転
ここからは、本当に相手の居ないオレ一人の一人語りだ。
物語には、起承転結っていうのがあるだろ?
オレは、この転っていうのが嫌いだ。
意外な逆転、乱調、物語を盛り上げるのに必要だっていうんだよな?
リアルで考えてみろよ?
頑張って告白した。
カップル誕生だ。
そのまま、彼氏と彼女は仲を深めていき、ゴールイン。続くハッピーエンド。エンドロールが流れて終劇のクレジット。
これで何が悪い?
起承結。
これで、これが、順当ってもんだろ?
わざわざ転を持ってくる為に、恋のライバルを登場させてカップルの邪魔をさせたり、彼氏や彼女の過去の秘密が暴かれてみたり、中にはヒロインがレイプされたり、間男が現れて寝取られてみたり…って、今どきの恋愛ものはハ-ドすぎだろ!?
転不要。
それでも、みんな幸せになれるはずだ。
なる。
…なれ!
オレは、そんな気持ちで笑を見送った。
これにて終劇だ。
めでたしめでたし。
おしまい。
おしまいだ。
オレは水から上がるとしばらくその場に留まり、呆けたように何処ともなく視線をさ迷わせていた。
ふと、笑の去って行った川の土手を見上げた。
笑の去って行った方に向かって、3人の男達が歩いて行くのが見える。
ヒクリと、オレの鼻の穴が広がったのが分かった。
ああ…。
ああ…。
あああ…!
よりにもよって、今日なのか。
今日だったのか。
臭いで分かるぞ。
今どきなら、「ファム・ファタール!(運命の女よ!)」とでも叫ぶんだろうか?
──いや、笑は悪女じゃないよ?念のため。
オレは、笑い出しそうになる発作を必死で抑えながら、草むらの中を音も立てずに見つからないように、男達に近付いて行った。
1980年代とか1990年代には、伝奇小説のブームというのがありました。
懐かしいですね。