表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/73

離島へ行こう2日目・温泉でお仕置き?

さあ出発進行しまーす。今回も新居の鍵なギルマスに預けての出発となります。まあ前回と違い今回は貴族街にお家が移動したため、滅多な事では他人に侵入されたりはしません。ただし管理が必要なので置いてゆけと、なぜかギルマスに真剣に言われたのよ。敷地は広いし家自体も広いから、たしかに掃除等は必要かもしれない。でも戻ってきてから魔法でちゃちゃっと済ませるわよ?


「いや。贈り物の搬入だ。既にギルドの一室を埋め尽くしとる。邪魔なので空き部屋に運んでおくから、帰宅したら整理してくれ。それと警備の者の都合だな。贈り物は悪いが先に中身の確認をしとるぞ。危険物も心配だからな。保存の効かない品はギルドのインベントリに入れておく。戻ったら持ち帰ってくれ」


警備は結界をはるから要らないと言っているのに……却って警備の人たちが結界に阻まれない様にするのが面倒なの!まあ王太子であるライドがいるから仕方がないそうだけど、ならはライドは返品したいです。大人しくお城で仕事をしなさい。


「贈り物って何に対しての贈り物なの? 」


「ドラゴン討伐と巡回医療のだ。ミントの礼も昨晩来ていたな。全て一覧にしてあるし、代理で定型のお礼状は送り済みだ。個別には後からで大丈夫。皆リョウが多忙なのは知っとるからな」


多忙って……すべてギルマスのせいなんですけど!


「まあそうむくれるな。今回はライドに任せて楽しんで来い。ライドは中々に強くて恰好良いぞ。バッチリ惚れてこい。特に水上コテージはムード満点だ。ライドが滑らなきゃ、チョロインのリョウは即ご懐妊だろう。それはそれでかまわまいぞ。城を挙げての結婚式だ。町中で祝ってやる」


「チョロインって何よ! 結婚前にふしだらな! お嫁に行けなくなるじゃないの! 」


「ふしだらってなぁ……」


「リョウ。そろそろ出るぞ。皆が待っている。暗くなる前に海岸線まで到着したいからな。ライドが馬を駆るそうだから、リョウはライドと相乗りしろ。聖獣たちは鳥の姿で飛んでゆく。早ければ昼過ぎに着くから、お昼はそれからだ」


えー。ライドと相乗りなの?


「不服そうだな? 歩み寄るんだろ? この世界では結婚前に子が出来るのはふしだらではない。この世界は子が少ないからな。皆早々に励む。リョウもライドに慣れろ。余り嫌々するとヤンデレとやらが発動するぞ」


えー。すでに発動している気配がビンビンですが?


「最後までは気持ちが通じ合うまではさせん。まあされても心配はないぞ。子を産めば更にモテる。この世界での子沢山は女のスティタスだ。父親は誰でも構わん。産めば産む程求婚者は増える。一夫多妻もだが、一妻多夫も可能だ。だから旦那の嫉妬心でヤンデレとやらが増えるんだ。だからふしだらは心配ない。任せて安心しろ」


なぜ男性側ばかりがヤンデレになるのよ!あ……少子化だから子だくさんの女性がモテる。我が子の誕生は嬉しいけれど、妻がモテモテになるのが複雑なのかしら?


「ラスは無責任なことを言わないで! まったく安心できません! 皆はライドの味方なの? 」


「リョウ? 私たちは依怙贔屓はしてませんよ。リョウは多分元の世界でも、恋愛にはかなり奥手だったのでは? 余りに無防備過ぎて皆心配なのですよ。この世界はかなり性に開けていますので、歩み寄るには慣れが必要ですからね」


正直慣れたくはないのですが……


「リョウにベタ惚れし過ぎでかなりネジが弛んでいますけど、ライドはこの世界での標準的な男性です。リョウも恋を楽しみなさい。このモテ期に楽しまねば行き遅れます! ただでさえスタートダッシュが遅いのです。皆より年嵩なのですよ! 」


ラスにレイン?心配をしてくれているのは何となく理解出来るます。しかしめちゃ貶められてる気がするのは何故?つまりライドと恋愛シミュレーションをしろと言う事よね。しかし本当にライドが標準なの?クリスには妙な性癖があったみたいだけど、ヤンデレ傾向はなかったわよね?私はできれば違う方を希望します!


それにすでに神様のバーチャルリアリティ体験で、この世界の告白デートからお墓に入るまでを身をもって体験したわよ!更にリアでまでする必要が有るの?しかも体験相手はライドだったのよ。まさか本当に好感度MAXのヤンデレ予備軍だとは……


「そう言えば神様に、バーチャル体験とやらをされたんですよね? お相手は何方だったのですか? 」


レイン!私の心を読んでいるの?ならば誰かもわかるはずよね!


