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幸せな気持ち

待機を命じられてから6日後

ルミエーンとサラサはいつものようにギルドで働いていた


「はい、素材採取の依頼ッスね!

この素材は強い衝撃を与えると爆発するッスから運搬には細心の注意を払うッス」


サラサはいつものように依頼の相談を冒険者としていた、話を聞いた冒険者は「了解しました」とギルドを出て依頼に向かう


「はい、結界クリスタルですね値段はこちらになります!

……はい、おつりはこちらになります!毎度ありがとうございました!」


ルミエーンは買い物に来た人と話をしていた、品物を受け取ったお客さんは「ありがとうございました」と一言話すとそのまま冒険者の方の受付へ向かう


(……あれから、皆さんはどうしているでしょうか、絶対に酷い結末なんてありえませんが……何日も会えないと寂しいです)


そう考えながらも、上の空にはならず商人として手元はおろそかにはなってない

6日も商人として働いていると無意識でも手元が動くようなものだろうか?


「……にしてもなーあの最強パーティってさ、最近見かけてないけどどうしたんだろ?」

「ん?」


最強パーティと聞いたルミエーンは店の仕事をしながら耳を傾ける

店のことは出来ていても最強パーティのここで頭がいっぱいだったからこそ、人一倍敏感になっていた。話しているのは兎の獣人族の2人組であった


「お前知らないのか?あの最強パーティならラストダンジョンに向かったんだよ」

「え?マジ?何日前から?」

「はぁ、6日前だよ!ここで1人待機させられたのを覚えてないのか?」

「あーそん時俺、体調悪かったから寝てたんだけどアレって噂じゃないのか?」

「事実だよ、お店で働いているあの女性いるだろ?パーティの一員のルミエーン様だよ」

(様か……いつまでも慣れないな)

「ああ!あの救世主のか!」

「ちょ!!声が大きい!」


獣人族にとって最強パーティの人間族2人を慕う人も多く、「様」付けで呼ぶ人も多い

ルミエーンも様付けで呼ばれることは何回もあったがいつまでも慣れてないのであった


「いや~サインもらおうかな、高い羊皮紙でも買ってさ~」

「やめとけ!やめとけ!6日前に失礼な態度を取ったバカがいたせいで雑談をしようとしただけで誰からも睨まれるようになったんだぞ!!特にあの受付嬢がカウンターを超えて飛び蹴りしてくるって噂だぞ!」

(相当噂に尾ひれが付いちゃったな?話しかけられるだけで睨まれるのことは無いんだけど、でも前にナンパされそうになった時は本当に姉さんが飛び蹴りしてきたからね)

「うーんそれは残念、コルト様もニル様が仲間になった後も色々と依頼を達成していて本当に最強だよな?今ラストダンジョンにに行っているんだよな?何かしら速報はないのか?」

「ここから魔王城は馬車でも2日だし、そこから何かしらの郵便があっても早くて5日

でもどんな結果だとしても手続きとかいろいろあるし今日以降じゃないと情報が来ないんじゃないか?」

「じゃあ情報が集まっている酒場にも向かうか!」

「おい!まだ昼だぞ!」


そういいながら獣人族の2人はギルドを出て行った


(ギルドも酒場と同じぐらい情報が良く集まるんだけど、それでも未だに3人の今を知っている人は誰もいない……でもやっぱり待つしかないよね)


