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ごろつき貴族が野草茶を狙う2

「スーパーノヴァ!」


 この魔法は、最上級爆発系攻撃魔法である。

 小規模の超新星爆発を発生させ辺り一面を

 超高熱ガスで覆う。

 個人で中隊に匹敵する魔力出力を誇るのだ。

 スーパーノヴァの発生範囲はさして広くはないが、

 発生した地点では深刻なダメージを負う。


「ズガーン!!」


 村の一部で強力な爆発が起きた。

 凄まじい爆発、爆音、そして爆風が吹き荒れ、

 どす黒い爆雲が立ち上る。


 やがて、爆煙が晴れた。

 準男爵は会心の魔法にニヤニヤが止まらない。

 それを眺める準男爵軍の誰もが

 村は半壊している姿を想像した。


 しかし、現れた姿は以前とまるで変わらなかった。

 

「なんですか、準男爵様。その弱々しい魔法は。子供の遊びのような威力でむしろ痛いたしいですな」


 勿論、その上級魔法を防いだのは、

 魔猫の防御結界だった。

 魔猫にとっては、この程度の魔法を防ぐことができないでは、強力な森の魔物に対応できない。

 森の魔物同士の闘いは魔法阻止から始まるのだ。

 魔法をキャンセルさせ、防いでから、

 最終的に拳でつまり超接近戦での物理攻撃で

 雌雄を決するのが常道である。


「ああ、なんだと?」


 準男爵は混乱した。

 会心の魔法にびくともしない村。

 逆に自分が煽られて、馬鹿にされている現実。


「フザケルなー!」


 頭に血が昇った準男爵は魔力の残りを気にすることなく、魔法を連発した。


 それにも関わらず、村にはなんの変化もない。


「それだけですか。もっと凄いと思ってましたが、フタをあければ準男爵の力はその程度でしたか。では、失礼をして。みんな、攻撃せよ」


 それからは村側に一方的な展開になった。


「ファイアストーム!」

「セイントファイア!」

「ウィンドエッジ!」

「ウィンドブレス!」


 主に攻撃系の火魔法と風魔法が飛び交う。

 威力は中級だ。


「「「グワワワッ!!」」」


 攻撃の後、粉塵がおさまると、

 そこには何もなかった。

 準男爵軍はあとかたもなく燃え尽き、

 吹き飛んだのだろう。


 ◇


「戦勝祝だよ、みんな食べて」


 僕は村人に『デ◯ーズの和風ハンバーグ弁当』を

 配った。

 チェーン店メニューは車外に持ち出しできない。

 でも、マ◯クと弁当系は持ち出しできるのだ。


「おお、口がとろけるような旨さ!」


「ああ、緊張感が一気に歓喜に変わりますな」


 当然ながら、村人たちには大好評だ。

 しかも、ところどころで発光している村人がいる。


 病気が治ったとか、スキルが発現したとか、

 そういうことだと思う。

 チェーン店メニューにはそういう効能があるのだ。


 ◇


 さて、この一件。

 周囲のみならず、王国中に噂が飛び交った。


 まず、攻撃側の準男爵。

 森の産物を強奪しようとするのは明らかな違法。

 それでも準男爵が勝てば強奪は成功したし、

 後で違法性を問われることはなかったであろう。

 何しろ、王国では勝ったもの勝ちなのだ。


 そして、勝ったもの勝ちなのは村側に適用された。

 何しろ、防衛とはいえ、支配者を蹴散らしたのだ。

 いや、跡形もなく消滅させたのだ。

 しかも、王国に名を馳せる準男爵の攻撃魔法を何発も受けたにも関わらず、被害ゼロで。


 これだけの完勝劇、

 王国でも近年稀に見られる出来事であった。

 脳筋揃いの王国では称賛が飛び交った。


 面白くないのは、クローネ伯爵。

 準男爵の寄り親である。

 王国の中堅どころの貴族であり、

 セリア街を中心とする領地を統治している。


 寄子である準男爵を屠られたわけであるから、

 なんとしても報復したいところであるが、

 何しろ準男爵がひどすぎる。

 かばいようのない敗北を喫したのだ。


 結局、王国中からの称賛に応える形で、

 湖畔村には自治権を与えた。

 準男爵は1代限りであるため、

 準男爵の領地の残るニ村は伯爵領に編入した。


 尤も、自治とはいえ税負担は今まで通りである。

 耕作面積から算定される予想収穫量の6割相当額。

 これを毎年クローネ伯爵に納めることになる。


 ただ、予想収穫量には森からの収穫は含まれない。

 それは王国での慣習法であった。


 実質的には以前と状況は変わらないのであるが、

 それでも決まったものさえ収めていれば、

 おかしな横やりがなくなるのである。


 そして、森からの収穫物にはフリーハンドであることが正式に認められた。

 森への拡大を目論む村にとっては安心できる決定であった。



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