城下町から1週間と1日目・舞踏会。
連れられていかれた部屋は普通の客間。所謂逢い引き部屋って奴よね。場所を移して良いことしましょうって奴よ。そのわりには中々豪華な部屋だけど、ど真ん中に天涯つきのどでかいベッド。右奥にシースルーのシャワールーム。魂胆みえみえじゃないの。でも舞踏会の音楽が聞こえる。ホールからはそんなに離れてはいないのかしら?結構歩いた感じがしたけど……
「まさかただのナンパとか言わないでよ。さっさとモノクを出しなさい! 」
「聖獣はベッドに繋がれているぞ。ただしベッドにいるのは聖獣だけではないがな。お前に用が有るのはそのお方だ。せいぜい可愛がって貰え。ちなみにこの部屋には、魔法解除を織り込んだ結界を張っている。まあ諦めろ」
いきなり抱えあげられ、天涯つきベッドの中に放り込まれた。柔らかなシーツに体が沈む。
「いったーい! 腰を痛めたらどうするのよ! いきなり放り投げるな! 」
ん? 何よこの変態は?
こら!あんたは誰よ?何故いきなり私の上に乗りあげているの?マウントを取のが早すぎなの!しかも既に本人は裸だし、私の服を脱がせにかかっているのよ!コルセットをしなくて良い体型に今回は喜べないわ。マズい。あっと言う間に下着姿よ。コイツってば手慣れすぎ!もしかしなくても貞操の危機だわ。絶対に嫌ー!神様はどうして弾いてくれないの?ちょっと顔を近付けないで!胸を揉まないでよ!そんなところを舐めないで!パンツを返して!どうしてこの腕から抜けられられないの?やだやだ助けて!触るなー!いやぁー。
「うわっ! 何だ? 魔法は使えぬ筈だろうが! 」
ビリビリ来た!神様ありがとうー。でも遅い!
「このエロ親父離れろ! 」
頭にきたから思いっきり大事な所を蹴飛ばしてあげました。唸りながら踞る変質者。ううっ触った所がぬるぬるする。気持ちが悪い。何て事よりモノクよ!モノクは何処なの?
***
あっ。モノクがあんなところに!酷い……あれは鳥かごだわ……ベッドの端の天涯から檻が吊るされている。中には鳥かごサイズのカゴに、ぎゅうぎゅうに押し込められているモノク。私はそっと近寄り檻の中からモノクを出す。鍵は掛かっていないため、中からだしそっと抱き寄せる。トクトクと心臓の音がする。体も温かく、生きていることにホッとすす。撫でるとうっすらと目を開いた。安心していると背後からいきなり足を引っ張られてしまう。モノクが私の腕から離れ転がってゆく。
「モノク! 大丈夫!? 」
運良くベッドの上にの落ちた様で、大丈夫と小さな声で答えてくれた。
「ほう。喋る位には回復しとるのか。しかし聖獣の心配より己の心配をした方が良いのではないか? 先程のは祝福か?確かあれは害意有るものを弾くので有ろう? 私はお前に惚れたぞ? ならばこれは害意ではなく好意だ。嫌がるならば欲しがるまで責めるだけだ。それとも媚薬が良いか?一晩中孕むまで付き合うぞ」
このくされ頭のエロ親父め。
「絶対に欲しがりません! エロ親父はノーサンキュー! 欲しいのは愛する人のみ。兎も角貴方は誰? 知らぬ人に襲われる謂れはないんですけど」
「私の顔が解らんのか? 晩餐会で挨拶したであろう。この国の王だ。まさかこんな良い男を忘れるとは、聖女の美意識は変なのではないのか?
まあ良い。兎も角お前には世継ぎを産んで貰う。ドラゴンを倒す程の魔力量だ。しかも生娘らしいじゃないか。その年でとは畏れ入る。この世界では絶滅種だ。しかも聖獣付きだ。どうだ? 王妃だ。贅沢し放題だぞ」
うぇー。ナルシスト嫌ーい。しかも絶滅種って失礼ね!だれが世継ぎなんか産むか!でも何故世継ぎがいないの?しかも興味がなかったとしても、前王妃様に手を出していないのよね?しかも子を殺さなかった。先々を考えたら存在を消すより殺した方が安心だわ。殺さなかったからこそ、今晩のクーデターの計画なのだから。王の女関係はどうなっているの?今更だけど調べた方が良さそうね。
「お断りします! 私は子を産む道具では有りませんし、贅沢も必要有りません」
「では仕方がないな……」
王は私の片手を何か紐の様な物で結びベッドに繋ぐ。口に布を突っ込み、自身の体で私の体を押さえつけた。
「キスが出来ぬのは残念だが、先の楽しみにしておこう。しかし安心して抱ける魔力量の女は久し振りだ。壊す心配もない。悪いが暫くは離せんぞ。ん?