そうやって考えていると、1人の若い男が入って来た

何やら職員のような帽子をかぶっており、腰には肩掛けバックを下げている


「お?郵便屋さんッスね?何か預かる物があるッスか?」


男は郵便屋、紙は高価であり手紙を届けるだけでなく物資の運搬を行ったり世界や国で起きた情報を様々な所に発信している役割も行っている

郵便屋は大きく気を吸い込むと……


「号外!ごうがーーーい!!」


と叫んだ

ギルドにいた多数の人達は「何事か?」と注目をする

ルミエーンやサラサ、そしてほかのギルドにいた職員たちも注目をする


「ラストダンジョンの魔王城に向かった最強パーティ!リカルド!ニル!コルト!が魔王を討伐したぞー!これは8年ぶりの大快挙だーーーー!」


郵便屋がそう言った途端、周囲にいた冒険者たちは「ワッ」と沸き上がった、ある者は喜び、ある者は嬉し泣きして、ある者は平和を噛み締めていた


「ヤッター!流石は最強パーティだ!」「最強パーティだから当たり前っしょ!」「一時的だけど、この世界が平和になってよかったぁ」「よーし、次復活した時はは俺らも魔王を倒すぞ!」「それまで私たちも鍛えよう!!」


いつもはせわしなく、働いていたギルドの従業員たちも手を取り合いながら大喜びをしていた


「すごいっす!流石はリカルド達ッスね!」

「………」

「やっぱりルミエーンが信じていたっすから倒せるのは当然ッス!」

「………」

「アレ?」


喜んでいたサラサとは打って変わって、ルミエーンは少し苦笑いをしていた


「どうしたッスか?嬉しくないッスか?」

「いえ、……リドもニルもコルトも必ず魔王を倒せることは分かっていましたけど、それでも皆さんが魔王を倒したことはとてもうれしいです………ただ」

「ただ?」

「最後まで役に立ちたかったな…って思いまして……」

「……そうッスか」


喜び合っている周囲をよそに、ルミエーンのみ少し残念そうにしていた。唯一サラサのみ、その心を聞くことが出来たが、それ以外の人は嬉しみの渦に巻き込まれてルミエーンの寂しさの気持ちに気づかなかった


「ごめんね、こんなうれしい出来事があったのに水を差すようなことを言って…」

「気にしなくていいッス」

「いや、前向きに考えます。魔王を倒したなら皆さん帰ってきてまた会えると思うとうれしいです!」

「あ……」

「ど…どうしたの?なんか嫌な予感のする反応して?」

「えっと……非常に気の毒ッスがすぐには会えないかもしれないッス」

「え?どうゆうこと?」

「久しぶりッスからアタシもうろ覚えッスが、魔王を倒したらまず王様に呼ばれるッス

豪勢な食事や祝福に名誉、そしてかなりの褒美が与えられるッスが……それをしていたら20日近くはかかるッス……」

「え?それって………」

「しばらくは会えないッスね」

「そう……ですか」


その事実を聞いたルミエーンの表情は非常に暗くなった、それでも周囲の様子は変わらない


「名誉とか、祝福に褒美がいらない訳ではありません。貯蓄はあるに越したことはありません

でも私はそれよりも……皆さんに早く会いたいです」

「……そいつは、本当に待つしかないッス」

「うん、大人しく待っているから………みんな」


静かに流した涙は、サラサ以外の誰にも気づかれることは無かった………





……2日後


未だに8年ぶりの魔王討伐のことが世間一体を埋めている中、サラサとルミエーンのいたギルドはいつものようにせわしなく働いていた

魔王討伐の話を聞いた冒険者が平和をたしなむ為に休暇を取る人もいて

いつもよりかはギルドを利用している人はすこし少なかったがそれでも微々たるレベルであった


ルミエーンはいつも通りギルド内の店で働いていた


「はい、買取ですね?これらは………値段はこのぐらいになってます

ありがとうございました!」


素材を持ってきた冒険者は店で換金すると、ホクホク顔のまま「ありがとうございました」と店を後にした


(あれから2日、皆さんは王様の所で何をしているのでしょうか?王様の所で様々な褒美を受け取った方々は誰もが幸せに暮らしていますが

……やっぱりそれよりも皆様に会いたいです)

「なあ?あのウワサって本当なのか?」

(あのウワサ?)


ギルド内で飛び交う会話は様々な情報が豊富にある

何気ない人間族2人の会話のはずがルミエーンはなぜか気になっていた


「あのウワサってどのウワサ?」

「アレだよ2日前にさ魔王討伐をした最強パーティ、王様からの呼び出しを一度断ったってウワサ」

(え?)

