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1話

「銀の髪の兄妹」と「伯爵は令嬢の心を射止めたい」に続き、3作目です。


今回は、ちょっとゆるーく恋愛中心で書いてみようと思います。




興味のある方は、お付き合いください。


読んでいただけると、励みになります。


よろしくお願いします。

「全く、こんなことも知らないのか」




蔑んだ眼差しを私に向けてくるのは、婚約者のシリルだ。




「そりゃ、シリルはシュタイン公爵家の嫡男で、家庭教師をつけて勉強しているから、物知りでしょうけど、私は淑女教育しかしていないのだから、そんなの分かるわけないでしょう」




 鉱山を所有するシュタイン公爵家と、産出された鉱物を運ぶために都合がいいと、シュタイン領から流れる川を有する我がアウエルバッハ侯爵との政略と名の付く縁談が調ったのは、私が12歳、シリルが10歳の時だった。


 光を弾くほどつやつやのプラチナブロンドの髪に、大きな碧眼の天使のようなかわいい子どもだったシリルを初めてみたときは、はっきり言って天使だと思った。2歳年上だった私は、弟ができたような気になり、それはそれはかわいがったものだ。しかし、いつの間にやら、すっかりその可愛さは失われ、口を開くと私のことを馬鹿にするようになってしまった。


経済学や歴史学を家庭教師から教わっては、会いに来て自慢し、その度にそんなことも知らないのかと貶し始めるのだ。


しかも、私の容姿もショコラブラウンの髪にハシバミ色の目といった、地味な色だと馬鹿にする。


そんなに嫌なら、婚約を解消しましょうと言っても、政略結婚なのだから無理だと言って、応じてくれない。


会うたびに貶してくる婚約者にいつも面白くない思いをしている。


 侯爵家としては、上位貴族の公爵家からの縁談は願ったりかなったりらしく、公爵家から婚約解消の話が出たのならともかく、我が家からは婚約解消する必要はないと取り合ってはくれない。


いくら政略結婚だとしても、今からこんな冷めた関係なら早く解消した方がお互いの幸せのためではないかと思っている。


 物知らずとシリルは馬鹿にするが、読書も好きで、そこらの令嬢には負けないだけの知識はあるし、体を動かすことも好きで、領地の騎士たちから剣術も習っているし、きっと、2歳年下のシリルには勝てるんじゃないかな。


生来の気の強さもあり、売り言葉には買い言葉と、いつもけんかになってしまう。


 2歳年下の婚約者が18歳になってから結婚することになっているが、そのころ私は20歳になってしまう。


ちゃんと約束が果たされて結婚できればいいが、こんな険悪な状態で、婚約破棄にでもなってしまえば、年齢的に行き遅れになってしまい、次の相手を探すのにも苦労するに決まっている。




 領地が隣のため、頻繁に行き来していて、今は、乗馬の最中だ。


乗馬服に身を包んだ私は、令嬢らしく、横乗りで馬にまたがっている。


結構なおてんばの私は、本当なら、男性用の乗馬服を体に合わせて仕立てたものを持っていて、それを着れば馬に跨って、スピードが出せるのに、シリルが令嬢は、婦人用の乗馬服で横乗りするものだと言ってきかないため、不安定な態勢のまま、不本意ながら常足でしか進めないでいた。


もう、どうせ馬に乗るなら、かっ飛ばしたいわ。ストレスたまる。




「ねえ、馬を走らせたいわ。下にズボンも履いているし、このスカート捲し上げて、跨っていいでしょう」


「何言っているのさ、アンナ。17歳の令嬢が、そんなはしたないことはだめだ」


「だって、ここには私とシリルしかいないのよ。いいじゃない」


「だめだ、アンナ俺の前でそんな不作法は許さない」


「無作法なんて、バッカじゃないの」




 シリルの言うことなんて聞くものですか。


いつも馬鹿にして、どんなに上手に乗れるか、見せてやるんだから。


見てなさいシリル、かっ飛ばして置いてけぼりにしてやるわ。




「わぁああああ、アンナやめろって、あ、足が見えるだろう」


「ついて来られるなら、ついてきなさい・・・・・行くわよ。・・・はっ」




 木々が飛ぶように過ぎていくわ。


ああこんないい天気に、ちんたら歩いてなんかいられないわ。


風が気持ちいい。


もっと、もっとよ。




「アンナ、飛ばしすぎだ。スピードを落とせ」


「いやよ、これくらい平気なんだから」




 シリルの馬が背後から追ってくる気配をよそに、高笑いしながら、ぐんぐん速度を上げる。


振り向いたそこには、焦り顔の婚約者の姿があり、いい気味だとまたおかしくなって笑った。




 調子に乗って飛ばしていると、右の草むらからウサギが飛び出してきて、驚いた馬が急に立ち止まるが、スピードが乗っていたので、そのまま前に体が放り出された。




「きゃぁあああああ・・・・」


「アンナ・・・・」




 落馬した衝撃で、体がごろごろ転がってやっと止まった。




「いたたた・・・」




あれ、でもあんまり痛くない。


手をついて上半身を起こすと、腰回りに誰かの手が回されていた。


「えっ…どういう状況?・・・シリル?」




痛くないはずである。


シリルが私の背後から体を抱えて守ってくれていた。




「やだ、シリル、シリル・・・起きて・・・」




 青白い顔で横たわるシリルの額から血の筋が伝った。



頑張ってアップしますので、お付き合いください。


お願いします。



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