表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/83

メイプル(仮)の木発見

 僕がこの世界にやってきて100日が経過した。

 村人の暦を見ると、2月だ。

 あっと言う間に年を越したことになる。

 なんだか、感慨深い。


 早朝目が覚めると、というか子猫に起こされると、

 流石に寒い。

 車の中はエアコンを切っていれば氷点下になる。

 窓ガラスは真っ白だし、凍結している。


 起きたらダッシュでエアコンをかけ、

 ご飯を子猫にあげて自分はコーヒーで体を温める。

 ラグも最近はコーヒーの味がわかってきたようで、

 僕と同じブラックを飲んだりしている。


 朝食はデニ◯ズのモーニングメニュー。

 選んだ料理は『エビとハーブ鶏のスープごはん』。

 それと『チキンシーザーサラダ』。

 ラグも同じ。



「(アキラ、そういえばな、この時期に甘い樹液を垂らす木があるんや)」


 この時期に甘い樹液を垂らす木。

 地球ならばメイプルシロップか。

 確か、サトウカエデとかいう木だ。


「へえ、いいじゃないか。連れてってよ」


「(結構離れてんで。多分、数日はかかるな)」


 僕たちは村長さんに断って現地に向かった。



 久しぶりのロングドライブだ。

 距離的には大したことがないのだけど、

 森を切り開きながらだから、時速は5km程度。

 サスペンションが優秀だから、殆ど揺れない。


 まだ転移してきたころ。

 毎日不安を抱えながら森を走破していた。

 あの頃に比べれば、本当に気楽で楽しい旅だ。

 

 それでも1日10時間はハンドルを握るわけだ。

 ちょっと厳しい。

 目的地には3日めのお昼に到着した。

 100km以上離れた場所にある。


「ああ、たしかに楓だ」


 葉っぱがカナダのマークだ。

 木の表面を削って舐めてみる。

 甘い。


「ラグ、ナイスだぞ!」


 大喜びの僕は木に穴をあけ、

 村製作の金属製のパイプを穴に突き刺し、

 樹液を木の樽に誘導する。


 一晩待って1リットルほどの樹液を採取。

 それを煮詰めてみた。

 どんどん水分を蒸発させ、

 最終的に鍋の底にちょっぴりの液体となった。

 ドロリとした琥珀色の液体。

 なめてみると、若干の風味のある繊細な甘さ。


「ラグ、朝マックのホットケーキで食べてみようか」


 マックのホットケーキにはシロップとバターがのせてある。

 それと食べ比べてみたけど、

 メイプルシロップのほうがだんぜん美味しい。

 味が鮮烈なんだ。

 ほんのちょっぴりとした野趣がいい塩梅で、

 味がダイレクトに伝わってくる。


「(アキラ、こりゃ比べ物にならんな)」


 グルメ猫となっているラグも同意見だ。


 同上している子猫たちにもお裾分けした。

 例によってウマウマ言いながら舐めている。

 でも、ウマウマ度がいつもよりハネあがっている。

 子猫的にも好評のようだ。



 僕たちはすぐに村に戻った。

 帰りは道ができているから1時間程度だ。


 次に村長さんたちをメイプルの現場に連れてきた。

 時速100km以上でぶっ飛ばすもんだから、

 村人は全員気を失ってしまったんだが。



「木が砂糖を作るわけですか!」


 村長さんも村人も驚いている。

 砂糖は王国では大変な高級品だ。

 しかも、さほど質が高くない。

 このシロップはいきなり超一等級の品質なんだ。



 樹液の採取方法は難しくない。

 後は採りすぎないようにすることと、

 採取時期をはずさないこと。

 2~3月の一ヶ月程度が収穫時期。


 それよりも、運搬方法のほうが大変だ。

 村から100km以上ある。

 森の奥だからどんな魔物が現れるかわからない。


「ここにシロップ生産工場を作ったほうがいいですかね」


「ですね。大量の樹液も煮詰めるとほんの僅かですものね」


「あとは魔猫の防御力ですか」


「村民もいざとなれば戦えるぐらいにはしたいですな」



 こうして魔猫と村民の強化プランが立ち上がった。

 というか、現状でも村人総出の早朝の魔法訓練が続いている。


 それに加えて、以前から漠然と感じていたことが明らかとなってきた。

 チェーン店メニューやカリカリを食べると、

 いろいろと強化されるんだ。

 体力も魔力も。 


 もともと村人は半分魔人化していることで、

 体力の強化が図られている。

 でも、魔力の伸びは今ひとつだった。


 そこで、定期的にマ◯クのハンバーガーとかを組み込んだ。

 村人たちは急速に魔力を増やしていった。


 そして、ラグの指導の元、

 いろいろな魔法を覚え始めたのだ。

 数ヶ月後には多くの村人が見違えるようになった。

 実践に耐える攻撃魔法を放てるようになったのだ。



「王国の魔導師部隊にでも勝てそうですな」


 村長さんは冗談交じりでそう話す。

 王国魔導師軍の部隊長クラスだと、

 強力な上級魔法が使えるらしい。

 流石に村人はそこまでの人はいない。


 でも、魔猫の防御結界がかなり強力だ。

 これと併用すれば、

 少々のスタンピードならば防ぐことができる

 というのがラグの見立てだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