「え?それって大丈夫なのか?」

「いや、別に罰せられたりはしないけどよ……褒美とか名誉とかを考えるとさ?断る人はいないだろ?誰だって贅沢三昧したいし、そうじゃなくてもお金とかいくらでもあっていいだろ?」

「何か大切なことでもあんじゃね?」

「うーん、そう言われても王様に呼ばれるより大切な理由なんてなんだろうか?家族とかなんて会うのか?」

「それは関係ないんじゃね?家族なんていつでも会えるしさ?」

(………なんでだろ、みんなすぐに王様のお城に向かいそうなのに?)


そのうわさ話はサラサも聞いていた、そしてルミエーンが()()()()()()様子を見ると少しニヤニヤしていた


「サラサ!仕事中笑わない!」

「あっ!悪いッス!」


ルミエーンとは違って手が止まってしまい、近くにいた先輩に怒られたのは言うまでもない

それから数時間後、お昼ご飯を食べた2人はそれぞれのカウンターに並んでいつものように接客を行っていた


「はい、魔物の討伐依頼ッスね

ここからは遠いッスからじっくりと時間をかけて焦らずに頑張るッス」

「はい、頑張ってきます」

「行ってらっしゃい、次の方どうぞッス!」

「えっと、この依頼なんだけど……ん?」

「どうしたッスか?」

「なんか?音が……?」


猫の獣人族冒険者は耳を澄ませる……


「地響きの音?」

「え?マジッスか?!」

「ああ……こっちに来ている!?」

「報告ありがとうっす!!総員!魔物だと思って構えるッス!」

「え?!」


サラサがそう叫ぶと職員も冒険者も誰もが武器を構える、ルミエーンは一瞬動揺するが緊急事態用に置いてあるポーションを多数手に持つ


「聞こえてきたッス、魔物だったら覚悟をするッス!」


誰もが扉に注視して待っていると、扉が蹴破ら………れなくて普通に開かれる

そこには……3人の影があった


「え!?最強パーティッスか!?」

「リカルド!ニル!コルト!3人共どうしたの!?」


その場にいたのは数日前に魔王の討伐したばっかりの最強パーティ、人間族のリカルド、獣人族のニルとコルトの3人であった

ここまで急いできたのか3人とも息を切らしていて、魔王との戦いがあってすぐこちらに向かったからなのか少し鎧とかひびが入っていたり顔に砂や返り血などが付いて汚れていたが、3人は気にしていなかった

