自己紹介から始めようか?
その昔、練習用に書いた小説です。
いちおうオチまで持って行けたという意味で、処女作になるんでしょうか?
今どき、河童というのは住処を終われる身だ。
元々のオレの住処は、先祖代々が暮らしたすり鉢池だった。
ところがだ、今どき特定外来生物を駆除するから池の水を抜いてみようだの、冬の鳥インフル(高病原性鳥インフルエンザ)対策で水鳥が入らないよう水を抜こうだの、迷惑千万な出来事が続き、池というのは落ち落ち安心して暮らしていられる場所ではなくなってしまった。
──真冬の最中に住処を失って丸裸にされた時の気分を、あんた、味わってみるかい?
子供が溺れたから水を抜こうとか言うのなら、まだ納得出来たんだがね。
結局行き着いたのは、近くの川だった。
今どきの河川というのは上流にはダムや堰があるから、普段から水が無くて渋い浅瀬が続く過ごしにくい場所だ。
昔のように底が見えないくらい深い淵とか無いし、普段は水が無いくせに大雨が降ると放流で一気に水かさが増して濁流と化す。
──河童の川流れっていうのは、年に何回か体験する珍しくもないイベントになったな。
なんとも浮き沈みの激しい、住み難く危険な場所が川だ。
そんなオレが川で暮らすためには、季節の移り変わりに合わせて本流の比較的水のある場所を選んで、あっちこっちを転々とするように暮らさないといけない。
選択を間違えて、うっかり土石流が流れ込む危険のある山間の細い川の堰で夏を過ごそうとしたら、まじ死にそうになったことがあったよ!
え?
お化けは死なない?
死ななくても土の中に埋まったまま数百年、河童のミイラになって発掘なんかされたくないよ、オレは。
いっそ海で暮らせば良いじゃんという、意見もあるだろう。
まあ…ね。
河童というのは存外丈夫で、毒にだって強いし、水さえあれば何処でだって生きていける。
仲間の中には、本当に海で暮らしている奴だっている。
だが、それはそれ、“河”の“童”と書いて河童だ。
オレのアイデンティティは、淡水生活にこそあると確信している。
──しかし、出来たら音に聞く四万十川みたいな水量豊富な清流で暮らしてみたいとは思ったよ。
河童っていうのはな、古来より地域密着型の怪異の類なんだよ。