第1話「転生したら、小魚だった」
※第一期・改稿版です!
物語の大筋や設定はこれまでのものを引き継ぎつつ、文章や展開の見せ方を中心にブラッシュアップしています。
「前に読んだことがある!」という方も、「今回が初めて!」という方も、ぜひ改めて楽しんでいただけると嬉しいです!
それでは――
最弱小魚の物語、もう一度始まります。
死んだ。
たぶん。
いや――絶対に死んだ。
阿部透は、そう結論づけた。
最後に覚えているのは、冷たい水だった。
学校帰り。
海の近くを歩いていたはずだった。
足を滑らせて
身体が海へ落ちて
冷たい水に包まれて
そのまま、沈んでいった。
そこから先の記憶は、ほとんどない。
だから、次に目を開けたとき。
「……息、できる?」
最初に思ったのは、それだった。
できる。
普通にできる。
――いや。
おかしい。
ここは、水の中だ。
「…………」
透は周囲を見渡した。
青い。
どこまでも青い。
頭上には水面があり、そこから差し込む太陽の光が、細い筋になって海の中へ伸びている。
小さな魚の群れが、目の前を横切っていく。
「……魚?」
妙に近い。
というより――
近すぎる。
透は、自分の身体を見下ろした。
銀色の鱗。
小さなヒレ。
細長い身体。
「…………」
沈黙。
もう一度見る。
やっぱり魚だった。
「…………魚やん」
その瞬間、頭が真っ白になった。
いやいやいや。
待て。
何で?
俺は人間だっただろ。
学校に行って。
普通に生活して。
そして――海に落ちた。
そこまでは覚えている。
なのに。
今の俺は。
どう見ても魚だった。
「ちょ、待って。声……」
声を出そうとする。
しかし。
「ギョ」
「…………」
「ギョ?」
終わった。
学生としても。
人間としても。
人生としても。
全部終わった。
俺は今――
魚だ。
そのときだった。
視界の端に、突然文字が浮かび上がった。
〖種族:ミナミコイワシ〗
〖レベル:1〗
〖HP:3〗
〖攻撃力:1〗
〖防御力:1〗
〖魔力:0〗
〖スキル:なし〗
「…………」
透は、しばらくその文字を見つめた。
そして。
「弱っ……!」
思わず叫んだ。
HP3。
攻撃力1。
防御力1。
魔力0。
しかもスキルなし。
異世界転生と言えば、もっとこう――
圧倒的な力をもらったり。
最初から特殊な能力があったり。
そういうものじゃないのか?
「何で俺だけ、こんなに弱いんだよ……!」
だが。
文句を言っている暇はなかった。
背後。
何かがいる。
そう感じた瞬間、透は振り返った。
「…………え?」
巨大な影。
こちらへ向かってくる。
どんどん大きくなる。
そして、その正体が見えた。
魚。
巨大な魚だった。
自分の十倍。
いや、二十倍はある。
大きく開かれた口。
その奥には鋭い牙が並んでいる。
「ギョオオオオオオオオ!?」
透は逃げた。
全力で泳いだ。
だが。
遅い。
あまりにも遅い。
小魚の身体では、巨大魚との速度差を埋めることなどできない。
背後から迫る。
水流が身体を揺らす。
巨大な口が開く。
「嫌だ!」
食われる。
そう思った瞬間。
透の脳裏に、生前最後の記憶が蘇った。
夜の海。
足を滑らせたこと。
冷たい水。
沈んでいく身体。
そして――
『生きたい?』
「……誰だ?」
あの声は何だった?
誰が言った?
考えている暇はない。
巨大魚が迫る。
「俺は――!」
死にたくない。
もう一度死ぬなんて、絶対に嫌だ。
透は必死に身体をひねった。
巨大魚の牙が、目の前を通り過ぎる。
間一髪。
そのまま海底へ突っ込んだ。
砂が舞い上がる。
巨大魚は方向転換しきれず、岩へ激突した。
「……た、助かった……?」
透は息を整える。
だが。
巨大魚は、まだ生きている。
ゆっくりとこちらを振り返った。
「……嘘だろ」
また来る。
どうする?
逃げる?
いや。
逃げたところで、また追いつかれる。
透は必死に周囲を見渡した。
そして。
一匹の小さなエビが目に入った。
「…………」
エビを見る。
巨大魚を見る。
もう一度、エビを見る。
「……ごめん」
透はエビに噛みついた。
〖捕食しました〗
〖経験値を獲得しました〗
〖スキル《硬殻》を獲得しました〗
「…………え?」
何だ、これ。
その直後。
身体の表面が、わずかに硬くなった。
まるで、自分の鱗が一段階変化したような感覚。
そして。
〖レベルが上昇しました〗
〖Lv.1 → Lv.2〗
「……食べたら、強くなった?」
視界の文字を見つめる。
巨大魚が、再び動き出した。
普通なら逃げるところだ。
でも。
透は、逃げなかった。
怖い。
身体は震えている。
死にたくない。
それでも、
さっきまでとは、ほんの少しだけ違う。
自分には、この力がある。
食べれば強くなる。
「……そういうことか」
透は、巨大魚を見据えた。
「俺は魚になった」
異世界に来た。
最弱の小魚になった。
だったら――
「食えば、強くなれるんだな」
巨大魚の影が迫る。
透は逃げながら、笑った。
「だったら――」
この世界で生き残るために。
死なないために。
そして。
いつか、この海の頂点に立つために。
「食いまくってやる!」
こうして。
一匹の小魚による、異世界海洋成り上がり伝説が始まった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ということで、第一期の改稿版がスタートしました!
今回の改稿では、これまでの物語を大きく変えるのではなく、「もっと1話から惹きつけられる話にしたい!」という思いで、文章や場面の見せ方を中心に手を入れています。
第1話は、この物語のすべての始まり。
人間だった俺が――
まさかの小魚。
しかも、めちゃくちゃ弱い。
ここから一体どうなっていくのか、ぜひ見届けてください!
そして、以前から読んでくださっている皆さん。
「ここ変わったな」と思うところがあれば、ぜひ楽しみながら読んでみてください!
これから第一期を少しずつ改稿していきます。
それでは、次回もよろしくお願いします!




