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笑う河童  作者: 檻の熊さん
14/18

強いのは


 笑は、右手を腰に当て、左手を前方に芝居がかった動作で降ると、続けた。


「…それでね、私はこう言ってやったの。“ふざけるな!自分で育てられないから途方に暮れて、離婚した女を頼るだと!?私はどんだけ都合のいい女なんだ!”」

「“養子なら、引き取って育ててやる!ただし、あんたとあんたの両親とは、一生他人のままよ!二度とその子の親だなんて、名乗らせてもやらないわ!”って」


 オレは、しばらくポカンとしていたんだと思う。


「けけけ!なんだそりゃ!オレの話よりも、笑の話の方が、よっぽど面白いじゃねえか!」


「面白いわけないじゃない!とにかく…。さすがに、元旦那も生まれたばかりの子供を手放す気は無かったらしく、大人しく帰って行ったわ」


「笑は、オレを笑い死にさせるつもりなのか?」


「実話よ、実話!子供を産ませる為に雇った家政婦が、“おまえはもう要らないと”クビにされた話」


「けけけ!まんま、一読したら内容が分かる良いタイトルだな!」


「馬鹿!」


「まあ…あれだな。男っていうのは、偉そうに見えてナイーブで、自分勝手なものだ。そもそも、根性って言うか持続力が無い」


「さらぞうも男の子だもんね、いざとなったら私の味方はしてもらえないんだ」


「まあ、そう言うな…。オレがさっき話した妻がレイプされた夫婦の話な、もう少しだけ続きがある」


「あるの?」


「ある」


 笑は居住まいを正して──と言っても、土手に腰を下ろしただけだが──続きを聞くことにしたらしい。


「2ヵ月がからなかったかな…。ここで入水した」


 「あ…」と、何か言おうとして笑は沈黙した。


「実際に死体が上がったのはここから15キロ以上離れた海で、海浜に死体が打ち上げられて発見されたというのが顛末だ。だから、世間もここで自殺があったとは知らない」

「オレは、見ていたから知っているが、それだけだ」


「海で死体が見つかったのか…。ごめんなさい、私は知らない」


「それで当然さ。オレも、気になってなんとなく川原のゴミ拾いに精を出して、新聞の隅っこに、ものすごく小さな扱いだったけれど、オレは“これだ”と確信出来るものを見付けたってだけの話だ」

「割と増水していた日の話だったからな、海に辿り着くのに時間がかからなかっただろうし、海に出てからも随分運ばれたみたいだな」


「えっと、夫婦二人して…心中だったのかな?」


 笑は、それらしい記事でも読んだ記憶が無いか、思い出そうとしているようだ。

 ああ、そうだな。

 オレも説明不足だったわ。


「いいや、オレの知る限り死んだのは1人、夫婦の片方だけだ」


「…妻が?」


「いいや、死んだのは夫の方さ」


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