チェーン店のメニュー凌駕プロジェクト1
「村長さん、僕たちの計画にはもう一つあります」
「なんでしょうか」
「村の食事情の改善ですね。具体的には車のメニューと同等かそれ以上の食事を村のみなさんにしてもらう」
僕とラグがそう考えたのは、野草茶の成功がある。
車の力や僕たち、そして村民が力を合わせれば、
もっと美味しい食事を楽しめると考えたのだ。
「そんなことが可能なんですか!できれば嬉しいですが、神の召し上がるもの以上のものができるんですか?」
「可能だと思っています。僕たちのメニューは100点の料理じゃないんですよ。70点とか80点を目指した料理なんです」
口はばったい言い方になるけど、
チェーン店の料理ってそういうもんだと思う。
全国津々浦々、料理の修行をしていなくても、
短期間の訓練でそれなりの料理を出す。
三つ星シェフは不要なのだ。
特別な職人がいなくても、
下手するとロボットでも作れるかもしれない料理。
実際、握り寿司のシャリを握るロボットが
回転寿司には導入されている。
ハンバーガーでも調理ロボットが開発されている。
勿論、ファミレスによる。
しっかりとした修行をしたシェフが
厨房を任されているという店もある。
でも、規模がおおきくなればなるほど、
食材加工工場で調理されたものが店に配送され、
店では焼いたり揚げたりという最終加熱をする。
そういう形態が多いと思う。
「あの料理が80点とか考えられませんが……300点ぐらいの料理なんですが」
「確かに美味しいです。でも、村の皆さんでもあの程度を作るのは可能なんですよ」
目を見開いたままの村長さん。
「むしろ、あのメニュー以上を目指して欲しいですね」
僕は1コインがデフォ。
だから説得力にかけるかもしれないけど、
元の世界ではチェーン店以上の個人店が
たくさんある。
3つ星レストランとか行列の店とか。
この世界でもそういう料理は可能というか、
ひょっとしたらそれ以上の可能性がある。
だって、魔法とか『職業』のある世界なんだ。
職業が料理人だったら。
きっとチートな料理を作ってくれるのでは。
「まずはですね、フライドポテトを作ってみましょうか」
この世界でもジャガイモは広く栽培されている。
でも、ジャガイモは貧民の食べ物。
食べ方も蒸すかスープの具材にするかぐらい。
まず油が高価なのだ。
貴重品というほどではないが、
揚げ物に使えるほど安価な油が出回っていない。
だからか、単純にフライドポテトという料理法を
この世界の人は思いついていない。
味付けする塩にしても、
多くの地域で塩を高額で購入している。
ケチャップはなんとか王国でも流通している。
でも、マヨネーズは見る影もない。
マヨネーズも作り方を知らない、という以前に
卵・酢・油、いずれも安いものじゃない。
じゃがいもは安価な作物であっても、
フライドポテトは高額な食べ物である。




