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お礼に行こう5日目・夜。それぞれの想い。

この白い空間は神様がいた世界の雰囲気に似てるいわよね。もしかしてお話出来るのかし?神殿ではやはり無理だったの。では呼んでみましょうか?


「おーい。ラピス様ー! いませんかー? 」


「わざわざ声を出さなくても聞こえていますよ。但しこの空間では私は姿を出せません。会話も数分が限度ですね。念話の方が早いですよ。状況は把握しています。しかし私には介入出来ません」


もう仕方がないわね。結局己で真実を見極めるしかない訳よね。


「はい。宜しくお願いします。フォローはしっかりとします。お姉様の事もお任せ下さい。悪い様には致しません」


やはり少女は私のお姉さんなのね。


「パチン。これでなにか少しでも思い出せませんか? あの魔方陣には記憶を消去する術が組み込まれていますが、完璧には動作されていません。記憶の断片や深層心理までは届かないのです」


「…………」


公園のブランコでお姉ちゃんと従姉が遊んでいる。お母さんと叔母さんが、滑り台の横のベンチに座りお喋りをしている。これは私たちが十才前後の頃よ。そうよ。なぜ忘れていたの?私は幼い頃にこの夢を何度か見たのよ。その度にお母さんに聞いたけれど、そんな人たち知らないといわれたの。やはりあの少女は私のお姉さんで、叔母さんと従姉と遊んていたの?それよりたしか叔母さんは赤ちゃんを抱いていたわよね?あの赤ちゃんはどうしたの?


「思い出したか? その記憶は忘れ去られた真実だよ。そして残念だがその赤子の存在は消滅してしまった。過去の時代の母体が召喚され、あの世界から消えたからな。産まれなかったんだよ」


「そんなの酷い! ならば従姉は? 」


「彼女は母体よりも先に召喚されたからな。卵が先か鶏が先かになるけれど、従姉は母体が消える前に召喚され此方の世界に定着した。定着していなければ消えたかもしれん。本人にとってどちらが幸せかは解らないが……」


定着していなければ消えていた?あっ!結婚前の過去の叔母がいなくなれば子供は誕生しない。異世界人の従姉は赤ちゃんと同じ扱いになるのね。しかし従姉は己を産んだ叔母の存在が抹消される前に、この世界に呼ばれ此方の世界に定着していた。つまり従姉は此方の世界の人間扱いとなるため、その存在が消える必要はない。


「そうだ。ちなみにすずはまだ、こちらの世界に定着は確定していない。私はこの世界仕様の体にしただけ。そこは母なる女体の神秘とかいえない。しかしまだだったのには流石に驚いたよ。ヘタレ過ぎるわ」


は?女体の神秘ってなによ?なぜか嫌な予感がするわね。もしかしてまたエッチで定着だとか?またエロ仕様なのね!


「まあそう怒らないでくれ。そろそろタイムリミットだ。全てが終了したら神殿に来なさい。出口は向こうだから迷うなよ。ではまたな」


あっ!遠くにドアがみえる。白い空間に浮かぶドア。ど・で・ドアですか?あそこまでゆくのに迷ったりはしませんから!


***


「…………」


「ちょっと! 何時までも黙り込んでるいけれど、時系列の考察なら無駄よ。この魔方陣は時間の概念をねじ曲げている。現在、過去、未来と、召喚者の時は入り乱れていた。私がこの世界に召喚された後、私の幼い頃に死んだ筈の伯母や従姉が喚ばれたの。しかも二人ともに年齢は十五才前後。調べて見たけれど、若返りではなく若い時代から引摺り出し喚んでいたのよ」


「それであなたは若いのですか……しかしなぜ年を取って……なるほど! 水晶球で眠っていたからですか! 」


「そうよ。この中ではほぼ時を止めていたの。あのね? 神の神託による聖女は、天涯孤独な者が神に選ばれるわよね? 」


「はい。そう聞いていますが……」


「この国が最初に私を召喚したのち、次からの召喚では、さらに喚ばれた異世界人を媒体にしていたの。結果私の血を始めとして、私の血の繋がりで呼ばれ続けたのよ。つまり元の世界の妹に近い親戚が少しづつ減少していった。さらにはこの魔方陣には存在抹消の術まで組み込まれている。だから妹は私の存在を忘れてしまったの……」


「妹は消えた従姉や伯母の存在も知らない筈よ。もし伯母が先に召喚されていたなら、従姉は元の世界では産まれなかった。私より先に私たちの母が喚ばれていたなら、私たちだって存在しなかったの! 私は何時妹が喚ばれてしまうかとハラハラとしていたわ。流石にもう大丈夫だと安心して永遠に眠る覚悟をしたのに! 今更妹が聖女として喚ばれるとは思わなかったわよ! 妹を喚んだのはこの国ではないけれど、結果として私を含む妹の親族を減らし、聖女として召喚される原因の一端を担ったの。柵がなくなったという事は、父と母は妹を残して死んだのよね。もう今更どうにもならないわ。でもその体ならばまだ元の世界に戻れるのよ。だから私にその体を頂戴な」


「冗談ではありません! ふざけないでください! 」


「怒らないでよ。貴方たちはまだ体を重ねてはいないのよね? この世界に染まりきっていない妹の体ならば、まだもとの世界へ戻れるのよ。例え神が体を作り替えていたとしても、女性の理の全てまでは変えられない。異世界人の女性はこの世界の子を産む事により、この世界に完全に定着するの。体を重ねる事により取り込まれた子種が、未知の領域の子宮までをも徐々に作り替えこの世界に定着させる。体も意思も全てがこの世界に支配される感じよ。そこに愛がなくてもよ! もちろんあなたは知っていた筈。だからこそリョウがもとの世界へは戻れないとは思いつつ、用心のためにと体の関係を迫ったのではないの?

