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幸せのホットケーキ

作者: はらっぱ
掲載日:2025/12/19

「いらっしゃいませ!」


いつもと同じように、私は店のキッチンでホットケーキを焼いていた。

が、次の瞬間、目の前が真っ暗になった。


気がつくと、私はキッチンごと石造りの大広間に立っていた。

目の前には巨大な玉座。

そこに腰掛けているのは、角を生やした恐ろしい姿の……魔王?


「貴様!何者だ!」


魔王の側近の怒号が響く。

周囲を取り囲む魔物たちが武器を構える。


「あ、あの、ホットケーキ屋です……」


「ほっと、けーき?」


魔王が首を傾げた。私は震える手でフライパンを指差す。


「甘くて、ふわふわで……」


「作ってみせよ」


恐怖のあまり手が震えたが、ホットケーキを作り始めると不思議と落ち着いた。

慣れた手つきで生地を混ぜ、フライパンで焼き始める。バターの香りが広間に広がる。


焼きたてのホットケーキにメープルシロップをかけ、震えながら魔王に差し出した。


魔王は一口食べた。


そして、静かに涙を流し始めた。


「こ…これは……母の、味だ…」


魔王の声が震える。


「私がまだ小さかった頃……戦争で全てを失う前に、最後に作ってくれた母の料理。甘くて、温かくて……」


涙は止まらない。恐ろしかった魔王の顔が、幼子のように歪む。


「私は……ただ、あの優しかった日々を、取り戻したかっただけなのかもしれない」


その日、千年続いた魔王と人間の戦争は終わった。


一枚のホットケーキが、世界を救ったのだ。


魔王はその後、ホットケーキ屋を開いた。


「幸せのホットケーキ」

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