清貧教会と借金取り2
「ち、ちくしょう、おぼえてやがれ」
などと捨て台詞を吐いてヨタヨタ逃げていく。
それにしても、捨て台詞は地球と同じなことに
ちょっと感動した。
「森の守護様、大丈夫ですか?」
シスターが心配そうな目でラグを労る。
僕も活躍したんだけど。
「(へーき、へーき。ワテは人間の決まりとか関係あらへんよってな)」
「アキラ様もお体、ご無事ですか?」
おお、シスターの目が僕に。
仮に死にそうだったとしても治りました。
「ありがとうございます。全然問題ないです」
ラグは僕に
「(多分、夜に来るで。ここに車持ってきて待機や)」
で、僕たちは夜まで車で待機だ。
ディナーはデニ◯ズ。
『チリンドロン~スペイン風トマト煮込み』
『ブラックアンガスサーロインステーキ』
『昔ながらの中華麺』
『チキンシーザーサラダ』
『チーズケーキ』
『野草茶』
これが僕のメニューだ。
『ハンバーグカレードリア』
『タルタルチキン南蛮』
『ビーフシチュー』
『生ハムサラダ』
『ガトーショコラブラウニー』
『野草茶』
こっちはラグのメニュー。
二人共普段から大食いなんだけど、
やっぱり魔素の薄い分、より大食いになってる。
車にいい香りが充満する。
「ミャーミャー!ウニャー!」
僕たちのメニューの多さに反応して猫も大騒ぎ。
こちらはシシア、いなば、ピュリナの『猫缶3種』を大放出だ!
ああ、連れてきているのは子猫だけじゃない。
魔猫も10体ほど連れてきてる。
ちょっとした軍隊相手でも問題ない。
車の猫密度が凄いことになってるけど。
「ふー、ちょっと食べすぎたかな」
僕は少し眠気が襲ってくる。
でも、気を緩めちゃいけない。
勿論、奴らが襲ってくるのを警戒してだ。
で、やっぱりその日の夜に集団で襲ってきた。
50人はいるだろうか
でも、関係ない。
だって、弱すぎるんだもの。
闘いは量だっていう人がいる。
いや、それはおかしい。
質と量なんだ。
そして、この場合は質があまりに違いすぎる。
あっという間に一掃した。
「君たち、どうしようか?」
「くそったれ、ここから出しやがれ!」
輩たちは教会の庭に首だけ出して埋められた。
「じゃあさ、次から選択しなよ
①火魔法でじわじわ焼き尽くされる
②水魔法でじわじわ溺れさせる
③砂糖を顔に塗って毒虫に食い尽くさせる」
「ひぃぃぃ!」
「どうしたの?さっきまでの勢いは」
「(アキラ、ワテはな、毒虫に食い尽くされるところを見てみたいわ)」
「森の守護様からリクエストいただきました。それじゃあ」
「(ほな、毒虫出すで)」
ラグはゴニョゴニョ魔法を唱えると、
教会の庭には数多のおぞましい虫が出現した。
虫というか、蠢くものという感じの奴らだ。
「うわわわわ!」
数多の虫は輩たちの顔にたかり始める。
「うぎゃー!助けてくれ!頼む!お願いだ!」
「は?それがお願いする姿勢?」
「すんません!助けてください!頼みます!お願いします!後生です!」
「エヒャヒャヒャ」
狂ったように笑い出す輩も出始めた。
しばらくすると、顔がどんどん齧られていく。
「……」
輩たちは全員気を失った。
その時点で虫は消え去った。
それと共に輩たちの顔はもと通りになる。
ラグの幻覚魔法であった。
◇
「へえ、すんません。契約書は改ざんしました」
「金が目的なんか?」
「いえ、領主様がシスターを連れてこいと。愛人にするつもりなんでさ」
なんと。
この街の領主は教会関係者にまで手を出すのか。
領主ってどれだけ悪辣なやつなの?
まあ、この教会のシスターは非常に美しい。
儚げな感じのするところもグッド。
清潔感も半端ない。
しかもシスターだから、思いっきり高嶺の花だ。
邪な想像を膨らます輩がいても不思議ではない。
どっちにしても、許せん。
清らかなシスターが欲望の対象になるとは。
結局、借用書は破棄された。
そして、輩たちを開放し、領主に言伝を頼もうとしたんだけど。
「そんな恐ろしいことできるか!領主に殺されるわ!俺たち逃亡するから、見逃してくれ!」
ま、いいか。
唯一の物的証拠はラグが結果的に失くしたし、
輩たちの証言では証拠能力は無いに等しいだろう。
相手は領主だからね。
領地での裁判権は領主にあるんだ。
確かに教会は治外法権的らしいんだけど、
借金関係は別。
教会の後ろ盾とは言っても、
清貧教会は経済力がなく、信仰する女神的にも
さほど力の持った教会じゃない。
この件は色々遺恨を残してるんだけど、
とりあえず一件落着。




