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星色  作者: 一路
6/7

〜6〜

用事を終わらせ、彼は気になっていたことを解消しにいった。


「あら、真一君じゃない。」

そこは昔からお世話になっている病院だった。

「今日はどうしたの?」

「ちょっと検査に。」


検査の結果は彼にとっては幸せだったのかもしれない。

彼の心臓は恐怖によって確実に蝕まれていた。

医者からは自宅で過ごすか、入院するか選択肢を渡された。

彼は入院することを選んだ。


入院してから数日後、ある女性が来た。

それは瑠璃だった。

「調べてきたよ。瑠璃と僕の関係について。

ずっと気になっていたんだ。」

「そう。」

「お父さんは元気なの?」

「もう死んじゃった。」

「そうか。瑠璃も僕と一緒なの?」

「真一ほどきつくないけどね。

これからどうするの?」

「そうだ、人間って羽が生えてるの知ってた?」

「どうしたの?急に?」

やっとふたりの会話に笑みがこぼれた。

「人間って生まれた時から羽が生えてるんだ。

いや、羽から人間が生まれてくる。

それは永遠に消えることなく、常に存在している。

みんな羽の大きさはバラバラなんだけど、大きくなくちゃ空を飛べないんだ。

この世界は一日中曇っていてね、一生晴れないんだ。

羽が大きい人はある程度まで大きくなったら、雲の上に飛んで行ってしまう。

小さい人は大きい人に嫉妬し、貶し、上の世界に興味すら持たない。

そして羽が大きい人は小さい人の羽を大きくする。

その結果羽が大きくなるんだ。」

「上の世界って?」

と、瑠璃が興味をもった。

「晴れているんだ。」

「それだけ?」

「ああ。だけど簡単には上に行けないんだ。

雲の中を通らなくちゃ行けない。

こいつが厄介でね。下手すると羽が小さくなって下に落ちてしまう。

一人で上に行く人もいれば、複数で行く人もいる。

全員行けるわけじゃないけどね。」

「上にいる人は何してるの?」

「雲の中に落ちないように飛び続けてる。

自分から下の世界に行く人もいるけどね。

そして一生に何回か羽を落とすんだ。

それを下の世界にいる人が拾う。」

「拾うと?」

完全に瑠璃はその話にのめり込んでいた。

「羽が大きくなる。

光を浴びた羽は不思議な力があるんだ。」

「なるほど。それで真一は羽を落としたいの?」

「近いけど、ちょっと違うな。

さらにその上に飛んで生きたいんだ。」

「まだ上があるの?」

「ああ。」

「どういう世界?」

「診察の時間です。」

看護婦さんが入ってきた。

「今日はここまで。」

「えっ、ちょっと!」

「話はまた今度。」

「明日もまた来るから!」

「いいけど、明日はいないよ。」

「なんで?」

「上に飛び続けることに決めたんだ。」

その日は12日だった。

なぜか痛みが和らいだ気がしていた。



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