ルミエーンは数日ぶりに再開できた喜びよりも、予想外過ぎることによる驚きの方が勝っていた


「ぜぇ……ぜぇ……ルミエーンはいるか!」

「はぁ……ルミエーンさん!いますか!」

「はぁ……ルミエーン!どこ!」


武器を構えていた冒険者たちや職員たちは動揺しながら武器を下ろしていく

そして誰もがルミエーンに注目をする

もともと最強パーティの一員であったルミエーンは、数日間ギルドで働いているからこそ職員だけでなく冒険者の間でも知れ渡っていた


「えっ……あの…………」

「ルミエーン」

「え?」


サラサはいつの間にか横に立っており、行くように促した


「みんな呼んでいるッスよ?」

「う……うん!行ってくるよ!」

「ああ、行ってらっしゃいッス」


サラサは、ここ数日間久しぶりに姉妹で過ごしていた。ルミエーンが冒険者になってからはほとんどしゃべる暇もなく、ここ数日間は本当に楽しく過ごすことができた

妹の前では姉として振る舞っていたがそれでも妹に甘えたくなる気持ちもあり

姉妹としてずっとそばにいて欲しいという考えが過ることもあったが……それでも


「ルミエーン……アナタはみんなのいるパーティが居場所ッス」


少し涙をぬぐいながら、その“冒険者”ルミエーンの後ろ姿を眺めていた


「ルミエーン!」

「いた!」

「久しぶりです!」


数日ぶりの再会、ニルはしっぽをふりながら駆け寄るとルミエーンは優しく抱きしめた

その後をリカルドとコルトは追った

3人の様子を見たルミエーンは汚れている様子に少し驚いてハンカチを取り出して頬を拭いていく

4人の再会を見た周囲の人達は邪魔をしないように4人の周囲を空けて行った


「ただいま!」

「ただいまー!」

「ただいま帰りました!」

「みんな…お疲れ様!!おかえり!!あなた達なら絶対に倒せると思ってたよ!」

「あったり前だろ?余裕だったぞ」

「あれ?勝った時に息を切らしてなかった?」

「うっせ」

「怪我はない?」

「大丈夫です、どんなケガも僕が治しておきましたので」

「ありがとうコルト、みんなを護って……」

「どういたしまして」

「私だってさー魔法攻撃で援護しまくりだったよ?」

「ニルもありがとうね!」

「えへへ」

「リカルドも……パーティのリーダーとして頑張ったね!ありがとう!」

「ああ、どういたしまして…………ルミエーン、このパーティの決まりのようなものは覚えているか?」

「もちろんよ、『決して死なない』でしょ?」

「ああ、よく覚えていたな」

「いっつも口癖で言っていたじゃない?有言実行して本当にありがとう…」

「え?俺そんな言っていたか?」

「言ってたよ?ラストダンジョン内でも『決して死なせない』とか」

「その前の街でも言ってましたね?」

「……はぁ、気づかなかったな」


リカルドは

ルミエーンが3人の汚れている体を拭きながらも嬉しそうに話し合う

3人も数日ぶりの会話に花を咲かせていたが、ニルとコルトはだんだん真剣な顔になっていった


「でさーリーダー?そろそろさ?本題に入らない?」

「そうですよ、再会の喜びをもっとしたいですが……それでも本題に入りましょう」

「ああ、そうだったな」

「え?何なにか急いででいるの?」

「まーその…」


そう言ってリカルドは頬の泥を拭いていたルミエーンを少し引きはがすと跪いた。


「えっ!?」


その時表情は今までにルミエーン見た中でも見たとが無いぐらい真剣な表情をしていた


「つっ…街の外の方に王城に向かう馬車が待機してある」

「え?なんで?」

「王様から呼ばれたのは僕たち3人でした」

「でもさー私たち最強パーティは3人じゃないでしょ?」

「だから王様にそのことも説明したらオマエを連れて行くまで待ってもらっているから、けっ……来てくれ、王様を待たせていられないからな」


リカルドは一度目をつぶると、手を伸ばした


「お前もパーティメンバーだから一緒に来い、冒険者の1人なんだからさ?」

「え!?本当に私……来てもいいの?」


その言葉を聞いたルミエーンは泣きそうな声を我慢しながら問う

あの待機を命じられた時とは違って、少し嬉し泣き交じりの声になっていた


「謙遜しなくていいのよ!ルミエーンから貰ったアクセサリーのおかげでいつも以上に戦えたし!」

「戦闘前にルミエーンさんのお弁当を3人でいただきましたが、力が湧きまして全力で挑めました」

「ルミエーンだって魔王戦に十分貢献してるよ!」

「ルミエーンさんのサポートがあってこそです!」

「この通りお前もパーティの一員として魔王討伐に本当に役立った、魔王を倒す最後までな…

