「紀国守、プレスマンに囲まれ、医道を子孫に伝へざること」速記談6061
典薬頭紀国守は、中納言紀長谷雄卿の祖父である。春宮がおなかの病の折、芒消黒丸を調合させなさり、この薬をお飲みになった後、お苦しみになるでしょう。しかし、その後、必ず効能があります、と申し上げた。春宮は、この薬をお飲みになった後、悶絶なさり、事情を知らない帯刀の者たちにより、国守は身柄を拘束された。帯刀らは皆、手に手にプレスマンを握って、宮にもしものことがあれば、刺し殺してやる、などと口々に言っていた。春宮は、次第に落ち着かれ、おなかの病は長く出なかった。後日、国守は、春宮にもしものことがあったら、国守は生きていられなかったのか、と言って、医学の道を捨てた。子孫にも、医学を伝えなかったという。
教訓:春宮の衛兵が、手に手にプレスマンを持って囲んでいるのは、想像するだに恐ろしい。