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婚約破棄までの1週間はテンプレ三昧。私も幸せになりたい!in 異世界。  作者: 桜鶯
【城下町編。フロックス国境でダービー開始】
35/73

城下町から1週間と1日目・早朝。急展開。

あー清々しい朝よね。私は砦の上階の部屋を与えられたから、窓を開けると気持ちのよい風が入って来る。明日の朝は皆も同じく、清々しい空気を感じてくれているでしょう。私はそう願いたい。私たちは朝方まで寝れなかったのよ。さあ今日の昼間が本番よ。


昨晩頑張ったのよ……


沢山働いた後のご飯はきっと美味しいと思います


眠気は辛いけれど……


後はルードたちに頑張って貰いましょう。


しかし隣国は馬鹿なのでしょうか?いや、馬鹿なのでしょう。だってこんな事をしたらこうなるが当たり前よ?そして私たちが尻拭い。この報酬は出るのかしら?隣国からぶんどって貰わなくてはいけないわよね。


さあ。パンちゃん朝でちゅよー。


***


昨晩レインは隣国の砦へ。ラスは魔物と鼬ごっこだと言う草原へ。二手に別れて調べに行ってくれました。そして解った事は驚きの事実でした。なんと隣国は魔物を調教しているというか、都合の良い様に誘導しているとのこと。数ヵ月前隣国で、国境境の砦の近くに大型のダンジョンが発見された。隣国はこれを他国には内緒にし、自国のみで中を調べていたという。ダンジョンは当たれば凄いお宝になるため、隣国はお宝の独り占めを目論んでいた訳よね。しかし外れればそのダンジョンは単なる魔物の巣窟となり、国にとっては最悪災害のもととなってしまう。なぜなら魔物はダンジョンの下層で繁殖し、ダンジョンが正常に機能していれば外には出ることはない。機能してる状態とは、冒険者が潜り検索をしている状態のこと。ダンジョンは人が入る事により中での食物連鎖が発生する。言い方は悪いけれど、中に入る冒険者たちもダンジョンでは食物連鎖の一員なの。狩る側しかり。狩られる側しかり。しかし冒険者が全く入らなければ、増えすぎた魔物が外に溢れだしてしまう。また増えすぎなくてもやがては餌となる魔物が減り、食物連鎖の下部の魔物を食い尽くした、強く餓えた魔物が外に出てきてしまう。そんな恐ろしい可能性も有り得るわけよ。


早々にこのダンジョンは外れだと見切りを付けた隣国は、ダンジョン深部を埋め封鎖してしまった。そのため低層の魔物だけが溢れ、ダンジョンから出てきてしまった。しかしこれは隣国も想定済みであり、その溢れた魔物たちを隣国の草原へ追い立てた。これは隣国を混乱させるつもりだったが、この草原には餌になる動物がいない。昼間は隣国の兵士がいるため兵士たちを餌にしようと襲っていたが、夕方になると兵士もいなくなり魔物たちは皆ダンジョンに戻ってゆく。そこで隣国は思案し、さらなる餌をばらまく。


罪人や病気で死に逝く人々を餌として与えたのよ……


怯え逃げ惑うだけの人の味を覚えた魔物はより狂暴になる。ダンジョンの中では魔物は狩られる側であり、無闇に人間を襲ったりはしない。しかし与えられる餌は自分に害を与えないため、魔物は恐怖を忘れてしまう。この狂暴になった魔物を一定数増やし事を起こす。草原には魔物の餌となる動物はいないけど、日中には兵士がいる。日中にこの場で争いを勃発させ兵士を集めさせ戦場にする。その戦いの場に腹を空かせた魔物を追い立て、隣国を目指して放つつもりよ。下手をしたら自国の兵士も犠牲になるのも構わずに……


***


草木も眠る丑三つ時。深夜にも関わらず、私は現在隣国の砦にいます。はい。もちろん不法侵入です。取り敢えず私たちはこれからこの砦を落とします。無血開城ならぬ無血砦の予定です。先ずは砦の天辺から強目に睡眠の魔法を風に乗せ巡回させまーす。空気に混ぜ込み拡散させながら一気に一階までどうぞ。一階でバウンドしたなら、天辺まで再度引き寄せさらに拡散させてゆく。汚れた心も風通しを良くしなさいな。私たちは砦を下りながら、眠った兵士や人々を監禁用の部屋に瞬間移動させる。これはラスが丁度良い鉄格子つきの小屋を見付けてくれたのよ。小屋に送られた人々は、今頃冷や汗をかいているでしょう。この小屋は魔物のいるダンジョンの直ぐそば。餌にする人々を閉じ込めていた小屋なの。小屋にはまったく人はいなかった。多分既に皆亡くなっているのでしょう……


深夜にも関わらず偉そうな人々は、丁度会議中だった様で、凶暴化した魔物たちを隣国へ追い立てる計画を協議していた。明日の朝……タイムリミットギリギリ。本当に間に合って良かったわ。眠ったお偉方は先の鉄格子付き小屋とは別の、草原に接した隣国側に有った巨大な鉄格子の檻に転送してゆく。何に使うつもりだったのかは大体解るけれど、超胸くそが悪いので、己でその使用感を味わって貰いましょう。自分たちが明日、その恐怖を味わいなさい!


