薬師ギルド
野草茶の評判はどんどん広まり、
開店前から行列ができるようになった。
午前中に売り切れることも多く、
増産を強く望まれているのだが、現状では難しい。
特に、メイプルシロップがムリなのだ。
「そろそろ甘味ぬきの野草茶の販売に踏み切るか?」
野草茶だけならば、まだまだ増産の余地がある。
だから、野草茶だけの販売の話が度々でるのだが、
ごろつき準男爵の件で話は引っ込んだ。
今でさえ、これほどの評判をとっているのだ。
メイプルシロップの存在がバレるのが怖い。
どういうイチャモンをつけられるのかわからない。
甘味成分はこの世界では黄金に次ぐものがある。
非常に高価に取引されているのだ。
そこに一寒村が品質の高い甘味を供給する。
有象無象がたかる未来しか見えない。
そんな中、再び頭の痛くなることが湧き上がった。
薬師ギルドがとんでもないことを言い始めたのだ。
「野草茶のレシピを教えろ」
理由は、
野草茶には薬効が認められる。
しかも安価に販売している。
この薬の存在は公共の利益に沿う。
だから、詳細なレシピを公表して公益をより拡大させよ。
とんでも理論だ。
しかも公共の利益とか言っているが、
レシピは薬師ギルドが独占するつもりなのである。
薬師ギルドの常套手段であった。
薬師ギルドが横柄な態度に出てくるのは、
人の命を預かる薬を独占しているという驕りと
バックに領主などの権力者がいるからだ。
「ふざけるな」
村人は怒った。
当然、拒否した。
「ならば、以降薬師ギルドでは村に薬を販売しない。それでもいいんだな?」
薬師ギルドはそう脅してくる。
「フフッ」
失笑するしかない。
もともと村は貧乏で、
初級回復薬程度でも購入できないほどだったのだ。
今は傷薬、病気用の薬は
初級ならば野草茶で代用できる。
中級回復薬でもメイプルシロップに
効果があることがわかってきた。
いざとなれば、森の守護様の薬がある。
まったく薬師ギルドは及びでないのだ。
薬師ギルドの脅しは村には何の意味もない。
それでも、今後さらなるイチャモンをつけられるかも知れない。
「(薬師ギルドなどぶっ潰してやったらええねん)」
ラグは過激なことを言う。
「(昔から人間の世界にはおかしな団体が跋扈しとった。でもな、最終的には全部崩壊しよったで)」
なるほど。
ラグは歴史の証人でもあるようだ。
「ぶっ潰すっていっても、どうやって?」
「(アキラが考えや)」
うーん、そんなこと言われても。
ラグはちょっと脳筋のところがあって、
すぐに拳で解決しようとする。
村人もそうだ。
ついでにいうと僕もそうだ。
ごろつき準男爵のように力押しするならともかく、
薬師ギルドに対してはどうしたらいいのか?
村には必要のない団体だし。
「(ちょっと街いって聞き込みしたらどうや?)」
おお、ラグがまともなこと?を言った。




