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「って、ことがあったんだよ!ホントヒドいよな、生徒会の奴ら!」
…コイツヤバいな…。
…好きとか言った相手に世間話がてらで、とんでもないこと話してやがる…。
こういう恥も書き捨てを体現したような生き方をしているから、どれだけ俺が手助けしても、全て水泡に帰すのだと怒りのままに拳でも振り下ろしてやりたいところだったが、何でもかんでもそういうふうにやっていては…と思い、一度は傍観しようとした。
「へ…へぇ…。」
…まあ、そんなふうにしようと思ったのだが、話を振られた美世は優しいのか困ったような表情をしているのみで、なにも言い返したり、罵倒などもしそうにない様子だったので、龍蔵はさっさと重い腰(カオル関係では急に軽くなる)を上げ、カオルを引っ張って行く。
「光代、そんな奴は構わないでいい。ほら、次は体育だ。行くぞ、カオル。」
「ちょっ!?りゅ、龍蔵っ!?あっ…そういうことで、美世ちゃん、話の続きは…。」
「うるさい。」
ガコンッ!
「っ…………。」
龍蔵は殴ったカオルが気絶したのを確認すると、荷物のように背負い、悪いがと美世に頼んでカオルの机から体操着を持って来てくれるよう頼んだ。
「あ…あの…これ…。」
「ああ、悪いな、光代。ありがとう。さっきのコイツが言ったことは忘れてくれ。たぶんだが、光代と話ができて舞い上がってあることないこと言ったんだろう。また仲良くしてくれると嬉しい。」
「えっ…あっ…だ…大丈夫…です。芽吹くんも小学校から知ってるので、慣れてます。」
端から見て慣れていると、実際に触れ合っての慣れというものは、このケースに関しては特に天と地ほどの差があるのは明々白々だろうが、カオルのことを気遣ってか、ぎこちない笑顔で美世は、龍蔵にそう言ってくれた。
龍蔵は思わず微笑むと、「そうか…。」と短く口にし、更衣室へと向かった。
そして、龍蔵は更衣室に辿り着く途中、カオルは目を覚ましたので、下ろす…ではなく、途中でかの人物の体操着含めて重量に逆らう力を掛けるのをやめるという形で流れのままに落とし、文句が聴こえてはきたが無視して、男子更衣室へと向かったわけだが…。
フンフン…フフフ〜ン♪
…体操着の上を着ようとしていた龍蔵の隣から鼻歌が聴こえてくる。
それは女性の声であり、龍蔵はそれを途中でやめ、無の表情でそちらへと視線を送ると、上は薄いピンクのブラ、下は無地の白いパンツという、それなりにスタイルの良い女性がそこで着替えていた。
龍蔵はそのまま尋ねる。
「…ところで…。」
「ん?」
側だけ美少女は龍蔵のほうをキョトンとした様子で見てくる。
「なんでお前がここにいるんだ?」
ここ、男子更衣室なんだが?…カオル?
「……っ!?そう!!そうなんだよ!!俺って、ほら!今、女だろ!!」
「…ああ。」
見た目だけは…な?それも普通に美少女。
「こんなにも見事におっぱいあるし!下も付いてないんだよ!」
カオルは自分の胸なんてものをブラ越しに揉むように持ち上げたり、パンツをこちらが見やすいように腰ごと差し出してくるが、龍蔵の感情が欠片も揺れはしない。
「あっそ。」
「ほら…この下見てみるか?上も下も凄いぞ。どちらもふにふにで正直かなりエロい。」
「……(はぁ…)。」
「龍蔵だから特別に触らしてもやろうかと思ったけど、だ〜め!!……どうだ?残念だろ?こんな美少女のあんなところやそんなところ見たり触ったりできなくて…。」
「ああ残念残念。」
ある意味。頭が。
「…ちっ…これじゃあ、話が進まねぇ。」
誰のせいだ。と龍蔵は呆れ、その思いのまま口にしようかとも思ったが、無駄話のせいか始鈴までの時間がそれほどない。
これ以上の無駄話は不要と、龍蔵はジャージの上着を手に取ると、それを肩にかけ、ドアを開ける。
「さて、着替え終わった。先行くぞ。」
「ちょ!ちょ待てって!!」
下を無理矢理履き、上は手に持ったまま、上半身ブラを身に着けたのみのカオルが追いかけてきた。
道中、カオルが頼んでもいないのに、説明してきた。
要するにこういうことだった。
カオルイコール危険。
女子たちはどうやらそう判断したらしい。
……コイツ、マジやべぇ…。