「さあ! さっさと出発しましょう。お昼食べる時間がなくなるわ。さあ行くわよ」


「「やはりライド(です)か……」」


***


草原を吹き抜ける風が心地よい。爽やかな遠駆け日和ね。ライドってば流石に元騎士団長よね。手綱を握る姿もス・テ・キ。少し肌寒くて震える私を、マントにくるんで抱きしめてくれる。お尻が痛くなるからと、時折掌をを差し込みお尻の位置を変えてくれる。こんな然り気無い気遣いが出来るあなたになら、私は嬉しくてボディタッチ位は許してしまうわ。本気で惚れてしまいそうよ。


なーんて事になることを、きっと皆様は期待していた訳よね?


しかし私は全くそんな気分にはなれません。うっ、気持ちが悪い……吐き気程ではないけれど、胸がムカムカしてしかたがないの。しかも振動でお尻が痛くて……なんだかヒリヒリするし、もしかしたら擦りむけているかもしれない。魔法で癒したいけれど、その気力すら奪われてしまっている。


この草原を突っ切ることが一番の近道らしいけど、このままでは本当に死んでしまいそう。同じ揺れるのならば、モフモフなラスの背中に乗せて欲しい。綺麗な毛並みのレインの背に乗せて貰い空をとびたい。しかし私の主張は、全てライドに却下されてしまいました。


情けないけれど完全に酔いグッタリの私。だってさすがに馬になんて乗ったことはありません。学園には乗馬部もあり興味もあったけど、私は演劇一筋だったのよ。


私はすでに思考すら奪われヘタっている。最初は進行方向を向き背中にライドを感じていたけど、現在は途中で引っくり返され、ライドの胸板に顔を埋めてへばっている。これは一生の不覚よ。治療魔法を使いたいけど、思う様に体も動かず頭も働かない……


「ライド止めて……みず……お水飲ませて……」


乾く喉を潤したくてなんとか口を開く。


「この辺りには魔物も出ます。生憎ですが、馬を止めることができません。どうしても欲しいですか? 」


「ならいい……」


私は諦めて目を瞑る。


「しかたがないですね」


走る速度が少し落ち、ライドがブツブツと呟いている。暫くすると喉元に冷たい水が流れ込んで来て驚く。美味しくてもっとと吸い口にむしゃぶりつくと、何度か離れ繰り返し水が流し込まれてきた。口内を這う冷たい感触が気持ち良く、私はそのまま崩れ込む様に眠りに落ちた。


***


私たちはギルマスに別れを告げ、馬が用意されているという場所に向かう。私がラスとレインと到着すると、小鳥姿のタルバとモノクが肩に乗って来る。ライドが馬への乗り方を教えてくれるというので話を聞く。え?馬での二人乗りは、私が後ろに乗るのではないの?初心者は落ちたら困るので前なのですか?なんだか二人乗りをしたくないのですが?もちろん駄目?はいはいわかりましたよ!


ではさあ出発!という段階に、おばちゃまたちが雪崩れ込んで来ました。これはまた懐かしいパターンよね。お城から脱出した時も、おばちゃまたちが現れて色々教えてくれたの。お弁当まで差し入れてくれたわ。


「おはよう! 間に合って良かったよ。まずはこれ!

腹が減ってはラブラブ出来ずだ。体力回復のスタミナ弁当だよ。後情報ね。海辺に温泉が湧いてる所が有る。これが地図だ。その温泉水は体力と魔力回復効果が有る上に飲用も可能だ。後鎮静作用も有るからライドが暴走したり収まらない時は温泉に叩き落としな。ライ坊も無理強いは駄目だよ! 」


「おばちゃまたち! わざわざありがとう。何だか皆に囲い込まれていて、正直ちょっと怖かったの。本当に嬉しい……」


「そうだよ!無理強いはダメだ! 」


『ライドってば流石に元騎士団長ね。手綱を握る姿がス・テ・キ。マントにくるんで抱きしめてくれるなんて紳士よね。時折掌をを差し込みお尻の位置を変えてくれる。こんな然り気ないボディタッチ位なら許せちゃう。気遣いが嬉しくて惚れちゃいそうよ。優しくしてくれるなら私を貴方にあ・げ・る……』


「こんな感じで自分から思わせ言わせるんだよ! ライ坊は最大のヘタレ挽回のチャンスなんだ。少しは頑張って来い! 」


私の心配ではないのですね……


「兎に角楽しんできな。リョウも冒険者登録はしたけれど、未だに冒険者らしい事はしていないだろ? ダンジョンで冒険者デビューだ。ライドはしっかり守るんだよ。聖獣様もいるけれど、ダンジョン内では何が起こるか解らないからね。気を付けるんだよ」


「では二人の婚前旅行への旅立ちを祝して! 」


ばんざーい。ばんざーい。ばんざーい。


「「「行ってらっしゃーい」」」


万歳三唱で送り出されました。茫然自失な私……


***


起きたら既に日が落ちていた様です。どうやら私は馬上で気を失っていたみたい。今晩は海辺で宿泊の予定だったけれど、荷物は私が殆ど持ってるのよね。なのに私はベッドに寝ている。皆はどうしたの?ベッドから降り部屋を見渡すが、やはりこの場には誰もいない。見渡した感じでは、ここは漁師小屋みたいな感じ。耳を澄ますと波の音が聞こえて来る。外に出ると暗闇に黒い水面の一面の海が視界に開ける。足元には延々とのびる砂浜。星と月の明かりが意外にも明るい。きっと空気が綺麗だから、たくさんの星の瞬きが見えるのね。範囲に検索をかけると、五十メートル位先に人が一人いる。多分ライドね。他はレインの転移で何処かへ行ったのかしら?


