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13話

 シリルが突然の訪問で参加した、ルドルフ様とシンシアを招いたお茶会が終わり、シンシアはそのままアウエルバッハ家に泊まった。もとより、お泊り女子会をする予定だったのだ。私の部屋に食事を運んでもらい、二人で夕食を共にする。


「それにしても、シリル様には、驚いたわ。あんなに嫉妬むき出しで、ルドルフ様に食って掛かるなんて」


スープを口に運びながら、シンシアがお茶会の話を始めた。


「シンシアから見ても、あれは嫉妬だと思うの?」

「ええ、あまりにもあからさまじゃない。アンナを取られまいと、必死って感じだったわよ。きっと、ルドルフ様にも筒抜けね・・・・・。それより、シリル様が席を立った後を追って行ったじゃない。戻ってきてからの貴女、なんだかおかしかったわよ。シリル様となにかあったの?」

「・・・・・・・・」

聞かれたくないことをズバリと聞いてくるシンシアに、ちょっと困って、返答をためらった。


「やっぱり、なにかあったのね」

「・・・・あ、あの・・・・あのね」

「ええ、なにがあったの」

「シリルが・・・ルドルフ様が、私を狙ってるって、言って・・・その・・・・嫉妬したって言ったの」

「・・・・・ああ、なるほどね」

「だから・・・私には婚約者がいるし、私なんかをルドルフ様が相手するはずないわよって言ったのよ」

「うん、それで・・・・」

「絶対婚約破棄はしないって・・・・」

「へえー、そう来たのね」


つっかえ、つっかえ、話すと、シンシアが身を乗り出すように問いただしてきた。

あまりの恥ずかしさに、だんだんと声が小さくなり、顔に熱が集まってきて、シンシアが身を乗り出すのに比例して、身を縮こまらせた。


「シリル様って、記憶を無くしてから優しくなったって言ってたけど、やっぱりそれって今までなら考えられないことなの?」

「夜会で会ったその翌日に、突然訪問してくるのも今までなかったし、人前であんなに感情的になることなんてなかったし・・・・・・それに、それにね・・・・嫉妬したなんて、言う人じゃなかったわ」


ああ、シンシアと私の間にテーブルがあってよかった。でも、居たたまれない。いっそ、テーブルの下にでも潜ってしまいたい。


「記憶を無くしてから、アンナに恋したってことなのかしら。婚約者としてはいいことだけど、問題は、記憶が戻っても、その状態のままなのかってことよね。それに、貴女は、どう思ってるの?ルドルフ様とシリル様と、どちらが好きなの?」

「・・・・・どちらがと言われても・・・・ルドルフ様は知識も豊富でご立派な方だと思うわよ。だからって、その・・・異性のお相手としてなんて・・・・だって、私みたいな小娘が、ルドルフ様に釣り合うわけないじゃない。シリルは、婚約者で幼馴染だわ。記憶を失ってから、びっくりするくらい丁寧で、優しくて・・・・その・・・情熱的で・・・・戸惑うっていうか・・・・」

「ふーん。・・・ルドルフ様だけど、貴女を狙ってるって、私もそう思うわよ。でも、貴女は、あこがれてるだけってことなのね。・・・それで、シリル様は、態度が変わってから、幼馴染から昇格しそうな勢いなわけ?」

「昇格って・・・・」

「でも、ドキドキさせられるのでしょう」

「・・・・だって、だってね。・・・好きだって、言うのよ。ドキドキするわよ」

「えっ、シリル様から、好きだって言われたの?」


シンシアから好きの言葉が繰り返されて、ますます居たたまれなくなって、手で顔を覆って、いやいやと顔を振ってしまう。もう、いや、シンシアに顔を見せられない。


「アンナ、ルドルフ様にも、シリル様にもまだ、恋してるわけじゃないみたいだけど、お二人からアプローチされてから、どう変わるかわからないわよね」

「でも、私はシリルの婚約者だわ」

「いくら婚約者だとしても、恋した人が別に出来たら、辛いでしょう。やっぱり、ちゃんと恋した人と結婚すべきだと思うわ。アンナがルドルフ様を好きになったら、シリル様との婚約は破棄した方がいいわよ。でも、やっぱり問題は、シリル様の記憶が戻ってからも、アンナを好きでいてくれるかよね。シリル様に恋しても、記憶が戻った後、シリル様の気持ちが貴女に向いていなかったら、悲しいわよね」

「・・・・・・」


 シリルのあの情熱的な態度で、私を思ってくれているのは分かるけど、シンシアが言うように、記憶が戻って、また、あの冷たいシリルに戻ったらきっと、優しかった分耐えられないと思う。

それに、私って、ちょっと、あのシリルの優しい態度にほだされかけているような気がするわ。

落ち着くためにも、シリルとは少し距離を置くべきなのかもしれないわ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的には素直に愛情表現できない奴は婚約者を失えばいい、と思ってるけど、個人的な主義とは別にお話の行方は楽しみ
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