街に向かう~冒険者に遭遇した1
「じゃあ街にいこっか」
ラグの聞き込みしたら、という意見に応じて、
セリア街に向かうことにした。
セリア街はこのあたりの中心的な街だ。
当然、薬師ギルドの本部もそこにある。
街に向かうのには少し懸念があった。
湖畔村は森ほどではないが、魔素が漂っている。
街だと、その魔素濃度はかなり薄くなるだろう。
ラグとか猫は魔物だ。
魔物は魔素が必要なのだ。
いや、僕にしても魔素にならされている。
魔人に変化してきているのだ。
魔素の薄い環境でどうなるのだろうか。
それと、車の魔素自動補填もきかなくなる。
「(多分、問題ないで。魔石はぎょーさん持っとるしな。それに、ワテも久しぶりに街とか見てみたいわ)」
ラグは森を離れることはめったにないらしい。
魔物は森とともにあるのだから。
街に行くのにもう一つ懸念がある。
領主が住んでいるのだ。
村の人によると、随分と無体な領主らしく、
あの準男爵の上位互換型らしい。
当然、領民からかなり嫌われているんだと。
準男爵の件では全面に出てこず、
準男爵への反発は比較的スルーされた印象がある。
が、今後もそうだとは限らない。
懸念はあるんだけど、まあ、なんとかなるさ、
という甘い見込みのもと、
『デ◯ーズの鮭朝定食』を食べてから、
村人に見送られて僕たちは車を走らせる。
案内の村人を乗せて。
デニ◯ズの鮭朝定食はご飯、味噌汁、焼き鮭、
納豆、ノリという伝統的な和風朝食だ。
僕は和食にこだわりはないけど、
いつも濃い目の料理ばかり食べてるせいか、
この和定食は最近のお気に入りだ。
当然、ご飯はおかわりする。
ラグは和定食はあまり好きじゃない。
ご飯も納豆もノリも苦手だという。
ご飯なんて味がない、などと怒っている。
そんなラグの今朝のメニューは、
『スクランブルエッグ&チーズフレンチトースト
(苺ヨーグルト・ドリンクバーつき)』
これを2皿。
それと朝マ◯ク。
あ、僕も。
というものだった。
ラグは外見だけは上品だ。
ラグドールかバーマンに似てるし。
しかも、ちゃんとナイフとフォークを使う。
あの肉球でどうやって操ってるんだろう。
箸も使えるし。
「(ワテは森の大賢者様やぞ。そんなもの、簡単やわ)」
ドヤ顔でいうラグ。
子猫や魔猫たちはカリカリだけどね。
今回からは成猫である魔猫も連れて行く。
テーブルで食べてると、猫たちがうるさい。
下からちょんちょんと手が出てくる。
テーブルには乗らないようにしつけてる。
「(魔猫やからキャットフードにこだわる必要はないんやで)」
とラグは言うんだけど。
今はどんどんと猫が増えている。
殆どは村人に世話を任せている。
大量にカリカリとかを渡しているんだ。
これが僕たちのメニューもOKとかなったら、
大変なことになる。
◇
村の穀物畑を抜けると低めの山になる。
村が街で野草茶を売る際に道路を広げたのだが、
その道を快適に過ぎていく。
1時間もすると山を越え、
よく整備された街道に出くわした。
道は広い。
馬車2台ならすれ違うことができそうな広さだ。
そんな街道を時速20kmていどで走る。
山を抜けるときは時速50km前後で走った。
今は人や馬車が行き交うので速度を落としている。
それと、速度を速めるとどんな目で見られるか。
怪物と思われるかもしれない。
時速20kmでもみんな驚いてこちらを凝視する。
たまにすれ違う人や馬車は時速5km程度だ。
少し早めの馬車で時速10km程度。
馬がいないことも驚きのポイントだろう。
それに車の全面はガラスだし。
屋根で子猫がはしゃいでいるのも目立つのかも。
車にはステルス機能がある。
でも、ステルスだと交通事故を起こしかねない。
その機能は使いにくいのだ。
さらに2時間ほど走り、早めの休憩に入る。
というか、まだ朝の10時ごろだ。
「どう?魔素不足感じない?」
「(全然問題あらへん。そやけどな、魔素が薄いせいか、腹がすっごく減るんや)」
ああ、さっきから子猫たちもなき始めている。
あれは腹減ったモードだ。
「じゃあ昼飯にすっか」
僕はデ◯ーズの『肉味噌丼&ミニラーメン』と
『ベーコンとほうれん草』、
それとマ◯クの『ビッグマック』にした。
ラグは『トマトチキン&海老ペンネグラタン』、
『ポーク盛り合わせ』、
マ◯クの『スイートチリ えびフィレオバーガー』。
そして二人共野草茶だ。
野草茶はマ◯クなどのドリンクよりも気に入っている。
健康にも良さそうだし。
それはラグや子猫たちも同じようだ。
随分と体調が整うらしい。
子猫たちはカリカリの大盛り。
子猫たちも腹が空きやすいのも僕たちと同じ。




