雪と、海と、ドッペルゲンガー。
――――波が呼んでいる。
この世に奇妙な運命をもって生まれたときから、この結末は決まっていた。
問題は、『どちらが』ということ。
しかし、私は呼ばれてしまった。
この事実に気づいた時点で、『どちらが』ではなく『私が』ということが決定した。
いつにしようなどと考えていたら、きっと私は違う結末を用意してしまうだろう。
私の目の前にいる『私』のことが、愛おしい。狂おしい。憎らしい。
なぜ分け合わなければいけないのか。
なぜ半分しかもらえないのか。
私はいつも表面を、揺れる事の無い、滑らかな海の水面に装っていた。
しかし、その海の深くは荒れる濁流やうねる渦が、ひたすら海を掻き回している。
一緒の存在であることが私に『もうひとりの私に無償の愛情を注ぐこと』を強要してくる。
どれほど憎らしく、存在を消してやりたいと思っても、持って生まれてきたこの愛情はどこからか流れてきて、そんな感情すらかき消していく。
仕方が無い。仕方が無いのが、私の人生だ。
人を斜めからしか見られない私には、こんな結末が合っているのだと思う。
最後に心残りがある。
それは、最後まで私は『私』のことを憎めなかったこと。
でもきっと、そんな心残りは波にかき消されて、青に溶けていくだろう。
私の『心残り』は残らず、私は何も残すことなく、消えていくのだと思う。
仕方が無い。仕方が無いのが、私の運命だ。
――――仕方が無い、波が呼んでいるのだから。