お城3日目・マナーはチョロい。チートは内緒。
今日も朝からエステ隊が突入してきます。どうやらこれは元の世界にもあった、ブライダルエステみたいなことみたい。つまりお披露目会までは毎日されるの。まあ羞恥心が半端ないけれど、お肌は艶々になるし体調も良い感じ。期間限定だから我慢しましょう。しかし私は王子とは結婚しません。さあアニーさん押せ押せよ。あんなまだ子供みたいな子に手を出すなんて酷すぎる!召喚された歴代の聖女も皆十二才くらいだと聞いたし、その聖女に手を出すこの世界の王族たちは、つまり皆ロリコンなのよ!そんなに結婚が早いのならば、たしかに私はオバさんかもしれない。はらば良し!もしもの時はこれで攻めよう。アニーさんはエロ王子をゲットよ。王子もキチンと責任を取りなさいな。
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朝起きてエステを済ませ朝ごはん食べる。午前中は座学でこの国の歴史とか近隣諸国の歴史などを学ぶ。正直学生には暗記なんてチョロいでしょう。私はこれでも頭は良いし運動も得意なつもり。学校では特待生だったの。だって幾ら沢山の保険金と賠償金があったとしても、私はお金を無駄には使いたくなかったの。だって両親の命がお金に換算出来るわけかいでしょ?私はもっとお金を貯めて、将来的には両親の名前を冠した基金とかを始めたいと思っていたの。私には両親の保険金に加害者からの賠償金が有ったけど、これらがなくて将来が変わってしまう被害者も多と知ったの。子供は進学を断念するとかよ。弁護士さんが私に加害者の人たちは良心的だと話してくれた。死人に口なしだからと責任転嫁をし、賠償金を支払わない加害者も多いそう。だから許せとは言えないけれど、多額の賠償金は加害者の方々からの気持ちだから、拒否せず受け取ってあげて下さいと言われてしまった。この後加害者家族が謝罪に来たの。
でも許すも許さないもないわよね?許しても許さなくても両親は生き返りはしない。失った悲しみは私だけのもの。だからこそ加害者の家族もこれからを大切に生きて欲しい。事故を忘れず二度と起こさぬ様にして欲しい。私の将来を心配して養子にしてくれるとまで言ったこの人たちなら大丈夫でしょう。私も両親の分まで強く生きて行くから、あなた方も真摯に生きて欲しい。そう約束したの。
しかしこの世界の神は勝手よね。柵がないってどういうことですか?私だって急にいなくなれば、心配する人くらいいるのよ?もし私が自殺したとか思われてしまったなら、誠意を見せてくれた加害者の家族にだって迷惑がかかるかもしれない。自分たちが追い詰めたと勘違いするかも知れないわよね?喜ぶのは薄情な親戚だけでしょう。
私の元の世界での扱いってどうなっているの?定番だと失踪になるのよね?後は元から存在しないパターンかしら?選べるならやはり後者よね。とにかく神様に会わせて貰いましょう。聖女の召喚は神の神託によるそうなの。この世界には本当に神様が存在していて、その信託は重大な意味を持つそうよ。ならば絶対に会わなくては駄目です!
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お昼を食べて午後はダンスやテーブルマナーや礼儀作法を学ぶ。テーブルマナーは学校の授業で、ホテルのレストランでの実地で習ったわ。礼儀作法はベルバラの演劇の中のとほぼ同じだったので楽勝よ。ダンスはさすがに初めてだったけれど、基本のステップとかはたしか体育で習ったはず。一度聞いたら思い出したのか踊れました。てな訳で数日で勉強は終了してしまいました。
明日からは魔法の授業をメインにするそうです。これはめちゃ嬉しい。午前中に授業を受ければ午後は自由にして良いそうで、図書館も有るので毎日最低本を一冊読むことにする。お昼ご飯の前に王子と護衛のルードとダンスを一曲づつ踊る。その後は自由なので、その後をどうするかと考えていたら、あっという間にダンスの時間になっていました。今日は夕食前まで踊りの練習だそうで、王子が来るまではルードと踊る。しかしルードのニコニコ似非笑いが気持ち悪くてついしかめっ面をしていたら、笑顔を張り付けろとダンス講師に叱咤されてしまう。それを見ながらニヤリと、何かを含む感じの笑みで微笑むルード。私はそれをそ知らぬふりをして、靴先でつま先をギュッと踏んでみる。涙目のルードににっこりと微笑んでみせる。オホホざまああそばせ。私は女優よ!何てね。曲が終わる頃王子が到着していた様で、壁に寄り掛かり私のダンスを見ている王子と目が合う。ルードから王子へと私の手が渡された。
王子が私の手を取り少し持ち上げキスをする。え~何してくれちゃってるの?こんなの作法にないわよね?胡散臭げに顔を上げると、キンキラ似非スマイル爆発中。ヤバい。気持ちが悪すぎて鳥肌が……はいはい。解りましたよ。ではでは負けじと私もチョロいんを演じきりましょう。照れた振りして俯き瞬き数回。涙を貯めて上目使いで王子を見上げる。見上げる?あら?そう言えば王子の目線がかなり高いんですけど?私がローヒールなことを差し引いても可笑しい。ほぼ身長は同じだった筈。もしかしてシークレットブーツって奴?私も背が高いのは多少コンプレックスだったけど、普通に自分よりも背の高い男性はいたからね。ちなみに彼も私よりも高かったわ。私を川縁の柵に座らせての頬にチューだからね。そのまま首に腕を回して抱っこでクルクル。今思うと青春していたよね。頬チューでお別れ……唇に許してあげれば良かったわね。本当にごめんね。
でも男性には背の問題は辛いのよね。あまり虐めるのも可哀想だし、言葉にするのは止めておきましょう。でも王子は女の敵だから、程々程度に弄ってておきましょうか。
考え事をしていたらウルウル所ではなくなってしまう。涙が垂れぬ様に急いで俯き再度瞬きを数回。顔を上げ手を引き先を促す王子を見つめ、首をちょこんと傾げてニッコリスマイル。私を引く手をキュッと握り恥ずかしそうに外し元に置き直す。
お前は何をしてるの?なんて言わないで。これは劇の中での王妃様役の演技よ。男性を見上げる時はウルウル眼で首をちょこんと傾げる。エスコートの手を貴方と踊るのに緊張してつい握りしめてしまったの。でも恥ずかしくてついつい外してしまったわ。マナー違反をしてゴメンなさいね。元に戻したから許してねって感じの演技ね。あら?王子がプルプル震えているけど、もしかして臭すぎたのかしら?一応可愛子ちゃんメイクにフリフリドレスだから、臭い演技でもいけると思ったのだけどバレたの?気配を感じて振り向いたら、ルードがお腹抱えて蹲っていた。もしかしなくても笑っている?お腹抱える程可笑しいわけ?まったく失礼な人よね。まあ失敗でも構わないし、腹黒は今回まったく関係はない。さあ王子にはこのままブリブリでいくわよー。
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