会議の書類や重要文書類。皆で手分けをして各部屋も捜索し集める。かなりの量になってしまったため、一旦砦に戻り居合わせた文官さんに手渡す。


「夜間起きている人もいるのよね? これらを纏めて置いてくれるかしら? お礼に差し入れをするわ。宜しくね」


この文官さんがルードに知らせるかは解らない。ルードが信頼され尊敬されている指揮官ならば伝わるでしょう。私から伝えてとは言いません。のんびりと寝ているのならそれまでよ。しかしお偉いさんという人々は、だいたいそんな物らしいわね。己の利を追求し権利をもぎ取るための、会議という名の悪巧みの会合への参加は、深夜でも気にしないようですけど。私は文官さんたちの仕事部屋へゆき、仲間の分も差し入れをしてから砦に戻った。


お好み焼きとお握り喜んでくれたわよ。やはり疲れた頭には甘いものよね。シスルの国では沢山菓子折りを貰ったの。これらのお菓子もどうぞ。もちろんブラウニーとキャラメルもね。リラックスのミントティーは淹れ方を見せながら淹れてあげる。お代わりも沢山有るから、二杯目は自分たちで淹れてね。お肉は全てが終わってからね!若い文官さんたちは大喜びしている。頑張って纏めてくれるそうよ。本当にありがとう。


***


さーてと。ここからが本番です。タルバが先に説得に行ってくれているけれどどうでしょうか?タルバは任せろと言っていたけれど、こればかりは心の問題よね。でもどんな姿になってるかが解らないから、覚悟して来いと言われたの。かなり心配なのよ……


私は地下へと続く階段を、灯りの灯る方をめがけ降りてゆく。捕虜や密偵などを拘束して置く地下牢の様で、ヒヤリと冷たい空気が肌を刺す。突き当たりまで進むと人型のタルバが現れた。


「まったく駄目じゃな。我の言う事は嘘だ! の一点張りだ。長く閉じ込められ半分正気ではないのかもしれん。魔力線は既に切れとる。主が死んどるのも理解しとる筈だが認めん。きっと主を護りきれなかったのを、己が認めたくないのだろうな」


「そう。体の方はどうなの? 」


「無理やり主でない人間の魔力を注がれとるから、我の様に魔力がなくなりチビにはなっとらん。しかし波長があわず拒否反応で姿がかなりゆがんどる。既に人型は取れず聖獣姿だが、獣の形さえ保てていない。とても我と同じカーバンクルには見えん」


あの子もカーバンクルなの?


「取り敢えずその子に会うわ。心を開いてくれなくても、保護しなくてはどうしようもないわ」


なんと隣国の砦には聖獣が捕らわれていた。


私はついてこようとするタルバを手で制し、鉄格子の中で手足を拘束され横たわる、黒い塊に近寄ってゆく。黒い塊は私に気が付くと、目の光で辛うじて頭と解る部分を動かして威嚇してくる。私は魔法で拘束の鎖をそっと外すと、暗い瞳が私を捉えた。しばし互いにジッと見詰め合うがまるで目の焦点があっていない。夢と現実の狭間を行き来しているの?治療してあげたい。でもこの子が私の魔力を拒否するならば、私の治療も害にしかならない。私は目の焦点が有った時を見計らい、根気よく声をかけてゆく。


「あのね? 現実を受け止めるのはゆっくりで良いわ。でも貴方が消滅してしまったら、主だった人も悲しむと思うの。あなたに出会ってしまった私たちも悲しむし、助けてあげられなかった事を後悔するわ。貴方も後悔をしたのよね? ならば尚更主の気持ちを知りましょう。今レインとラスがお城まで調べに行ってくれているの。貴方は真実を知るためにも、まずは体を回復しましょう」


そっと体を抱える様に腕を回す。ビクリと身動ぎをした聖獣は、急にもがきだし私の腕に噛み付いた。しかし噛み付いてしまった事に驚いたのか、体がブルブルと震えている。極度の緊張と震えからか、聖獣は噛みついたまま離れない。頭をフルフル揺らしながら力なくもがいている。


「大丈夫。痛くはないわ。だからそのままで大丈夫。気にしないで眠りなさい」


私に噛み付いたままの聖獣を抱き締め、タルバと共にもとの国境の砦の部屋に転移した。


「リョウ、廊下に誰かおる。覚えはあるか? 」


「特にないわね。レインとラスではないの? 」


「違う。人間だ。まさかリョウに夜這いか? こりゃ強者がおるな? 害意はない様だがかなり怒っとるな」


「タルバ! 何故怒りながら夜這いをするのよ! しかも然り気なく貶めないで! タルバがみてきてよ」


部屋の扉の前にはルードがいた……らしい……


*****


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