俺はオマエのおかげでよく分かったよ、友達とか仲間もそれ以上の関係のことも

ありがとう!一緒に行こう王城へ!」


その言葉を聞いたルミエーンは


「…分かりました!」


涙を流しながら笑顔で頷いた

あの時とは真逆のようにルミエーンは手を伸ばした………


~Fin?~









「言いたいことはそれだけですか?リーダーさん?」


2人の手が触れようとしたときに、急にコルトの声が聞こえる


「は?なんだコルト?邪魔をするのか?」

「いやいや、リーダーは足りないからコルトはそう言ったんだよね?」

「ええ、勿論です」

「え?足りないって?何の話なの?」


周囲の人達は分からない人が多いのかざわざわとし始める、ルミエーンは分からなくて頭をかしげるが打って変わってリカルドの顔は段々赤くなっていった………


「え?え?」


状況が全く理解できないルミエーンは混乱するかのようにキョロキョロを周囲を見る


「リーダーさん?言わないんですか?」

「ぬ………くっ………」

「ちょっとー魔王と戦った時よりも苦しそうな顔しないでよー

言いかけたくせに何をごまかしているの?」

「ごまかす?一体………?」

「お……王様が待っているんだ、さっさと王城に行くぞ」


何かしらをごまかすようにリカルドは立ち上がろうをしたが…


「待つッス!なんだか王様はせっかちみたいに言っているッスけど王様はそれぐらい待ってくれるほど寛大な方ッス!」

「ナイス追い打ちです」

「ナイスよ!サラサ!」


サラサの声に周囲にいた冒険者たちは「そうだそうだ!」を口をそろえて肯定した。王様は国民からの信頼も厚いのである


「ぬ………っ…」

「ここまでしても言わないかー」

「ニル?いいことを思い浮かびました」

「え?なんだい?」


コルトはニルに耳打ちをすると「それいいね!」というと2人は向き合う


「おい?お前たち何を?」


リカルドの問いかけには答えずコルトは跪いて小箱を()()()


「その座り方に小箱?

……え?!まさか!」

「ルミエーン?それ以上は言わないで?

実はとっくに答えは決まっているけどさ?なんかこう……決まりとかあんじゃん?」


周囲の人達も何かしらを言いそうになったけど、ニルの発言を聞いて誰もが黙って見守っていた


「僕がすることは分かりますよね?馬車の中で話したこと……そして、魔王と戦った後に一緒に買い物しましたよね?」

「あ………ああ、そうだ」

「約束しましたよね?『一緒に言いましょう』と

僕は意外とせっかちですから、早くしないと僕は先にいってしまいますよ?」

「そーなると2人が二番煎じになってちょっと台無しなっちゃうな~それでもいいの?リーダー?」

「……分かった、覚悟を決めたから1回深呼吸させてくれ」


一度深く深呼吸をしたリカルドは跪いたまま、懐から小箱を出して構えた


「ルミ……いやルミエーン、いまから大切な話をする」

「は………はい!」


リカルドの真剣さを感じ取ったルミエーンも緊張しながらも真剣に向きあう


「本当に………オマエと6歳で出会って今まで22年間…逆に言わなかったのが不思議だし…オマエへの気持ちが…変わったのもいつがきっかけだったかなんて俺も覚えてない、でも学校で初めての実践訓練の時にお前のこと絶対に死なせないし幸せにしたいと思った。『お兄ちゃん、さようなら』という絵本のようは絶対にさせない」


リカルドの前口上を聞いたコルトは続くように話し続ける


「ニル?出会ってから8年間、恋人になってから5年経ちましたね?まだまだ冒険者パーティとして慣れていなかった時に積極的に話してきましたよね?そのうちお互いに恋仲関係になりましても、リーダーさんやルミエーンさんから祝福を受けまして本当に最高でした。けれどもこれからはもっと幸せになりましょう」


2人は構えていた小箱を開く、中には銀色の指輪が入っていた……以前馬車で本と取引をしたときにいただいた金貨で2人が購入したものである


「ルミエーン、好きだ!お付き合いをすっ飛ばして俺と結婚してくれ」

「ニル、僕と結婚してください」


2人の表情は真剣そのものであった

その緊張感が伝わっているのか、驚くほどその場は静寂に包まれていた


「リ…リカルド……」


ルミエーンは予想はしていたけどその真剣な様子に両手で口を押えながら目を潤ませる、ルミエーンもいつがきっかけなのかは覚えていないが、リカルドのことを愛していた。

いつかは好意を伝えたくても、「振られたらどうしよう」とか「気まずくなって離れてしまったらどうしよう」と葛藤の末に伝えることが出来なかった。たとえそれがリカルドからの好意を感じることがあっても……


