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Survival Project  作者: 真城 成斗
三・純白の欲望
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純白の欲望 6

「ライム……?」


 俺の頭は一瞬にして真っ白になった。赤く流れる液体と、失う恐怖に体が震えた。


「ライム……ライム!」


 倒れているライムを抱き起こし、彼女の名を叫ぶ。


 パシンッ!


 しかし次の瞬間俺の頬を強烈な衝撃が襲い、俺はハッと我に返った。俺の胸倉を掴んでいるのは、紛れも無くライムだった。


「クレス! しっかりしなさい! どう間違えたら私が人参に見えるのよ!?」


「えっ、えぇ!?」


 見れば、俺が大事に抱いているのは、美味しそうな人参だった。どうやら俺は魔術にかけられたらしい。


「あはははは! 魔導力の無い体ってのは本当に面白いね! こんなにあっさり幻を見るなんて」


 青年の姿は既に無く、笑い声だけが高らかに響き渡った。騙された苛立ちと悔しさに、俺は人参を投げ捨て――ようとしたが、食べ物を粗末にするのは勿体無くて、そのまま握っていた。


「それじゃぁテイル。今日はこの一戦だけだ。せいぜい頑張るんだよ?」


 青年の気配が消えるなり、部屋の扉が大きな音を立てて開かれた。


「いけない! ライム、〈シールド〉を展開して!」


「えっ!?」


 戸惑いながらも、ライムの反応は早かった。二人は同時に叫んだ。


「ルルカ・ディーナ・バーナ・ライム――〈シールド〉!」


「アヴェロ・イリィフィリッツ・グルゥミン・テイル――〈イクスティン〉!」


 ぐわん、と二色の光が重なり合って、巨大なドームのように俺達を取り囲んだ。


「来ますよ!」


 ドォォォオオンッ!


 凄まじい爆音が耳を劈き、一秒もかからないうちに、物理防御効果を持つ〈シールド〉と、魔力防御効果を持つ〈イクスティン〉を粉砕。視界を土煙が覆い尽くした。何が起きたのかさっぱり分からないが、辺りの壁はどうやら派手に吹き飛んだようで、瓦礫の崩れる音がする。二人の魔術による防護壁が無かったら、俺も粉微塵に吹き飛んでいただろう。


 ……と、そこで、俺は大変なことに気が付いた。


「剣が無いっ!」


 魔術が使えない上に、装備が人参。俺ってば、何て役に立たない……。


「クレス、屈んで!」


 視界不明瞭の中、襲撃者を捉えたのはライムが先だった。


「っ!」


 俺が言われるままに身を沈めると、鋭い風切り音を立てて、頭上を何かが通り過ぎて行った。視線だけ上げると、俺の目の前に、血塗れの蒼い軍服を着た誰かがいた。両手には剣を握っている。


「なっ……!?」


 土煙の中で煌めいた剣先が、華麗に翻る。剣筋を読めない。どこに逃げればいい。


「後ろへ!」


 テイルの指示を受け、俺は後方へと跳躍した。その俺と入れ替わりに飛び込んできたのは、前方に十指を伸ばし、その間に張られた糸で剣を受け止めたテイルだった。


「テイル!」


「怪我は無いですね?」


「あぁ、大丈夫」


 頷くと、テイルの指先が強く握り込まれ、十本の銀色の糸が剣を弾き返した。見たことの無い武器だが、あんな細い糸でどうやって剣を受けているのだろう。


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