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第2話  〜悪夢

自分の悲鳴で目を覚ます。これで何度目だろうか? 自問しながら、アーリアは上半身を起こした。全身に汗を流していて、顔を覆うと張り付くように手が吸い付く。呼吸も浅く、べたりと夜着が身に纏わりついていた。不快な事この上なかったが、それよりも先程の夢見の方がよほど吐き気を誘う。

滑稽な人形のように死んだセリアネート。自らの血に彩られ死んだスフィア。どちらも守る事ができなかった。その思いが、ずっと胸にのしかかっている。だからこそ、こんな夢を見るのだろう。二人が死ぬ夢を。

もちろん、2人の死に影響を受けたのは自分だけではない。命からがらこの国に逃げてきた仲間こと、騎士のタウラッグ=スフロォ、盗賊のカルア=ウィージア、そしていつもはふざけた調子のレイス=サクリファイスまでもが、沈痛な面持ちを隠せないまま部屋に篭ったきりだった。

(あの騒乱から、まだ一週間しか経っていないというのに……まるで、何年も前に感じられる)

窓から見える月に視線を向け、彼女は嘆息した。未だに、セリアネートとスフィアが死んだという事実が信じられない。いつもならば、真実に目を背けるような行為は自分から律する事ができたはずだ。しかし今は、なぜかそういう気が起こらない。

(……だというのに、朝と夜の祈りは必ずしてしまう。習慣というものは恐ろしい……皮肉には違いないが)

口の端を曲げて笑い、彼女はそっとベッドから降り立つ。いつもならば、他に2つの寝息が聞こえていたはずだが、当然今は何の物音もしない。その無慈悲な静寂が、恐ろしかったのかもしれない。

(外気にでも当たれば、寝汗も乾くだろう。風邪をひくかも知れぬが、知ったことか)

乾いた音をたて、木の扉をゆっくりと開ける。アーリアは一呼吸置いて、冷たい通路へと足を踏み入れた。焔と見違えるような深紅の髪がふわりと舞い、夜の闇に溶け消える。後には静寂と闇だけが、全てを包み込んでいった。

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