「うれしいよ、コルト……あの時のことがフラグにならなくて本当に良かったよ、改めて言われると本当にうれしくて……素敵な物語のようで…あれ?涙が……」

「僕はこれからも護ります。フラグという物なんてこれからもへし折らせていただきますので…タオルもどうぞ、これで拭いてください、物語の結末に涙は似合いませんから」

「ルミエーンお前はどうだ?」

「リカルド……ありがとう…ほんとうにありがとう………」


泣きそうになりながらも、声を絞り出しながら2人はそれぞれ抱きしめながら


「…ありがとう!末永くお願いします!!」

「コルト……よろしくね!」

「ルミエーン……ありがとうな」

「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」


ここに2組の夫婦ができた、それぞれの夫は妻の左手の薬指に指輪をはめる

冒険者の誰が用意したのか分からないが鈴の音などの神聖な音でそれぞれの結婚を祝福した

4人は少し驚いていたけどそれでも嬉しさの方が勝っていた


「魔王討伐に結婚とはめでたいな!」「こんな最高の瞬間に立ち会えて幸運だよ!」「ああ……俺も故郷のあいつに結婚しようかな……」「ちょっとサラサ?!なんで最強パーティの女の子たちよりも泣いているの!?」「うっ……うっ……妹がじあわせで本当に……ずびっ…よがったッズ」「ねえコルト……ちょっとお願いしたいんだけど………王様との色々が終わったら、コルトの教会で結婚式していいかな!?」「おお!実は僕もそう考えていました。僕たちだけでなくルミエーンさんとリカルドさんとの結婚式も同時に行いますよ!」


「…まったく、なんで俺らよりもこいつらこんなに大騒ぎしているんだ…嬉しそうだからそれでいいけどよ」

「…はい、こんなにも幸せな気持ちは本当にずっと続いてほしいです」

「あたりめぇだよ、世界の平和もパーティの幸せも………オマエの笑顔もずっと守ってやるよ」

「ありがとう、結婚か…急に言われてびっくりしたけど私って素敵なお嫁さんになるかな?」

「絶対になる、結婚する人は誰だっていいお嫁さんになるからな、それにお前のことは俺が1番わかっているからな……オマエよりもな」

「ありがとう……リカルド…もう1回抱きしめてもらってもいい?」

「いくらでもやってやるよ」


そう言いながらもリカルドは少し照れくさそうにルミエーンを抱きしめた

誰もが笑顔であり、誰もが祝福をし、誰もが幸せな感情に満ちていた。

ルミエーンは魔王討伐には直接的には関わってないが、それでも間接的にはパーティに対する貢献は非常に大きかった。ルミエーンのサポートがあって3人が本当に全力を出せたからこそ魔王を倒すことも出来て誰もが幸せになった。そんな3人もルミエーンのサポートに常に感謝をしていた。

もしルミエーンがいなかったらこの物語は最悪の結末を迎えていたかもしれない…


パーティとして1番大事なものは何か?圧倒的な力で敵を倒すこと?壮大な魔力で戦うこと?補助に徹して仲間たちを守ること?

どれも大切だが1番はそのどれでもない、力だけがあっても人々への敬意がなければパーティは長続きしないのである、最も大事なものは他者を思いやる気持ち、それは街の住人たちなどではなくパーティメンバー同士も含まれる

魔王を倒して、つかの間の平和ではあるがそれでもこのパーティの誰もは笑顔でずっといられる

コルトとニルも手を握りながら口付けを交わし、受付から見ていたサラサは小さな布を取りだして嬉し涙を拭き

抱き合っている2人……リカルドは暖かい気持ちになりながらもこの幸せを永遠に守る決意の表情をしており

そしてルミエーンは嬉し泣きをしながらこう思った


ーーラストダンジョン攻略前の最強パーティから置いてかれましたが、それでも私は幸せです。


〜Fin〜

言いたいこと、書きたいことは全部書きました。


読んでくださった皆様、今までありがとうございました

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