。
その時、その人が店員さんに
「これ、いちこください。」
と言っていました。
私は一瞬「いちご」を買おうとしているのかと思いましたが、その辺りにいちごは置いてありませんでした。
その人は「これ、1個ください。」と言おうとしてこのような間違いをしてしまいました。
数字の1は、単独で使った場合、「いち」と発音しますが、後ろに「個」、「回」、「分」などの単語が続くと、「いっ」という発音になります。
とはいえ、「番」、「時」、「秒」の時には「いち」のままなので、日本語を外国語として勉強している人にとっては、これが難しいようです。
3)味噌汁を飲む
味噌汁は日本語では「飲む」ものと解釈されています。
では、英語では「食べ物」、「飲み物」のどちらになるでしょうか?
実はこれ、「食べ物」と解釈されているんです。
だから「味噌汁を飲む」を英語で言った場合、“eat miso soup”と言います。
(have miso soupとも言うので、haveを使えば間違えずにすみます。)
ちなみにお皿に盛られたスープも英語では食べ物と解釈されているため、“eat soup”と言います。
(これもhave soupと言えば間違えずにすみます。)
何故こうなるのか?
それは英語ではスプーンやフォーク、ナイフを使って口に入れるものを食べ物と解釈しているからです。
そして日本の箸もこれに含めて考えているため、味噌汁は食べ物に分類されます。
ですから私達が“drink soup”、“drink miso soup”と言ってしまうのと同様に、外国人の人達も「スープを食べる」、「味噌汁を食べる」と言ってしまうケースがあると思います。
なお、カップスープの場合だったら、お皿ではなく、マグカップのスープを飲むわけだからdrinkを使ってもいいでしょうけれど、これも人によって解釈が異なる場合もありうるので、haveを使った方が無難かもしれないですね。
ついでに、「薬を飲む」は英語では”take medicine”と言いますので、これも覚えておいてくださいね。
他にもカンフーが日本生まれだと思っていた人もいましたよ。
また、間違いというわけではないけれど、日本語を勉強している人が日本語をしゃべる場合、動詞の原形+「んです」を使うケースが多いと思います。
例文
「これから行くんです。」
「日本語を勉強するんです。」
私達には少し違和感があるかもしれないけれど、こうすれば意味が通じる上に、動詞をいちいち活用させる必要がないので、彼らにはこの言い方が好まれるかもしれません。
他にも漢字の読みや敬語は非常にレベルが高く、何度も間違えたり、挫折してしまう人も多いので、これらの点に関しては大目に見てあげた方がいいということを弥富さんに伝えました。
外国語をマスターすることは非常に長い道のりです。
たくさんのミスをしたり、恥をかいたりすることもあるでしょう。
でもその度に実力は上がっていくはずです。
それはミスをした相手にも言えることです。
同じ失敗を何度もしてしまうこともあると思いますが、自分の場合はそれを恥じたりせず、相手の場合は「以前言いましたよね。」ととがめたりせず、寛大な気持ちでいてほしいです。
弥富さんも、私のメッセージを読んだ後、
「先生、本当にありがとうございました。おかげで気持ちが楽になりました。日本人が英語を話せない民族だという劣等感からも解放されました。これからは堂々と英語を勉強していきたいです。」
という返事を出してくれました。
これを読んで、私はとても嬉しくなりました。
私のまわりでは
「私、英語は初心者ですから。」
「僕、英会話は自信ないんだ。」
という人が多いです。
でもそういう人達に前向きな気持ちになってもらい、やる気を出してもらえるように、私は努力しています。
英語の先生はただ英語を教えるだけでなく、こういったアドバイスや心のケアも大事なので、大変ですが、やりがいもあります。
みなさんも、気楽な気持ちで英語を勉強をし、会話をしていきましょう。
というわけで、今日は以上です。それではみなさん、See you.