お城2.5日目。
さあさあヒロイン探しに行きましょう。ちょいと変なフラグ立てた気もするけど気にしたら負けよ。王子に何て慣れたくもない。アッカンベーよ。しかしチョロいわ。チョロすぎる。王子は女をバカにし過ぎよ。笑ってしまいそうで、マズイと俯きながら掌で口を抑える。メイドさんたちが震えてお可哀想にとか言っています。笑ってるのに何か悪いわね。チラリと王子の様子を見ると、何時の間にか来た扉のイケメン騎士と喋っている。剣呑な目でイケメンを見ていたら気付かれた?私の顔を見てニヤリと笑った!凄い腹黒そうな笑顔。こういう手合いは王子みたいのよりタチが悪いんのよね。うわぁ。こっちへ来るわよ。もしかしてコイツがルードなの?めちゃ嫌すぎるわ。
「落ち着かれましたか聖女様? 私が貴女様の護衛兼案内役のルードです。宜しくお願い致します。失礼ですが聖女様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか? 」
「ぐすん。有り難う。私はす……リョウよ。聖女様ではなくリョウと呼んで。私もルードさんと呼ぶわ。ではルードさん、宜しくお願いしますね。学ぶ事は大好きです。沢山の知識を与えて下さい」
危ないっ。本名言う所だったわ。名前は知らせるなってこれもテンプレよね。この意味不明な腕輪も有るし、用心に越した事はないわよね。因みにリョウはアダ名で本名はすずよ。漢字を皆がリョウって呼び間違うから、アダ名になったんだよね。このあだ名だから余計に女の子にもモテたんのよね。リョウ様ー!とか言われていたわ。
ソファーから立ちあがりルードの手を取り礼をする。ベルバラ式だけどドレスでの立ち回りもしているから様にはなってるはずよね?
「では王子様、御前失礼致しますね。勉強は頑張ります。でも閨は嫌です。私は可愛げが無いので多分王子様には慣れませんわ。でも可愛いお嬢様だと朝まで喘ぐんですか? 私は朝まで何て怖いです。男性はそんなに時間がかかるものなのですか? もっと早く終わらないの? 早いとダメなの? でも早くても遅くても良くないのでは? 私は何事も標準が一番だと思います。閨の事は良く解らないけれど、兎に角王子様とは怖いからしません。婚約も嫌です。可愛くて朝まで喘ぐ人を探して下さい。では失礼します」
呆然としたどんぐり眼の王子をそのまま放置し、ルードを爪先でつつき先へ促す。さあようやく解放よ!取り敢えず勉強を詰め込む。お披露目会の前に逃げるか、後に逃げるかは状況次第ね。さて先ずはコイツを締め上げなきゃ!
「ルードさん? お部屋に着いたら先に説明してくださいな。何も心配するなと安心させておいて、散々な目にあわされましたけど? 私は王子の嫁だけは嫌よ。聖女の力が私だけなら協力するから解放して! 」
「リョウ様? 私は一介の護衛です。私にそんな力はございません。聖女の力は大丈夫です。貴女がこの国にいて下さる事が祝福で有り、儀式は祭事ですので代理でも可能です。しかもリョウ様はご自分で解決なされたでは有りませんか。王子は貴女のツンデレに参ってしまった様ですよ。アニー様が知ったら大変です。おや?噂をすればなんとやらです。ダイナマイトが飛んできましたよ」
えっ?何よ?ダイナマイト?あ!女の子が走ってくる。お城の中をを走るなんてお行儀が悪いわよね。
「こら! そこのデカパイ女! 私のクリスをたぶらかさないでよ! クリスは私のなの! 私もクリスのものよ。貴女の入る隙間はないわ! 」
もしかしなくても私に言っているの?
「すみません。クリスって誰? 私が知ってるのは後王子だけだから、王子がクリスなのよね? ではピンクフリフリドレスの貴女は王子の恋人ですね! ヒロインが自分から来てくれましたよ! これは可愛らしくて王子の理想通りの方ですね。これから朝まで喘ぐんですか? もしかして王子って遅いの? でも愛があればですね!私は王子と婚約なんてしたくはないのです。お二人を応援しています! 」
「え……? 貴女が聖女なんでしょ? 私がクリスの婚約者は私だったのに、呼び出されて突然貴女に婚約者を変えたって言われたの。正式に婚約破棄されて誓いの腕輪も外されたの。昨日までは形だけの婚約だって言っていたのに正式に変えたって! しかも今日から私を抱かないって言うのよ! 毎日散々エロエロな事させたのに酷いじゃない! どうしていきなり……」
うーん。これはまずいわね。やはり変なフラグを立ててしまったの?あの王子にはマゾっ気が有ったのかしら?でもヒロインがいる今、私的にはこれはチャンス到来ではないの?私はツンデレじゃないけれど、王子の思い込みを利用しちゃいましょう。こんな良い子に悪役令嬢ポジションは酷すぎるわ。ならば私がその役を引き受けましょう。しかしそれにはアニーさんの協力が必要よね。
「アニーさん! 女心が解らない王子の目を覚まさせましょう! 私は今日から王子が接触して来たら、照れて恥ずかしくてツンツンする乙女を演じます。そこでアニーさんは王子の話を、何事も否定せずに優しく聞いて上げて下さい。私は演技ですから、なにも心配はいりません。怒らず肯定し、健気な女性を見せつけて。アニーさんは一途で健気なヒロイン役です。私の事は貴女を虐める悪役令嬢だと思って下さい」
心配そうに私を見るアニーさん。大丈夫!絶対に成功する。いいえ成功させてみせます!お願い私を信じて!私は見事なツンツン娘を演じきりましょう。媚びるのはイヤだけど、アメも少しは必要でしょう。これでコソコソせずに城から出られるわ。アニーさんはクリス王子と仲良しだし、私は王子の名前も知らないくらい何とも思っていないの。そんな訳でアニーと私は今日は会わなかったの。だから私も未だに王子の名前は知らない。これでオーケー。さてチョロいん演技を頑張るからね!知らぬ顔のルードは邪魔しないでね。
ヒロインは貴女。私は悪役令嬢ポジでゆくわ。
ではではアクションスタート!
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