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私、光代美世は漫画家なんてことをしている。


いや、元は人手が足りないからと暇な時にママのアシスタントをしていたのだけど、彼女が偶々風邪を引いた時、うわ言で原稿を落とせないなんて言っているのを聞いて、ストーリーは聞いていたのでと思わず描いて、無我夢中で編集さんに送ってしまったのが、始まり。


こんなことをすれば普通怒られるのだろうが、ママはとてもおおらかな人で「凄いわね。」なんて微笑んでいた。


そして、編集さんや読者にその評判が良くて、ここ数年ほどはママ名義の名前で新シリーズ【気になるアイツはドSメガネ】というものを描いている。…本当に申し訳ないけど、ママをアシスタントとして。


これは今、外で絶対にバレてはいけない。


これが近々ドラマ化するのだが、それが理由ではない。


その理由というのは…。


龍蔵は繰り返されている辟易していた。


「まず俺のカッコいいところ!」、「次は…。」、「それから…。」とそれからしばらく話が続き…「最後に慎み深さ!」と締められて終わるこの猛言に…。


…果たして少なくともこんな長々と頼み事をするやつは慎み深さとは無縁だろ…というツッコミも何度繰り返したことか…。


なにせカオルが誰々に恋をしたとか言い始めるたびにこれを聞いているのだから…。


もしかしたら諳んじてみることさえ可能かも…。


なんて少しばかり気味が悪いとさえ思うことを考えていると、どうやら偽神への礼賛賛美の要求は終わりを迎えるらしい。


「これらを押し付けがましくなく、さりげなく伝えてほしい!!」


「おっけー。あいぶりんぐゆうあばっどにゅーす。ありのままを伝えてくる。」


…とまあ、期待はするなと彼にはわからない形で伝えつつ、腰を上げて美世の元へ向かうわけなのだが、毎度のことだが、正直苦痛を感じるほどに面倒すぎる。


「光代、少しいいか?」


ギギギとイスを引く音とともに「……えっ?」と振り向いた美世の顔は龍蔵を見るなり、友人とのおしゃべりを止め、目を開いて絶句し、さらには和気あいあいなのだろうが騒がしかった教室の中までも音を失った。


「……。」


龍蔵は正直すぐさま帰りたいという帰郷の念に駆られた。


帰郷などと言うのは、あまりにも近過ぎて正直かなりの誇大誇張ではあるが、内心のみに焦点を当てればあながち間違いではないこの表現。


それは他人の好感度アップなんていう面倒を押し付けられ、ただでさえリブートしていた龍蔵の億劫さをさらに掻き立てた。


…さっさと義理だけ果たして帰ろう。


それと同時に龍蔵はこんなことを思ってもいた。


…それにしても、まったくなんて失礼な奴らだ。いくら龍蔵が滅多に女子に話し掛けることがないとは言えこれはないだろうに…。


正確に言うならば、たとえ一週間もの間、このクラスの女子(カオルや元男子を除く)に話し掛けずにいたとしても…。


だって男子と女子ってそこまで会話することなんて普通ないだろ?


普通、人間ってものは、大して他人に興味なんてないんだから。


…というか、そもそも元男とかいうやつらがいるせいか、カオルなんてものが女?というカテゴリーに属しているせいか、このことを考えると頭がおかしくなりそうだ…。


…もう考えるのはやめよう。これ以上考えると、俺の人間性の問題点まで出てきそうだ。


とりあえず俺は他人に大して興味などなく、人と話すのが面倒なだけ…というあたりでまとめておこう。



そう龍蔵が再び愚にもつかないことを考えていると、美世が恐る恐るといった様子で尋ねてきた。


「龍蔵くん、なにか用かな?」


「ん?……ああ…。」


言葉に詰まる龍蔵。


まあ、それはそうだろう。なにせまったくもってテキトーなことを考えていたのだから、本来の()()テキトーでどうでもよいことなんて、すっかり龍蔵の頭から消え去っていても不思議ではない。


…確か…と龍蔵は思い出し、途中まででそれをやめると、やれやれと内心ため息を吐きつつ、とりあえずこれだけ伝えておけばいいかとようやく口を開いた。



「光代美世。」


「は、はいっ!」


「…俺はお前のことが好きだ。」


「えっ…?」


「「「「………ええええええーーーーーーっ!!!」」」」


「そ、そんな…こ、困ります…(てれてれ)。」


「…って、アイツが言っている。」


「……え?」「……は?」



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