〜7〜
「遂に私だけになっちゃったね。」
退院してから一ヶ月後、真一は自身の全てを人に語り、語り、そして誰からも理解されず羽を落として一生を終えた。
「お父さんとお母さんが私たちを生まなかったら、離婚しなかったら、愛されてなかったら…。
こんな想いしなくて済んだのかな?
せっかく仲良くなれたのに。
やっと出会えたのに。
ねぇ。真一、知ってた?
光って暗い所じゃないとわからないんだよ。
だから今は暗くていいんだ。
だっていつかは見つけられるもん。
暗ければ暗いほど私たちを照らしてる光を見つけられる。
そりゃ恐くて目をつむっちゃう時だってあるよ。
躓いて転ぶ時だってあるよ。
でも前見て歩いていればいつか見つかる。
見つかったらうれしいんだろうな。
きっと温かいんだろうな。
私たちもいつかは誰かを照らせるかな?
照らしたいな。
だから今は暗くていいんだ。
だってこの雲を抜けたら青空が見れるんだから。」
「ありがとう。」
真一は死ぬ以前にある少年と出会っていた。
その子はいつもひとりで公園の入口の所に座っていた。
ある時真一はその子に尋ねた、
「いつもそこにいるけど、友達と遊ばないの?」
その子は無邪気に笑い、答えた。
「ぼく、友達いないんだ。
病気でたまにしか学校に行けてなかったから。」
「お兄さんが友達になろうか?」
「うれしいけど、ダメだよ。」
「なんで?」
「だってお兄ちゃんそんな大きい羽着けてるじゃん。
ぼくと遊んでたらダメだよ。」
真一は偽りのないその少年に聞いた。
「君には羽が見えるの?」
「うん。でも内緒だよ。
またママに叱られるから。」
「そっか。なら空を自由に飛べるぐらいの大きな翼だといいな。」
「何いってるのお兄ちゃん。
もう自由に飛び始めてるじゃん。」
混じり気のない瞳に問いかけた。
「君には一体何が見えてるの?」
「だから羽が見えるんだって!
あっ、でも気をつけてね。
お空の上まで飛んでいこうとしちゃダメだからね。
眩し過ぎて目が見えなくなっちゃうから。
それにイカロスみたいになっちゃうよ。」
その時一台の車が隣に止まった。
「真悟、病院に行くわよ。」
「ママが迎えに来た!
じゃぁまたね。」
「ああ。また今度な。」
それから真一はただ曇った空を眺めていた。
「鳥みたいに大空を飛びたい。
月みたいに世界を照らしたい。
太陽みたいに輝きたい。
尊敬される人になれたら。
人に希望を与えられたら。
虚無感から抜け出せたら。
いつになったら飛べるんだろう。
飛ぶ理論を語れてもね。
やっぱ飛ぶためには泥にまみれて羽ばたかないと。」