お城4日目・買い物は準備。神とは交渉。
アニーさんを先頭に城内を案内して貰う。これは凄いわね。どこ見ても通路とお部屋ばかり。王様たちがいた二階のフロアが、謁見室やダンスホールのある貴賓用の場所とのこと。現在私が滞在している部屋もその隅っこに位置している。客間って奴よね。この上の階が王族のプライベートフロア。一階には厨房や従業員用のお部屋があるそう。私はテクテクと歩きながら位置わ、確認をし、脳内マップに書き込んでゆく。歩いてる最中に覚えきれません!と愚痴ったなら、脳内に城内マップがピこんと浮かんできたの。しかし見取り図だけ。つまり私はその見取り図に詳細を書き込んでいるというか、通過すると勝手に書きこまれている訳なの。
それから移動魔法について気づいたことがあるの。実際に行った事がない場所でも、視界に入れば瞬間移動は使えるみたい。例えば廊下の端から端へとか、螺旋階段の始まりから終わりへとかね。吹き抜けから空を見ていて、上に部屋が有るけど星見台かしら?何て考えていたら移動しちゃったのよ。慌てて戻りバレずにすんだけど慌てたわよ。つまり城の外から見える窓の内部などにも、窓が開いてれば飛べてしまう。お城の各部屋にはそれぞれ窓が有るけれど、廊下には窓がない所が多い。鍵の掛かった部屋にも、鍵穴から覗けば中に飛ぶことができる。古風な鍵だから、中まで良く見えてしまうの。あれでは防犯にはならないわね。
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アニーさんの城内案内の後は、中庭でのバザールに移動する。お城勤めの人々は気軽にお買い物にも行けない。その為定期的に、出張で城下のお店が来てくれている。商人もお城の方々がお客さまだから気合いをいれていて、中々お洒落でお得な上品揃えも豊富とのこと。従業員だけではなく、登城する貴族のお嬢様方にも密かな人気とのこと。
私はルードに指輪を手渡された。この指輪ですべての支払いが出来るという。もちろんアニーさんもはめていて、使い方を説明してくれる。この指輪には家紋が入っていて、月末に纏めて請求されると教えてくれた。まるでカードでの支払いの様よね。私のは賓客用の指輪で、支払いは王家からになる。上限はないので、欲しいものはドレスでも宝石でもバンバン購入して良いと言われてビビってしまう。
「ドレスや宝石は要らないけれど、本当に何に使っても良いの? 後から返せないのなら、王子の嫁になれとか言わないでよ? 私は絶対に嫌なのよ」
「それは大丈夫だから心配しないで! 他国のお客さま何て、誰もが遠慮なんてなしでバンバン買うわよ。お買い物を楽しみましょうよ」
私はアニーさんに引き摺られ、ドレスや宝飾品のお店に連れ込まれる。高級品のお店は中庭と続きの部屋に集まっている。
「…………」
アニーさんごめんなさい。これはぜったいに私には無理よ……
この世界の女性はロリータが標準なの?ドレスは全てフリフリでファンシーでカラフルな色の洪水。宝石はデコデコした高額商品ばかり。盛れば良いってわけではないのに!そんな中アニーさんは、まるで水を得た魚の様にはしゃぎ買いまくってゆく。ルードは既に荷物持ち。暫くするとさすがに持てなくなったのだろう。配達を頼んで来ると何処かへ消えてしまった。私はこれ幸いと、こっそりと中庭とバザールへと移動した。
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やはり此方の雰囲気の方が私には馴染むわよね。元気で陽気なおじちゃんやおばちゃんたちとのお喋り。此方に来てからは上品なお言葉ばかりだったから、本当にホッと出来るし居心地が良い。城下町やこの国の情報をお喋りで入手する。もちろんお買い物はオマケ付き。このバザールはお得価格な為、値下げは出来ないとのこと。代わりにと皆オマケを付けてくれるの。
指輪はバッチリと使用させて戴きました。たくさんの情報もゲットです。これで私は城下に出ても、バッチリ暮らせる自信が付きました。城下になれたら違う町に逃げましょう。城下町で旦那様をゲットできたらな最高です。でもこれはさすがに先になりそうですけど。
両手に紙袋を抱えニコニコ笑顔の私。荷物はルードが部屋まで配送を頼んでくれました。
「中身確認しなくて良いの? 」
「流石に女性の買い物を覗いたりはしませんよ。幾らでも購入して下さいと言ったのは此方です。でもドレスや宝飾品は良いのですか? 高級品は買われていない様ですね」
「私にあのブリブリロリータが似合うと思うの?
遠慮なくドレスもアクセサリーも購入したわよ。但し普段使い出来るシンプルな物をね。ほら見てよ。早速着替えたわ。歩きやすくなって楽チンよ」
私が購入した着替えはシンプルなAラインのワンピース。空色の生地に白と金糸で、雪の結晶が沢山刺繍されている。衿や袖や切り替えにも雪の結晶をイメージしたレースが使われている。アクセサリーも同系色の雪の結晶シリーズで揃えたの。このシリーズは他に小花かクローバーをイメージした物があり、私は雪の結晶とクローバーの商品を購入。そうしたらおばちゃんが太っ腹なの!小花のセットもオマケで付けてくれたのよ。このお店は男性物から下着に小物、兎に角品揃えが凄くてリーズナブル。欲しい品がここでほぼ揃ってしまいました。お城で販売してる品は、庶民には少し贅沢なお品で外出着用なんですって。お城の働き手は皆さん高給取りらしい。ちなみに私の総購入代金は、アニーさんが購入したドレス一着分にも届かなかったそうよ。ある意味凄いことよね。
私はおばちゃんにたずね、店頭で販売されていないというお品も購入させて貰った。店頭にはださないが庶民用もかなりの需要が有るそうで、頼まれた時に出すそう。更にお隣の息子さんのお店でも色々購入させて貰ったの。本当に助かりました。これで当面の物資を確保です。逃走してからの資金の心配がなくなりました。後はアニーさんと王子をくっつけるだけです。あら?違うわ!まだ大事な事が有るじゃない!
神様よ!保険金を何とかして!あの親戚たちだけには渡したくはないの!せめて交通遺児の基金に寄付して欲しいわ!
絶対に文句を言わなくちゃ!
「とてもお似合いですよ。黒髪に白い雪の結晶が映えますね。フリフリは今貴族間で流行なのです。個性を潰してまで流行りに乗る必要はないですよね。神様も魅了出来る美しさですよ。ではそろそろ教会へ参りましょう」
「…………」
ここは素直に喜ぶべき?ルードは真面目に言っているの?社交辞令なの?こういうのに慣れないから、顔が赤くなりそうよ。
「え~? ルードが女性を褒めるなんて珍しいわよね。ふだん社交辞令も言わず、パーティーでも能面顔の癖に」
能面顔のルード?良く人の事を小バカにして黒い笑顔をしているじゃないの!
「さっさとゆきますよ! アニーは先に帰りますか? 煩い人間は教会には不向きです」
「リョウ! さあ私と行きましょう。ルード何て置いてゆくわよ! 」
私は話の内容が良く理解できないまま、アニーに引き摺られ教会に向かう。ルードは後ろから含み笑いでついてくる。やはり腹黒笑顔満開じゃない。本当に良くわかりません。
とにかく教会よ!神様?首を洗って待っていなさいな。
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