お前は邪魔だ! あっちへ行け! まあ人型にもなれん聖獣は、指を加えて見とれ! 」
モノク!もしかして助けてくれようとしたの?王に突き飛ばされるモノク。助けたいけど動けない……
***
「お前はこちらだ」
体を押さえ付けられ、首筋から下へと這い回る王の掌と熱い息が気持ちが悪い。掌が下腹部に近付きM字開脚された中心に熱い息がかかる。指が擦る度に背中に悪寒が走り抜ける。空いた左手で頭を叩くがびくともしない。
「やだっ! 止めてよ! 私が嫌なら害意なの! 神様ってば! レイン!ラス! タルバー! 」
あ!シスルの国の騎士団総団長に貰った剣があるわよ!剣は魔法ではないわ!私が剣を呼び出し左手に構えると、王は慌てて後退し尻餅をついた。
漸く口から布を吐き出すと、モノクが王の足に噛みついている。王が足を振り回し始めた。
「モノクっ! 」
王に振り払われモノクは私の足元に転がった。
「リョウごめん。唇までは無理……」
え?やだ!何が無理なの?えっ?大事な所を舐められた?舌先押し込まないで!やぁん。モノクよね?なぜなめるの。もしかして体液摂取なの?でも契約をしていなければ、また歪んでしまうのではないの?
「コイツは私の邪魔をして、なに羨ましい事をしていやがるんだ! 離れろ! 」
王よ。あなたは何を言っているのよ!
床に放り投げられるモノク。しかしモノクは床に転げ落ちる直前に、むくむくと大きくなってゆく。
えー?モノクが人型になりました!しかも凄い美女です。いや美青年ね。シスルも中性的だけど、もう少し美人系にした感じ。神様に近いかも。
「リョウ……舐めてつついてごめんね。取り敢えずシーツか何かにくるまっていてくれる? 助け呼ぶと多分人が雪崩れ込んで来ると思う」
モノクは私の腕の拘束を外し、ビックリして腰を抜かしている王の手足を拘束する。
「聖獣たちよ! 探している主はここだ! 内からは魔法解除を織り込んだ結界を破れない。外から頼む」
何これ念話的なもの?言葉が直接脳内に響いている。
数分もせずドカンと物凄い爆音と共に、部屋の扉がぶっ飛んでゆく。モノクの言った通り、怒濤の様な人々が流れ込んで来る。
室内の惨状を呆然と眺める人々。シーツにくるまる私を見て、フリードとブランが青ざめて呟く。
「「馬鹿王にヤられ「てないから! 」……」」
私はルードに隣室につれて行かれ、クリーンの魔法で綺麗にし新しい服に着替えた。シスルが色々登録してくれていたから助かったわ。このスマポンってホントに魔法少女のアイテムよね。着替えると髪のセットから下着まで全てチェンジしてくれるのよ。まだハズレはないけれど、ツインテールとかにされたら恐ろしいわね。ちなみに今日のセーラーの時は、ポニーテールにハンカチリボンだったの。いったい何時の流行りなのよ!
***
兎に角助かった……もう駄目かと思ったわ。安心したら腰が抜けてしまったみたい。何とかソファーに座りレインに詳細を話す。しかしビックリよ。
私のいない間にクーデターは終了していました。現王には王弟のブラン。王太子にはフリード。雪崩れ込んで来たのは、城中を皆で私と元王を探していたから。
ふーん。総出で探していたのに、モノクが呼ぶまで気付かなかったの?そう言えばあの魔術師は捕まえたの?アイツってそんなに凄い魔術師なの?
「既に拘束し魔力封じの腕輪を嵌めました。まあ雑魚では有りませんが、大した魔術師ではないですよ」
「ならば何故その大した事のない魔術師の結界が見破れなかったのよ。神様は弾いてくれないし、ヤられちゃうかと思ったわよ」
「…………」
「ねえ! その沈黙は何? 何か隠しているの? 」
「すみません。結界のある部屋は解ってたので、王のいぬ間に全てを済ませてしまおうと思ったのです。その方が余計な血を流さずに済みますからね。まさか王がリョウを手込めにしようとするとは思いませんでした。聖獣を手に入れるために丸めこもうとするくらいだと……王は不能だと思われていましたので」
そう!それよ!魔力量がどうとか、壊さず安心して抱ける魔力量とか言っていた。暫くは離せんぞって怖いっ!やはり王家は絶倫なのよ!悪いけどイヤ!
「壊さず抱けるっていいかたがなんだか怖いわ。つまり魔力が少ないと壊れるの? でも前王妃様も魔力は多いのよね? 聖獣と契約出来たんだから」
「後程本人に問いただしましょう。そう言えばモノクと本契約をしたのですね。本契約をすればリョウの魔力が巡り正常に戻れます。既に仮契約をされていたので、もしもの時はモノクが助けると思ってもいたのです。しかし手込めにされず良かったです」
手込めって何度も言わないでよ。気色悪いのを思い出すわ。でもレインは心配してくれたのよね。
「仮契約は何時したのかしら? 契約は真名の交換と体液交換よね? 」
「仮契約は真名の交換と体液摂取ですが、本契約は体液を本人から直接貰い送り込む事が必要です。心当たりはないのですか? 」
「たしかに真名は私が教えたけれど、モノクのは聞いていないわよ? 体液摂取は私の血の滲みたタオルから? 本契約の体液交換は……」
いやー。もしかしなくてもあれよね?だから唇まで届かなくてごめんと謝られたのね……さらに送り込むのも必要だからつついたのね……
「リョウ? どうかしましたか? 」
さすがに緊急時だし怒れないわよ……
「もう何も聞かないで。モノクに聞くわ」
緊急事態とはいえ……
モノクも謝ったけれど……
穴が有ったら埋まりたいわ……
*****