海の真実とは
プロローグ
ピーピピー
鳥のさえずりが耳に残る。
あの日は綺麗な空だった。
太陽が照る夏の日、私は海辺に散歩に行った。
ふと、海に目をやると海はなかった。
〜海の底〜
「おかあさーーーん!おかあさーーーん!」
泣きながら大地は呼ぶ。
私は小学5年生の坂村茜。弟の大地は小学2年生。
大地はもう泣きすぎて鼻が赤くなっている。
ここは、寒い学校の体育館の中。
ここはとても大きい体育館だから、多くの人がいる。
多くの人がいる中、私たちは叫ぶ。
「どこなのーー?」
私は泣きたい気持ちをグッと抑えながら叫ぶ。
私が泣いたら、大地も泣いてしまう、そう思いながら。
私は今日、散歩に行っていた。
10:52
海辺を歩く。気持ちいいそよ風が髪をなびかせる。
ふと、海の方を見た。海はなかった。
驚いて、じっと見ていたら、地平線の方から、水が押し寄せるのが見えた。
なんだ。引潮だったのか、と思った。
その時ホッとした自分が馬鹿だった、、、。
押し寄せる波は普通じゃなかった。
これに気づけなかった。
波が押し寄せて、海が水で埋まっていくその姿は確かに綺麗だった。
それに見惚れていた。
11:06
ゴゴゴゴゴゴ・・・
なんの音だろう?私は思った。
その瞬間、ガガガガという音と同時に、大きな揺れが私の足元を襲った。
びっくりした私は動けなくなった。
ここは海辺、動かなければ、津波が来るかもしれない。
動け!動け!動けー!
私は心の中で叫んだ。
揺れは止んだ。その瞬間、後ろからタッタッタッと後ろから、走ってくるような音が聞こえた。
私は誰かの胸の中にいた。暖かかった。
どうしたのだろう。私は、知らぬ間に寝ていたようだ。
体育館の中の寒さで起きた。
目の前には泣いている大地がいた。
「よかったー!」大地は叫ぶ。
大地に聞くと、どうやら、まだお母さんとは会ってないらしい。
2人で、お母さんを探す。
「おかあさーーん!」
その時、奥の方で、人混みに押されながらも、ジャンプして手を振っている白い服の女性が見えた。
目を凝らして見ると、お母さんだった。
大地は、泣き喚く。よかったー、と。
その夜は、泣きつかれたのか、大地はぐっすりと寝ていた。
だが、私は全く眠れなかった。