第2薬師ギルド1
翌日。
朝は和定食じゃなくて、
デ◯ーズのセレクトモーニングを選んだ。
5種類から選べ、とあるんだけど、
僕は全種類選んだ。
『スクランブルエッグモーニング』
『サニーサイドアップモーニング』
『ベースドエッグモーニング』
『ターンオーバーモーニング』
『シーザーサラダモーニング』
の5種類である。
腹減っているのと、食べ比べの気分だったから。
「(ああ、それええな。ワテもや)」
とにかく、街に来たらお腹がすく。
魔素が薄いせいなんだと。
僕もすっかり魔素に馴染んでしまった。
猫たちもカリカリ特盛だ。
◇
「第2薬師ギルドを立ち上げた経緯ですか」
僕達は第2薬師ギルドの事務所に来ていた。
ギルド長との簡単な挨拶・自己紹介のあと、
さっそく本題に入った。
「一言で申し上げると、第1薬師ギルドは利益追求がひどすぎるからです」
そう言って、回復薬の例を上げた。
初級回復薬は1000p。
中級は10万p。
上級は100万p。
特急は1千万p以上。
初級回復薬 1000p。
1pは日本円になおすと10円程度の価値がある。
つまり、初級回復薬は一つ1万円ほどになる。
「初級回復薬は王国法で千pと決まっています。低所得者に配慮した価格らしいです。でも、いいですか。市場の屋台へ行けば、50pで満足な食事ができるわけです。1日500pもあれば、3度の食事と簡易な宿に寝ることができます。その中での千pです。庶民向けの価格?馬鹿げています」
確かにおっしゃるとおりだ。
「中級以上だと、開いた口がふさがりません」
中級10万pは日本円だと100万円だ。
上級だと1千万円だ。
「ほんの一部の富裕層しか薬を買うことができません」
「原価的にそういう値段になるのではないですか?」
「いえ、まったく。いずれも素材原価は1%もないです。初級だとその辺に生えてる草です。原価は限りなくゼロに近い。中級や上級だと流石に依頼して採取してきます。それでも素材原価はせいぜい数千pです」
「何が高いのでしょうか。技術ですか」
「技術価格は判断基準がまちまちになりますが、初級で数%程度でしょう。中級・上級に至っては技術価格も1%以下です」
「全くの暴利ではないですか」
「そうです」
「第1ギルド以外では薬を作れないのですか?」
「初級に関しては多少の知識と技術があれば難しくはありません。しかし、中級以上は特別な器具が必要になります」
「その器具が高価なのでしょうか」
「残念ながら、その器具の詳細はわかっておりません。ただ、価格に見合うような高価な器具ではないと言われています」
「研究費の償却に必要だとか」
「確かに、研究費は莫大だったのでしょう。しかし、回復薬は彼らが開発したものではありません。すべて古代書の知識なのです。古代書の知識を独占しているのです」
「(回復薬を作る技術は『蒸留』やないか?)」
「うぉっ、言葉が脳内に響いたぞ!」
「ああ、申し遅れましたが、こちらはラグです。魔猫です。念話で会話します」
「ああ、先程からひょっとしたらと思っておりましたが、森の守護様ではありませんか?」
「はい、本人は森の大賢者と称しておりますが」
「ああ、それは大変失礼致しました」
「いや、どうぞお顔をお上げください。で、『蒸留』というのは?」
「はい、その通りです。彼らの使っている技術は蒸留と称されておりますが、内容は固く秘匿とされております。魔法契約書で縛られており、容易に内容を知ることができないのです」
蒸留って。
「ああ、それなら僕にも内容がわかりますね」
「え、そうなんですか?」
「僕の知識だと2つの方法があります。1つは蒸気によって特定の物質を抽出するもの。もう1つは蒸気になる温度差で物質を抽出するもの。ラグ、どう?」
「(ワテが知ってるのは、蒸気で花の香りを集める方法やな。エルフたちがそういう方法を使って香水を作っておった。せやけど、器具まではわからんで)」
「おお!なんと、凄い情報が!」
僕的にはエルフの存在に興奮するぞ。
「僕も器具はおぼろげなイメージはわかるんですが、詳細はわからんですね」
「はあ」
「(見に行けばええやん)」
「ラグ、見せてくれるわけ無いでしょ」
「(そんなん簡単や。了解なんていらんやろ。工房の場所教えてくれたら、見てきたるで)」
ああ、ラグは猫だしそもそもステルス技術がある。
「大丈夫でしょうか。そんなことを森の守護様にさせてしまっては」
「(かまへんて。場所教えてや。サクッと見てくるで)」




