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婚約破棄までの1週間はテンプレ三昧。私も幸せになりたい!in 異世界。  作者: 桜鶯
【城下町編。フロックス国境でダービー開始】
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城下町から1週間と6日目・朝。

つっ疲れたわ……怒濤の晩餐会が終了し、翌日から日中は聖獣たちと走り回りました。なのに夕方からは毎日がパーティー三昧。ルードは砦での処理が有るからと晩餐会の翌日には城を去り、私は現在昼間は聖女として各地をどさ回り中。夜はパーティーに出たり……夜会に出たり……晩餐会に出たり……舞踏会に……って!結局はどれも同じパーティーよ!


つまりはパーティー三昧なのよ……


今回の件を周知させるためだとはいえ、夜に三件も会場を回る時も有るのよ。この国の端から端まで、瞬間移動でまわれる様になりそうよ。


***


クーデターは無事に終わり、王には新しく王弟が就任しました。クーデターを計画していた王弟派は古くからの貴族ばかり。伝統を重んじる所が有り行き過ぎる所も有るけれど、基本的には国を愛し王を盛り立て支えていたの。だからこそ庶民を蔑ろにする王が許せなかった。その信念の賜物か、政権交代後は早かった。兄王にへりくだり悪事に手を染めていた貴族を全て断罪。特に人身売買に関わっていた貴族たちは、関わった本人と売買に手を貸した者は全て死罪。親族は国外追放。親族までとは厳しい感じもしたけど、人身売買は重罪であり、本来ならば一族郎党処刑が当たり前とのこと。しかし今回は王も関わっていた事も有りの温情。赤子も国外追放は免れない。しかし例え免れたとしても、この国で親もなく暮らしてゆくのは辛いでしょう。世界の理は変えられないの。だから私には何も言えないわ。犯罪で得た財産は没収だけど、通常の財産は持ち出し可能とのことだから、家族で頑張れば生きてゆけると信じたい……


国のトップは翌日には全てが入れ替わり、新王に王弟のブランがたち、息子のフリードが立太子しました。以下は古参の貴族が顔を並べ留こととなる。しかし古い頭ばかりでは国は先々立ち行かなくなるとの考えにより、やる気の有る若者たちをかなり雇用した。さらには優秀な平民の人たちを、近隣諸国に留学させ育てるそうよ。これはフリード王太子の、側近育成の為でも有るとのこと。


やはり国を憂いてた者たちばかりのため、新体制もあっという間に整備され機能し始めている。私は聖女として聖獣たちと町や村を周り、巡回医療や炊き出しをしたの。荒れた田畑には魔法をかけ甦らせ、育てる苗を購入する余裕のない家にはサツマイモの苗を配る。サツマイモは収穫ができれば、芋から苗を作ることができる。芋は腹もちも良いし甘味にもなるため、食料としても優秀よね。さらには食料不足の町や村には物資の融通を手配するため、暫し国庫は赤字になるかもしれない。しかし国民が飢えに足掻き死に絶えてしまうならば、国は立ちゆかず滅びに向かうしかない。これらは先行投資であり、今は堪えて頑張らなくては!いわゆる必要な出費なのよね。


孤児院は特にしっかりと管理から見直されることとなり、裏で間者を育成する様な事は全面的に禁止された。やはり一番大切なことは衣食住だけど、先々子供たちが大人になり働ける場所の確保も重要よ。仕事がないから悪いことに手をだしてしまう。間者の養成をしていたのも、孤児院をでたのちに働く場所のない子供たちを狙ってのことだったの。これはフリードが、何年かけてでも必ずやり遂げると約束してくれました。


こんな感じで取り敢えず、クーデターの後始末は終了しました。晩餐会の翌日から五日目漸く巡回も終了し、パーティーへの出席の義理も果たしたと思うの。私もそろそろおいとましたいわ。だって私ってば、折角の新居に殆ど住んでいないのよ。戻ったら部屋数も増え建て替えられてるのよ?少しは新居で休ませて欲しいわ。これも全てはギルマスのせいなのよ!


何て事を考えていたら、前王の処分が決まったとの呼び出しがかかりました。これにて本当に終了よね。


***


応接室に呼び出されてゆくと、何となく見知った顔が二人ほど扉から出てきました。あれ?誰だったかしら?暫し見詰め合う私たち。レインが先を促すため、私はお辞儀をしてから扉へ向かう。


「「聖女様! 巡回医療のお手伝いに、遅れ馳せながら参上しました。是非私どもをまたお連れ下さい! 」


やだ……置き去りにしたイケメンズだったのね。ごめん。すっかり忘れていたわよ。しかし何故に今頃?今迄いったい何処にいたのよ?


聞いてビックリ!イケメンズが砦に到着したのは、ドラゴンで騒いでた時なんですって!最後の町でお好み焼きを食べたりしてのんびりし過ぎて一泊。翌日慌てて出発し、到着した時の砦はドラゴンでてんやわんや中。どうしたら良いかが解らずに、砦の中でワタワタとしていたらしい。昨日漸くルードに面会でき、聖女は此方と言われ来たそうよ。しかしルードもなぜこちらに寄越すの?すべては終了しているし、イケメンズはもう必要がありません。王宮に戻しなさいよ。


「もう全てが終わっているわよ。城に先に戻れば良いかったのに……私ももう帰るのよ」


「「私たちは聖女様の護衛も兼ねています。でしたら帰りをご一緒させて下さい! 何でも元王に無体な扱いを受けたとか。私たちが道中お慰め致します! 」


いやー。まったく必要がありません。私は瞬間移動で帰るわよ。往路の二の舞はゴメンです。しかもこのイケメンズと瞬間移動するのは嫌だわ。レインは絶対に接触を嫌がるでしょうし……チラリとレインを見るけど、フイと視線を外されてしまう。全くぶれないわよね!仕方がないわよね?久々のアクションかしら?


