俺ではないな。
なんとか緊急脱出ポットまでたどり着いた俺たちは、
ある事に気がついた。
ユウキ「これ2人用じゃねーか!」
ヒデキ「おいおい嘘だろ!なんで2人用しかないんだよ」
そう緊急脱出ポットは、2人しか入れないのだ。
今俺たちは、計3人いる。1人は脱出できないのだ。
カナ「どうする?3人で戦う?」
みんなで脱出できないなら一か八か3人で戦おうという
作戦をカナが提案してきた。
俺もそれがいいのかもしれないと少し思うと…
ユウキ「いや、3人で戦っても勝てないよ。俺が緊急脱出ポットが作動する時間を稼ぐから2人で入れよ。」
ヒデキ「なんでだよ!」
ユウキ「この中じゃ俺が一番、勝てる確率が高い。
だから俺に任せてくれ」
俺はその時やっぱりかっこいいわこいつと思った。
俺なんか心の中では、俺では勝てないよ。
どうすると、不安しかなかったのにユウキは、
自分を犠牲にしてまで俺たちを助けようとしてる。
もしこれが物語だとしたらユウキは、主人公だろう。
ヒロインのカナと上手くいき、きっとこの危機的状況もなんとか打破するのであろう。
じゃあ俺は?何?なんでもない脇役なのか?
そう思ったのだが口から出た言葉は、
ヒデキ「分かった。でも死ぬなよユウキ。」
「カナいこう!」
カナ「絶対に死なないでね。」
そう言い終わった後のカナの顔は、
とても悲しそうだった。
あーなんて俺は、情けないんだ。今この状況でも
少し安心している自分がいる。そしてもしユウキが
この後死んだらカナと付き合えるかもしれない。
そんなクズみたいな考えをしているうちに、
緊急脱出ポットの目の前まで
たどり着いた。
乗ろうと足を踏み出そうとした時に、昨日の風景が
脳裏をよぎった。そして…
ヒデキ「いや…やっぱり俺じゃないな。」
カナ 「どうしたのヒデキ!はやくのって」
乗れないよここに乗るのは、俺じゃない…
ヒデキ「あ!俺回復薬持ってるんだよ!
これユウキに渡してくるわ!」
カナ「なら、私もいく!!」
ヒデキ「いやダメだ。でもカナは、ここの扉を開けて
待ってて、渡してすぐに戻ってくるから」
回復薬なんて持っていない。ただやっぱりこのポットに
乗るのは、ユウキだ。
もし俺がこのままユウキと変われば、間違いなく死ぬ事になるだろう。そしたらカナに自分の思いも告げれないままか…
ヒデキ「カナ…あのさ…」
カナ「どうしたの!?」
ヒデキ「いや、す、すぐに渡して戻ってくるわ」
カナ「?分かった!気をつけてね。」
好きだと言いたかった。思いっきり抱きしめたかった。
でもそうすると俺が死んだ時にカナに重荷を背負わせてしまう事になるだろう。優しいカナだ。
きっとあの時どうして
止めれなかったのだろうと。
傷ついてしまうのが目に見える。だから…
俺は、行ってくるとだけ告げその場を離れた。
さぁどうやってユウキと変わろうかな。
普通に俺が戦うよと言って変わろうとしても
変わってくれないだろう。
あ、そうだ。とある作戦を思いついた。
ヒデキ「ユウキ!!!」
ユウキ「おい何してるんだよ馬鹿!はやくいけ」
突然戻ってきた俺にユウキは、戸惑っている様だ。
ヒデキ「いや、違うんだ。カナが逃げる時に怪我をしてしまって、それが結構重症なんだ。!!」
ユウキ「え!嘘だろ」
ヒデキ「本当なんだ!!だから、ユウキの回復魔法で
カナを助けないと危ないんだよ」
我ながら名演技だと褒めたい。ここまで説明をすれば
大好きなカナをほっとく訳には、行かないだろう。
それに回復魔法を使えるのは、こいつだけだしな。
ユウキ「分かった。いくわ!」
そしてユウキが急いで脱出ポットまで走って行き、脱出ポットまで残り1メートルくらいの距離になった時だ。
「よいしょーー!!!」
俺は、思いっきりユウキの背中を蹴り、脱出ポットに
無理やり乗せた。そして急いで窓を閉め。
外からパスワードを入れた。
この脱出ポットの作りは、外からでも中からでも
パスワードを入れれる仕組みになっている。
それが解除できない限り脱出するまで二度と
開けることができない作りだ。もちろん無事に脱出できたら自動で開く。外から入れたパスワードは、
中の奴らには、分からない。
ユウキ「痛いなぁ…!?おい!ヒデキ何してるんだよ!」
ヒデキ「何してるって。後ろから蹴りを喰らわしたんだよ」 本当は、そこまで思いっきり蹴ることはなかったのだが昨日の件でイライラしていたのでこれでチャラだなと勝手に思った。
ユウキ「いや、おいお前じゃ無理だ!はやく開けろ!
ヒデキ「3分だろ…なんとかなるよ」
カナ「ダメ!ヒデキ!はやく開けて」
ユウキが戦うと言った時には、全然止めなかったのに
俺が戦うとなったら必死で止める。
よっぽど信頼されてないのだろう。少し悲しくなる…
ヒデキ「…今までありがとうな」
ユウキ「ヒデキ!おい!おい!開けろ」
俺は、ヒデキの声を無視してその場を離れた。
さぁって残り2分30秒ってところですか。
そう思いながら、10メートルぐらい走ると。
明らかに異常な魔力を放つ者が現れた。フリブだ。
フリブ「おや、やっと現れたか。
あれ…目的のやつがいないね。」
見た目は、四十歳ぐらいのダンディーなおっさんだ。
腰には、刀をつけている。
ヒデキ「目的のやつ?お前の目的は、なんだ!?」
フリブ「うーん。俺の目的…どうしてお前に言わないといけない」
俺は、正直話してるだけでも立ってるのがやっとなくらいの魔力を感じていた。普通に戦ってもこれは勝てないと感じ、なんとか話をして時間を稼ごうと思った。
フリブ「まぁいいや。いやなんかな。ロウ王国の
ユウキとカナだったかな。実力者が2人がわざわざ
私の国に入ってきたという情報があってね。
だから今実力者が2人しかいないんだから、今のうちに殺しとこうと考えた訳だ。
敵の戦力を削れる時に削ろうという簡単な話さ。」
俺の作戦に掛かってくれた。こうやってなんとか話をすれば時間を稼げるだろう。
フリブ「君…今時間を稼げると思ったね。」
ヒデキ「!?」
フリブ「驚いてる様だね。私人の心が読めるんだよ。」
ヒデキ「人の心が読める!?じゃあなんで!」
と言い終わる前に
フリブ「なんで俺なんかと話してるかって?。簡単なことさ、君を殺すのに1秒もあればできるからだよ。
ところで君はだれだ」
1秒?そんなことがある訳ないだろう。だいたいこいつも俺のことを舐めやがって。誰だって?
いつもそうだ。幼馴染のユウキとカナにばっかり
皆注目して俺なんかには、誰も目を当てようともしない
ふざけやがって。
フリブ「まぁ君が誰なんかどうでもいいや。」
そう言い放つとフリブは、俺の横をまるで俺がいないかのように普通に歩いて通り過ぎようしたのだ。
ヒデキ「ふざけるな!こ、の!?」
フリブを止めようと技を使おうとした時だった。
気づけば心臓を刀で刺されていた。
何をされたかも分からなかった。
フリブ「だから言っただろう。君を倒すのに時間はいらないって」