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お礼に行こう3日目。帝国でワショク。

なぜかどんよりと憂鬱な気分なの。今日は朝から会う人会う人が、なぜか酷くよそよそしいのよ。まるで腫れ物扱いという様な……なのにものすごく視線を感じてしまう。たった今もウィンに視線を外され然り気無く避けられたのよ。昨日は振られまくり本当に恥ずかしい一日日だったし、私ってば此方に来て調子に乗り過ぎていたのかしら?魔法がチートだったりと、楽しすぎてはっちゃけ過ぎていたの?


私が自意識過剰のナルシーならば、こそこそせずかに堂々と笑い飛ばしてよ!まあたしかに異性とは話しにくいかもしれないけれど、誰々くんが誰ちゃんを好きだって!とか、誰君と良く目が合うのよ。もしかして相思相愛?やだー告白されちゃったりして!なんて感じで、友だちならば仲良く話をするわよ。世界が違うから多分考えも違うのよね。でもでも!


避けるなんて酷い……ちゃんと訳を話して欲しい……


あ!ほらまた!まてこら!


「シスルっ! おはようの挨拶をした時もだけど、私から視線をわざと外していない? 私に何か変な所でも有るの? 皆意味深なの! 私が何かしたならキチンと反省もするし謝るわよ? えーまた逃げるの? ちょっと待ってよ! はっきりしてー! 」


「リョウごめん! 追うな! まだ気持ちの整理がついていないんだ! まさかもうあんなに進んでいるなんて! 結婚式で会う時には、おめでとうと必ず言おう。私はリョウの幸せを願い決断をしたのに憂いている……女々しい奴と笑ってもいい。またなっ! 」


「ちょっ……」


まったく意味が理解できません。


あ!イード?今そこにいたわよね?まさか消えたの?でも瞬間移動は使えないって言っていたわよね?


ちょっと……あれで隠れているつもり?気配を遮断しているみたいだけれど、何故かバレバレですけど?捕まえて吐かせるべき?ジト目で見ていたら気付かれてしまう。


「すみませんっ! 只今傷心中なので一人にして下さいー。やはり四六時中くっつかれていたらほだされますよね。くっ悔し涙が……話には聞きましたが、まさか既にとはっ! くぅ……」


はぁ?ますます訳が解りません。既にどうしたのやに?


「リョウは何をうろちょろとしているのですか? 皆はもう集合しています。別れの挨拶は朝食の際にしましたよね? 帝国の皇子もいますから早目に出ます。流石に私一人では、野郎ばかりを転移することはできませんよ」


野郎ばかりって……でも確かにそうよね。


「レインごめんなさい。おトイレに行っていたの。でも皆がなぜかよそよそしいから、ついつい気になり声をかけたけれど逃げられるの。私なにか変なことをしたの? 」


「心配はいりませんよ。人の噂などすぐに消えます。嘘から出た誠と言うことも有ります。皆さんはリョウの寝ぐせを気にしているのでは? 前髪がはねていますよ」


いやー。マジではねているの?私は前髪を撫で付けながら早足で歩きだす。


「はぁ……確かにこれが最善の理なのですが、セリーは少しやり過ぎですね。裏工作でライド以外の求婚者を牽制し取引をするだけならばまだしも、まさか早朝に鍵を開けっ放しにするとは……ライドも確信犯なのでしょうか?ならばお仕置きが必要ですね……」


早足で目的地に向かう私には、レインの呟きは聞こえませんでした。


***


今回は私が帝国まで飛べないので、私とレインがメインで手を繋ぎます。反対側の手にライド。私の肩に小鳥姿のタルバとモノク。ライドの肩に小鳥姿のセリーとラス。帝国の皇子は手縄に腰縄でレインが引いています。そう言えばこの皇子に、あの苦労して捕獲したタコを投げ捨てられたのよ。ムカつくわー。


「では帝国の城に飛びます。すでに彼方側には手配済です。リョウは初めての場所なので、何時もの様に私についてゆくイメージで飛んで下さい。皇子は暴れないで下さいね。紐が外れたならば何処に落ちるか解りません。では行きますよ! 」