「ごめんなさい……お気持ちは嬉しいの。でも今は男性に触れるだけでも怖いわ。私は暫く聖獣たちと癒されたいの。お願い。優しくされると余計に辛いわ。思い出したくもない……暫く一人にして欲しいの……」


手前にいるイケメンの片手の掌を、触りたくはないけれど我慢をして触れながら、怖がり震える仕草で私の両手で包みこむ。うるうる眼を見開き上目遣いで瞳を見詰めながらほろりと涙を流す。包んだ手を自分の額にあてご免なさいと呟く。イケメンは息を飲んでいる。どうやらバッチリのようね。


私は女優よ!涙なんてホロリと流せるの!大泣きだってできるけど、この場面ではホロリよね。


……ちょっと!なに唾を飲み込んでいるの?ゴクリと喉をならさないで!さらには然り気なく腰に手を回そうとしないでよ!私もさりげなく身を捻り腕をかわして逃げる。やったわ!私の勝利よね!


「リョウは私たちが守ります。貴方たちは先に帰られては? 王に色々報告も有るのではないのですか?

この国はもう大丈夫です。まだ我々が顔も見ぬ王に、聖女も無事で元気だとお伝え下さい」


しかし何故かモタモタとしている二人。私はレインの後ろに隠れ、上着の裾を握りしめ下を向く。レイン!ナイスアシストよ!私は怯えているのよ!さあ早く帰りなさいな!


「これ以上リョウを怯えさせたいのですか? ならば私も容赦はしませんよ? 」


「「聖女様! 我々はまたお会いできる日を心待ちにしています。お心が癒されます様に。それでは失礼致します! 」」


やったわね!レイン協力をありがとー。振り替えると扉が全開でした。部屋の中の方々は、私の演技を観賞されていたらしいです。フリードがソファーから立ち上り此方へやって来て、私に手を差し出しどうぞ席へと促してくる。部屋の中の人々は年配の方々が多く、多分クーデターに参加したお偉方でしょう。私は礼を取り言葉を発します。


「初めまして。お粗末な芝居をお見せしてしまいました。皆さまどうぞお忘れ下さいませ。もちろんカーテンコールはございませんよ? 」


ニッコリと微笑み挨拶をする。肩を震わせ笑うフリードに促され着席すると、資料らしき紙の束が渡される。フリードってば、中々に貫禄がついて王太子らしくなったわよね。ブラン王もやはり王弟だけあり、王としての威厳がでているわ。やはりシブメンは素敵よね。優しさも捨てがたいし……でもフリードの父親なのよね。結婚したら同い年の息子かー。そこは少し考えてしまうわ。ううん。こういう打算がいけないのよ。愛があれば年の差に同年の息子何て気にならないわ!あら?でも結婚をしたらもしかしなくても王妃になるの?子供が産まれたりしたらフリードと、王位争いに何て担ぎ出されたらどうしましょう。ブラン王の例が有るのに!


「リョウよ。どうかしたのか? 私の顔に何か付いてるのか? もしかしたら惚れたか? ならばこのまま我が国に留まり王妃となれ。プロポーズは本気だぞ」


「おい……年寄りが色ボケをかますな! どうみても私との方が釣り合いが取れるだろう。リョウ。私も本気だぞ。是非次期王妃に。希望は望みのままに。優しさならば私も負けない。心に留めといてくれれば嬉しい」


フリードのプロポーズにポカンとする私。ごめんなさい。こんな展開初めてで私もう言葉にもなりません。部屋の中のお偉方の視線がビシバシとつき刺ささります。恥ずかしすぎて声も出ないし、顔が真っ赤になるのが自分で解るくらいよ。


バタン!扉の開く音?いえ閉まる音が響いた。


「失礼致します。砦の事務処理で遅くなりました。隣国騎士団長のルードです。今回は我が国も関与する事になり、事後説明に呼んで戴き感謝致します。どうぞ宜しくお願い致します」


ルードは室内を見渡し私の横に腰掛けてくる。勝手に座って欲しくないんですけど?後ろに控えていたレインが反対側に座る。この席何だか嫌だわー。旋毛にレインとルードの視線が突き刺さっているし、もしかしてルードは聞いていたの?視線が痛くて嫌ー。


「ご両人。そんなに聖女様を見詰めていては穴が開きますぞ。王に王太子様。ともかく話を始めましょう。これでは聖女様がお可哀想だ。若者は良いのう。ん? しかし王はちと年嵩よな。ならワシも参加OKか? わはは」


漸く話が始まりました。今のは発言者は新しい宰相様らしい。助けてくれてありがとうございます。ナイスミドルなおじ様の笑顔がナイスよ!何て考えていたら、レインに太ももをつねられました。何故?酷い。聖獣って主の煩悩まで解るの?


「リョウの考えなどバレバレです。顔に直ぐにでますからね。それより話をキチンと聞きなさい」


レイン恐るべし。隣のルードは何か思案顔。今そんなに難しい事を話しているの?今回の流れを纏めて説明しているだけ。丁度ドラゴン倒した辺りよ?


「今は考えることはありません。しっからりと話を聞いてください! 」


もう!レインの鬼ー。


*****


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