〜5〜
「…一、真一?」
「えっ、あっ、ごめん。」
「今日ずっとこんな調子だけど、どうかしたの?」
「ちょっと疲れててね。」
「無理しなくていいよ?」
「ごめん。」
女の部屋を出た真一は、ある場所へ向かった。
その途中彼は幼い日の出来事を想い出していた。
それは18歳の時である。彼は最愛の、そして彼を唯一生かし続けることができた存在を亡くした。
一人で生きていかなければならない孤独感。
動く気がしない。しかし、一人でいると死んでしまう。
そんな中、彼は恋をしてしまった。
いや、憧れに近い気持ちだったかもしれない。
彼女は清潔だった。
一点の曇りもなく、ただ正義を、自分を信じていた。
彼は近づくことができなっかった。
歪んだ感情。それは、人間の汚いところだけを見てきた結果だった。
だが以外にも、彼女の方から彼に興味を持ちはじめた。
それからは簡単だった。
白ほど扱いやすい色はない。
彼はその容易さ、そして一度染まったら、純白には決して戻れないことを彼は十分知っていた。
しかし、彼は自分を抑えることができなっかった。
すべて彼女にぶつけて楽になろうとした。
楽になれるはずもないのに。
それなのに彼女はその過ちさえ許してくれた。
だが、彼は気づいていた。
その日を境に、彼女が純白ではなくなっていたことを。
それは突然のことだった。
彼は彼女が変わり始めていたことに、嫌悪を感じていた。
そして彼の何気ない一言に彼女の心が離れ始めた。
するとどうだろう。
今までつき従っていた存在が、自分に興味が無くなっている。
彼は恐くなった。
一人になってしまうことが。
恐怖は脳を支配し彼の心臓を蝕んだ。
そして気づいた時には病室のベットの上だった。
「やっと目が覚めたね。」
聞こえてきた声の方を向いた。
そこには同い年くらいの、女の子がいた。
今まであったことのない人間だった。
だが昔から知っていて、心地よい感じがした。
そして彼はまた眠りについた。