視界がクルリと変わる。目を開くときらびやかな見知らぬお部屋でした。多分客間でしょう。すでにソファーに着席していた三人が立ち上り、私とルードに前の席を勧めてくる。ルードの隣にはセリーが座り、サイドのソファーにはタルバとモノク。レインとラスがそれぞれ腰掛けた。因みに皇子は捕縛されたままの状態で、少し離され椅子に座らされている。


私たちが着席をすると宰相が挨拶を始める。相手側は皇帝に皇太子に宰相とのこと。私は今回の被害者兼、聖女としての訪問。ライドは国王代理よ。まあ普通ならば王や皇帝までが出張る事件ではないのよね。それでも帝国側は自ら皇帝が出てきた。息子が仕出かした事の謝罪はもちろんだけど、この場を乗り越え鎖国状態を何とかしたいらしい。私としては関係のない話だとは思うけれど、国を開けない原因が聖獣たちのせいだと言いはるのならば、それは聖獣たちにとっても困りものでしょう。セリーの時の様な悲劇を二度と起こさないためにも、帝国には正しい聖獣との在り方を知り広めて欲しい。


突如レインとラスが聖獣姿になり、続けてタルバにモノクも変化する。セリーは流石に陸では難しい。しかし一瞬だけ聖獣姿を披露した。


やはり正しい聖獣たちの姿を見た方が真実味が有るわね。王様たちがポカンと口を開けて固まっている。


「聖女様には聖獣様が四人も……」


宰相さん?今更それを言うの?私は聖獣たちとともに自己紹介をしているのに、やはり信じていなかったみたいね。あぁ……だから皆は聖獣姿になったのね。やはり実物を見ないと実感がわかないの?皆……気づいてくれてありがとう。


「今回の事は誠に申し訳なかった。お祖父様から人魚の話を小さい頃から聞かされてた。つい本物かと思い調子に乗ってしまったのだ。まさか聖女だとは……もう不埒な真似はしない。だが良ければ傷付けた責任を取らせてくれ。是非とも妃になって欲しい」


縄に繋がれたまま皇子が私に謝罪をしてくる。


「この場で何を言う! 貴様ごとき……「ライドやめて! 余計にややこしくなるわ」……に……」


はい?責任を取る必要は全くございません!また変な勘違いをして、ナルシーが発動したらいたたまれないわ。私は謙虚に生きるのよ。もう!ライドも短気だし余計な事を言わないでよ。本当に要らぬ親切よ!


「皇子からの謝罪は確かに受け取りました。私個人の事ですので、今回の事はこれにて手打ちにしましょう。但し皇子に責任を取って貰う必要はございません。責任で将来を決めたくも有りません。この国は先ず聖獣に対する正しい知識を広めて下さい」


帝国には魔力持ちがかなりいるそうよ。セリー曰く皇帝と皇太子位の魔力ならば、魔力の質が上がれば契約する聖獣もいるかもしれないが、質が悪すぎ寄り付かないとのこと。やはり帝国自体が聖獣を信じていないし、聖獣と共に在りたいとも考えていない。そんな国に聖獣たちが寄り付きたいはずがない。しかし皇家は叶う事ならば聖獣と共に在りたいと言う。ならば人間が変わらなければならない。遥か昔はどの国も聖獣と共に暮らしていたのよ。その頃に戻れば良いことなの。


皇帝は先ずは自分たちが聖獣についてを学び、国民に広げてゆきたいと言う。私は先ずは歪められて伝えられてるセリーの人魚の話の訂正を願った。これを冊子にして配分して貰う。絵本等も良いわね。教育項目にもキチンと真実を埋め込む事。これらを約束し、私たちは前皇帝との面会をする事にしました。


***


前皇帝の住む離宮へは昼過ぎに向かう事になっています。足腰が弱って来ている為にベッドに臥せてる事も多く、起床が昼近い事が多いからよ。その間聖獣たちは、バラけて帝国内を視察してくるとの事。帝国内にいないはずの聖獣の気配を感じるそうよ。もしかしたら国が知らないだけで、国内で契約してる人がいるのかもしれない。タルバの様に囚われていたら悲しいから、叶うならば幸せな聖獣にであいたい。


残った私とライドとセリーは、皇子の案内で昼食をご馳走になることになりました。全てが皇子の自腹で、反省の意を込めたとの事です。


「聖女様。先程は責任などとの言い方をしてしまい、気分を害されたなら申し訳ございません。しかし私は本気なのです。貴女の雷神の様な気高さに惚れました。私たちを包んだあの見事な結界! 雷を纏う貴女も素晴らしかったが、私たちに雷を放つ貴女はまるで鬼神の如き素晴らしさでした」


鬼神?これはほめれているの?