でもあなたがヘタレで良かったわ。全く女をバカにしているわよ! 」


「違います! 私はリョウを愛しているのです! 」


「たしかに愛はあるのかも知れないわ。でも早く定着させなければ、神の気紛れでリョウが連れ去られてしまうかもしれない。この様な気持ちが、本当に少しでもないと言いきれるの? 神は気紛れよ。過去にも神に召しあげられ、伴侶となった聖女がいたはずよ」


「…………」


「無言は肯定ととるわ。つまりはこの体はでは無理なのよ。貴方たちは戻れる事を知らなかったのよね? 神は何故隠していたのかしら? 貴方のヘタレ具合が誤算だったのかしらね。代わりにこの体を妹にあげるわ。だから私がその体を貰っても良いわよね? もしかして純潔に拘るの? この世界の人は拘らないと聞いたけど? この体はほへな時を止めていたから、交換しても大丈夫よ。双子だから見た目だって殆ど変わらないし、却って若い体よ。子は産んでいるけど……」


***


お姉ちゃん……


「本当にお姉ちゃんなの? 私は小さい頃に三人で遊んだ夢を何度も見たわ。自分とそっくりな女の子と、少し年上のお姉ちゃん。優しい叔母さんとお母さんも一緒に遊んでいたわ。でも誰もが存在を否定したの。でも本当にいたのね。忘れていてごめんなさい。元の世界に戻りたいの? 戻れるのならば私の体を使って……」


「リョウ! 目が覚めたのですか?! 」


「ええ。白い空間に閉じ込められていたけれど、二人の話し声は聞こえていた。確かに神様は私の体を作り替えたから、もう元の世界には戻れないと言ったわ。それでも戻れるの? ならば使って欲しい。私はこの世界に残るから大丈夫。忘れていて本当にごめんなさい」


「貴女もバカね。貴女が謝る事ではないわ。全てはこの国の王族のせい。私こそごめんなさい。貴方たちを試したの。流石にこの体はもう限界。私が貴女の体で戻ったら、貴女はこの体で死んでしまう。聖獣のこの子が私に魔力と生命力を注いでくれているのよ。この子は私と共に死にたいと望んだ。私もそれに答えた。約束を違えるつもりもない。私たちは命を繋いでるの。でもそれももう限界だわ……」


「この神殿は墓標にするつもりだったの。私たちの鼓動が止まれば崩れ落ちる。聖獣避けの結界は死への邪魔をさせない為。人間には何も出来ないからと思っていたのに、まさか貴女が来るとは……やはり血の繋がりは切り離せないのかしら?


お姉ちゃん……


「私たちを明日まで休ませてくれる? 流石に疲れたの。奥に私たちの研究室が有るわ。色々な資料もあるから、それらを全て持ち出して構わない。私の日記で全てが解るわ。では明日の朝ね。ようやく全てが終わるわ。見届け人があなただなんて嬉しい誤算ね。リョウだったかしら?

お休みなさい」


お姉ちゃん……


いきなり双子たと言われたのに、何故か直ぐに納得出来てしまった。水晶球を通し混ざりあった魔力が全てを教えてくれた。彼女は私に最も近い存在だ。何故一緒に過ごせなかったのだろう。私が先に召喚されてれば、姉は幸せに過ごせたのだろうか?ううん。過去は今更どうにもならない。未来をどうにかしなくちゃ。


白い空間に閉じ込められ漂いながら、私は神様にお願いをしたの。神様は答えてくれたわ。白い空間は神の領域に近いらしい。生憎ここの神殿は機能していないので、やはりここでは神には会えないそうよ。神は地上での事に安易に手を出す事が出来ない。但し姉が自力で神様のいる空間に辿り着けた際には、必ず姉の幸せを約束してくれる。願いを叶えてくれると約束してくれた。もちろん神様にも無理な事も有るらしいくなれど、出来る限りは希望にそってくれるそう。それがこの国の召喚を止められなかったお詫びとの事。


綺麗事かもしれないけれど、私は皆とともに幸せになりたい。お姉ちゃんと聖獣さんにも幸せになって欲しいの。先ずは真相を知らなくては駄目よね。徹夜の覚悟で頑張るわよ!


ちょっと!ライドどいて!私はまだ寝ないの!邪魔をするのなら、結界を張って部屋から追い出すわよ!


私が神に召されたり、元の世界に戻らぬ様に同衾をしたい?


ふ・ざ・け・な・い・で!!


とっとと調べるのん手伝うか、邪魔をするなら出ていってー!!


*****


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