〜3〜
9月3日
「真一に今日紹介したい人がいるのよ。」
「どんな子?」
「その子もカウンセラーを目指しているの。そろそろ来ると思うんだけど…あっ来た来た!」
その時彼は初めて人に恐怖を覚えた。
「初めまして。吉田瑠璃です。」
その子からは何も感情が流れてこなかった。
「来るな!!」
「えっ?」
今まで生きてきて感情が流れてこないのは初めてだった。望んではいたが。
だが突如現実として目の前に現れると、受け止めることができなかった。
「ご、ごめん。今日ちょっと疲れてるみたい。また今度にしてくれ。」
「あっ、待って!これあたしのアドレス。よかったらメールしてください。」
彼はそれを無言で受け取り、その場を立ち去った。
「なんだったんだ。」
何時間たっても理解できずにいた。いや、否定していたのかもしれない。
目の前の恐怖を。
そしていつしか疲れと恐怖で眠りについていた。そして幼いころ、母へ宛てた手紙の夢を見た。
【なんでぼくを見てくれないの?
こんなに母さんを愛してるのに。
こんなに母さんのためにがんばってるのに。
あとどのぐらいがまんすればいい?
あとどのぐらいがんばればいい?
あとどのぐらいきずつけばいい?
愛してくれるならなんだってするよ。】
それは幼い恐怖心からでた手紙だった。彼を愛していたがどこか恐怖心を持っていた母親。
彼はその恐怖心を読みとり、いつか愛してくれなくなると思いこんな手紙を書いた。
そんな幼い過ちを見ているとき、電話が鳴った。
「もしもし?瑠璃です。あまりメールしない人だって聞いて、番号聞いてかけちゃった。迷惑だったかな?」
彼は夢か現実かわからないまま話を進めた。
「大丈夫だよ。こっちもメール送ろうと思ってたとこ。」
「本当!よかった。嫌われたんじゃないかって思ってて心配してたんだ。だって急に『来るな!』だもん。びっくりしちゃった。」
「ごめん。最近仕事で疲れてて…。」
「大丈夫だよ。だいたい理由はわかるし。でも思ったとおりの人だね。」
「明日香からなんか聞いてるの?」
「色々とね。ねぇ、今度会って話さない?」
「いいね。今はまだ忙しいから時間が空いたら連絡するよ。」
「わかった。わたしはもう4年で進路も決まってるからいつでも連絡して。」
電話を切り、彼はまた夢を見た。