「是非あの時の感覚をもう一度! ビリビリと痺れる感覚が、今だに忘れられないのです! 私にお怒りなら何度でも雷の裁きを下さい! 体が疼いてどうにもならないのです! 」


不味いわ……やはりやり過ぎたの? だってあの時はキレて自分が制御出来なかったのよ。でも変な方向に目覚めさせてしまっあのかしら?どうしましょう。


「お昼を案内してくれるのですよね? ならばさっさと案内して下さい。リョウは愛でるべきなのです。恥ずかしがるのを愛でるのがなおよいのです。サドでは有りませんので、貴方の変な趣味を押し付けないで下さい」


ライド……あなたも同類よ?


「はっ! 隣国ではかなり悪どい真似をしていたではないか。リョウにバラしても良いのか? だが帝国では効かんぞ。恋人でもない貴様に言われる筋合いはない! 邪魔物はいなくても構わんぞ。私は聖女様たるリョウにご馳走をしたいのだ! 」


ライド?あなたはどんな悪どい真似をしていたの?しかしどちらも嫌かも……


「ほら! リョウも呆れているわよ。兎に角お昼ににきましょう。そこでお話しをしましょうよ。悪いけどリョウの皇子へのイメージは、現在史上最低だと思うわよ。人魚と勘違いしたとしても、酷い事をした自覚は有るのよね? ならば先ずは挽回しなさいな。お昼は聖女様お勧めなのよね? 楽しみにしているわ」


セリーのおかげで漸くお店に到着しました。しかし来て見てビックリ!何と和風庭園まで有る離れの料亭の様な家に通されたのです。


「帝国は鎖国状態なのよね? この世界にも和風文化が有るの? 私のいた日本にそっくりよ」


「祖父の父の従兄にあたる方が、料理好きで各国を身分を隠し放浪していました。その際に色々学んで来たのです。何でも少し前の聖女様に料理の腕を気に入られ、そちらの国の城に招かれ色々と郷土料理を再現したそうですよ。このお店ではその時のワショクと言う品を出しています。色々な品を少しづつ楽しむそうです。昼はショウカ弁当のみですが、かなり評判なのです。祖父との話が纏まれば、夕食のカイセキにもご招待しますよ」


あら?皇子もまともに話せるのね。さすがは皇子ね。しかしそれは楽しみだわ。部屋は掘炬燵式になっているから足も楽チン。座布団まであり卓上にはチ茶菓子が供されている。


「ライドは知ってたの?国でワショク何て見た事がかいわよ? 」


「すみません。全く知りません……」


このお茶も渋くて美味しいわ。お茶うけはミニ大福とオカキよ!あー、苺大福が食べたいわー。


「帝国人としての身分を隠していたそうですから、王家の方々も知らないのでしょう。しかも聖女様が亡くなった後は着の身着のまま追い出されたそうです。聖女様とはかなり年も離れていて、孫の様に思っていたそうですが、王が焼きもちを妬いていたそうですよ」


王族アホですか?折角のワショクを根付かせなさいよ。まあ次回の聖女も日本人とは限らないから、気にもしなかったのでしょうね。


「でもワショクは本当に楽しみよ。なんちゃって和食でも嬉しい。皇子ありがとう」


「喜んで戴けて何よりです。やはり同郷だったのですね。黒髪に黒目なので、もしやと思ったのです。私はカイと申します。リョウとお呼びしても宜しいでしょうか? 」


「もちろんどうぞ。リョウと呼んで。カイも宜しくね。話し方も普通にしてよ。出会いが有れでその話し方は、正直違和感が半端ないわ」


あっ!お弁当が来たみたい。これはまさかお醤油の香り?お刺身もあるの?ダンジョンでの戦利品にもあったけれど、板さんが捌いたならば別物よね。楽しみー。ワクワク。


「「食い気……」」


*****


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