〜4〜
2ヶ月経った今でも、彼は瑠璃に連絡することができないでいた。
忙しいわけではない。時間を作ろうとすればいくらでも作れる。
ただ瑠璃に会うのが怖かっただけだった。
しかし、今日こそは会って確かめようとしていた。あの現実を。
そして、
「もしもし?真一だけど、今大丈夫?」
「やっと連絡してくれたね。連絡してくれないから、私に会いたくないのかと思ってたよ。」
「それなりに時間ができてね。今からでよかったら会えるんだけど…きついかな?」
「平気だよ!じゃ場所は、私と初めて会ったあの店は?私あそこなら10分もあれば着けるんだけど。」
「わかった。10分じゃきついかもしれないけど、すぐ向かうよ。」
「なら先待ってるね。」
店に行く途中、彼はずっとあの現実が嘘である事を願っていた。
それしか考えられなかった。
そしてついに店の前まで来てしまった。
彼はひとつ息を吸い、ドアを開けた。
夕方ということもあり少し混んでいた。
中に入ったとたん彼の中にあらゆる人の感情が流れ込んできた。
それらを振り分け、彼女を探した。
だが見つからない。
感情が出ているところを見ても、彼女はいない。
不意に後ろから、
「真一君!」
彼は返事をすることができなかった。
そしてあたかもそこに、人がいないかのようなまなざしで彼女を見た。
不思議に思った瑠璃は、席を立ち、一歩近づいた。
だが真一は、一歩後ずさりした。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
そしてゆっくり近づき、席に着いた。
「久しぶりだね。」
「ああ。」
「具合でも悪いの?」
「ちょっと歩き疲れただけだよ。」
「あ〜運動不足でしょ!」
「少しね。」
必死で笑顔を作った。
「初めて会ったときから色々あってね、そうそう明日香が……」
会話が始まったものの、彼はずっと気になっていた。
彼女が何を思い話しているのか。
人間と話しているというよりか、物と話しているかの用だった。
話の内容を何一つ信用できず、必死で彼女を自分の中に入れないようにしていた。
「ねぇ、人の話し聞いてるの?」
「えっ、あ、うん。」
「もお!」
「ごめん。」
「今何考えてるか、当ててあげよっか?」
「え?」
「『私何考えてしゃべってるんだろ?』でしょ?」
何もかも見透かされてる感じがした。
「これでもカウンセラー目指してるんだから、人間の心理には強いんだよ!」
「よく見てるね。」
「戸惑うのは解るけど、話に集中してよね。あっ!ところでさ、なんで真一君はカウンセラーになろうとしたの?」
「何でだろうね。人と接しているほうが楽なのか、心の悩みを治してあげたいのか、まだよくわかんないや。君はどうしてなろうと思ったの?」
「何でだと思う?当ててみて!」
「ヒントは?」
「じゃぁ、1、幼少期の時、お世話になったからその憧れで。
2、友達が心に傷を負ってて、それを治そうとしたのがきっかけ。
3、私人の心が読めるの。だから役に立つかな、って思って。
さぁどれでしょうか?」
「…3番?」
「真一君って以外にロマンチストなんだね。おっと、そろそろ行かなくちゃ。」
「えっ答えは?」
「次回のお楽しみ。じゃまた連絡待ってます!」
「あっ、ちょっと!」
彼女は振り返りもせず去っていった。