海辺の砂浜を満天の星空を眺めながら歩く。星座にはあまり詳しくはないけれど、夜空を見渡すけど私の知る星座は見当たらない。月の満ち欠けも違っていて、今晩は綺麗な三日月が輝いていた。此方の世界に来る前は綺麗な満月だったはず。もうあれから一月も経つのよ。ここがもとの世界ならば、多少は欠けていても、そろそろまた満月に近くなっている筈、やはり元の世界とは違うのね。理解してはいたけれど、やはり多少はセンチメンタルになるわね……


あら?検索に青いマークが出ているけどこれって何かしら?近付くと湯気が沢山充満している。あー!これがおばちゃまたちが言っていた温泉なのね。では早速入りましょう。馬上の疲れも取れそうよ。一応用心の為にも、スクール水着を着ておきましょう。スマポンよろしくね!


「見ちゃいやーん。スクスイだからね」


「…………」


他に誰もいなくても言わされるのが辛いわ……スクール水着だから見ちゃダメなの?スクール水着ではなくても覗きは駄目よ。私は温度を確かめ足先からそっと入る。ふぅ……温かい……満天の星空を見ているとセンチメンタルな気分になるわね。月日が経つのは早いわよね……


「探しましたよ。此方にいたのですね。酔いは収まりましたか? 聖獣様たちは先に海を超え下見に行きました。明日朝戻ります」


ラッライド!いきなり出てこないで!水着を着ていて良かったわ……


「寝ちゃってごめんなさい。荷物は殆ど私が持っているのに、ご飯は大丈夫だったの? 」


「聖獣様たちは食べなくても大丈夫だと。私は少しは常備しています。心配しないで下さいね。ところで私も、温泉にお邪魔しても宜しいですか? 」


私は水着着ているから良いけど……って!もう脱いでいるし……まさか露天風呂で変な事はしないわよね。でも少し離れていましょう。


「遠乗りは腰にくるんですよ。初心者はお尻の皮が剥けてしまったりもします。リョウは大丈夫でしたか? しかし温泉は良いですね。疲れが取れます」


あら?私ってば少し寝ていたの?いくら疲れていたとしても、お風呂で寝てしまうなんて危険よね。沈まなくて良かったわ。でもライドは何処?先に上がったの?


「リョウ? 私の話を聞いていませんね。いくら疲れていたとはいえ、まさかこの状態で寝てしまうとは……」


後ろから声?振り向いた途端、横から唇を塞がれてしまう。なっ!いきなり何をするのよ!しかもなぜ私を膝に乗せているの?後ろから首筋を舐めないで!思わずライドを睨み付けてしまう。


「可愛らしい抵抗ですね。男と裸で二人きりの上、まさか居眠りをされるとは……それだけ私を信用して下さっているのですか? しかし無防備すぎです。私でなければ食べられていますよ。この世界の常識を甘く見すぎです。これはちょっとお仕置きが必要ですね」


お仕置きって止めてよ!水着を着ているから裸でもないわよ!裸はライドよ!いやー!背中からガッチリとホールドされていて逃げられない。


いやー!どこさわっているのよ!揉むな!つつくな!キスしないでー!んぅぅー!!


「はぁ……はぁ……はあー」


くっ苦しかった……


「少しは反省をされましたか? 例え知り合いでも安心しては駄目です。確かにリョウは神の加護も有り魔法も凄いです。でもこうされたなら逃げらませんよね? 隣国で手込めにされかけたそうではないですか。自身の安全が第一です。解りましたか? 」


解りました!確かに私は無防備でした!だからって……ライドのバカ!実地で教える必要はありません!それに一番危険なのはあなたなのでは?私は危険人物に近寄りたくはありません。暫くは口をききません!


「その顔は反省をしていませんね……ならば泣き喚いても最後までしますよ? もちろん避妊もしません。他の奴に無理矢理奪われるのならば、相手が私でも構わないでしょう? 」


「構います! ごめんなさい! 心配してくれてありがとう! 以降は絶対に気を付けます! だから裸の体を密着させるのは止めて! 胸を鷲掴みにして拘束しないで!やあっ!掌を動かさないでよ! もう許して! 腕を離して! お願いします! 」


腕が弛んだ隙に私は脱兎の如く逃げ出す。ライドってば手慣れすぎ!さすがに来るもの拒まず去る者追わずの百戦錬磨よね。スクール水着が殆ど役に立たなかったわ。ベッドに潜り込んでからも、ブルブルと震える体を己で抱きしめながら、私はそのまま眠っていた。


朝起きてディープなモーニングチューが待つ事も知らずに……


*****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