第一話
どこにでもありそうな学校の、どこにでも有りそうな教室のどこにでもいそうな生徒達が、やはりどこにでも有りそうな事を会話をしてる。
昼休み。
それは、一日のうちで最もマッタリできる(言いかえれば意味のない)時間帯である、だからこそ生徒たちは、意味のないおしゃべりに時間を費やすことができる。
そんな生徒たちの中の一対の男女の会話。
「やったぁ、今日の運勢星五つだって」
制服姿で髪の毛を後ろでまとめ、かわいい風貌をした、机の上にいかにも女の子女の子した雑誌を広げている女子がそんな事を言いながらバックから弁当箱を取り出していた。
「そりゃ良かった、それよりチーフ、弁当食いながら雑誌読むなよ」
そう言うのは『チーフ』と呼ばれた女子の前に座っている、何の変哲もない髪形と濁った目をした男子だった。
それを聞き彼女は不満そうに、
「ぶーぶー何それ私はもっとオーバーなリアクションを期待したのに」
「そりゃ悪かった、でも朝のテレビじゃお前の運勢十二位だったからな」
それを聞きチーフは驚嘆、又嬉しそうに、
「十二位?もしかして大将、私の星座もとい誕生日覚えていてくれてるの?」
しかし『大将』と呼ばれた男子のほうは、彼女の期待をぶち壊すようにだらけきった声で答える。
「ああ、残念ながらな、それより12位だったことに落胆しなよ」
やはりその答えに不満なのか彼女は大げさに頬を膨らませながら言葉を返す、
「もう、何それ、そんなんなら大将の誕生日やら何やら祝ってあげないよ」
彼はそれを聞きにべもなく、
「別に構わないけどって言うかお前はバレンタインの日、チョコに交じって一個だけ激辛カレー粉を入れたり、誕生ケーキのホイップをメレンゲ単体で代用したりすることを祝うというと思っているのか?」
彼女は自分のこめかみ辺りを嫌な汗が流れるのを感じていた。
「あははは、もうっ、そんな過去の話、まぁ確かにカレー粉を食べたときの驚愕を見た時はやり過ぎたかもって思ったけど、そっそれより大将は早くご飯食べないの?」
そんな彼女の様子に彼はため息をつき、
「まあいいけどな、つーか今日飯作る暇がなかったんだよな、少しばかり寝坊しちまってな、だから誰か金を貸したり又は飯を分けてくれたりしない限り昼飯は無いな」
「へぇ昼ごはんが無いってのは年頃にはきついよね」
「そうだなそれは、俺にとってかなり厳しい、だから誰か金を貸したり又は飯を分けてくれたりしないかね」
「そうね、厳しいよね」
「そうだ、それはもう絶望に近いだから誰か金を貸したり又は飯を分けてくれたりしないかなー」
「今日はいい天気ねー」
「そうだな、それより誰か金を誰か金を貸したり又は飯を分けてくれたりしないかなー貸したり又は飯を分けてくれたりしないかなー」
そこで彼女はとうとう根負けしたように、
「あーもうっ大将そのくらい自分の責任なんだからどうにかしなさいよっ」
しかし彼は全く引いた様子を見せず
「そうなんだけどな、誰か金を貸したリ又」
その言葉を遮って彼女は
「あーあーはいはい分かったわよ、もう、私の弁当少ないだから文句いわないでよね」
「まさか、まさか、もう雪どけのように感謝します、じゃ、いただきまーす」
なぜか箸だけは用意していた彼は弁当箱の花とも言えるハンバーグを何の躊躇もせずに選び、いかにもおいしそうに平らげた。
それを目撃した彼女は
「あー私の自信作だったのに、もう、まぁいいわ、放課後埋め合わせとして今日の授業分からなかったから教えなさいよね」
腹が膨れて上機嫌になった彼は、
「まあ分けて貰ったし、仕方がないか、いいよ」
と安請負した。
「じゃあ放課後、体技教室の言霊操作練習室にきてね」
ちょうどその時昼休みの終わりを告げる鐘がなった。




